表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おてんば娘と一寸郷士(ごうし)  作者: 宮羽つむり
おてんば娘と椿屋敷
49/137

旅立ち当日

次の日。

「おはようございます」

桃色の小袖を着て、白い布を頭にかけているお琴は椿屋敷の玄関前で挨拶をする。お琴は旅の道中が長いと知って、埃除けの布を被ってきたのだ。今日はいつも以上に卯木の足音が聞こえるが、姿が見えない。

「おはよう。今日からよろしく頼む」

清隆の声がしたので、お琴は姿を探すと、足元に小人になった清隆がいた。清隆は若草色の小袖を着ている。

「あ、清隆様。おはようございます。清隆様はこの時間は小人でしたね。……あの、どのように旅路を往くのですか?」

「そのことなのだが、お琴の肩に乗せてくれないか?オイラの姿は動物達やお琴には見えるのだが、他の人間や鬼には声だけしか聞こえないのだ。オイラの姿が見えるものの近くにいるにいる方がありがたいのだが、お願いできないか?元に戻るのも1つの方法だが……。恥ずかしいし、持続時間が不安定だからな……」

お琴はあの衝撃的な口づけを思い出し、慌てて頭を横に振った。だったら、私の肩に乗ってもらう方がはるかにいいと即決した。

「私は構いませんよ。私の肩に乗ってください」

「ありがとう」

清隆は飛び跳ねようとするが、お琴は膝を床につけ、手の上に清隆を乗せようとする。

「頼んだのはオイラだが、女子(おなご)にここまで手を貸してもらうとは……。悔しいな……」

清隆は不服なのか、下唇を突き出したまま、お琴の手の上に乗ろうとしない。

「何言っているんです!あんな飛び方されて、あごとかにぶつかられる方が嫌ですもん!」

「……今までは友達の背に乗って目的地まで行ったのだが、今回は動物嫌いの右忠様がいるからな……。お琴の言うことを聞くしかないか……」

清隆は渋々お琴の手のひらの上に乗った。お琴は左肩に清隆を乗せ、

「では、私は清隆様の荷物も持ちますね」

裏口へ回ろうとすると、

「じきに右忠様も来るし、玄関から上がっていいぞ。友なのだから、玄関を使うことに対して遠慮するな」

と清隆が気を遣ってくれた。お琴は申し訳ないと思いつつも、清隆の申し出をありがたく受け取ることにした。玄関で草履を脱いだお琴は、最初に卯木を探すことにした。

「お琴、おはようございます」

廊下で真成とばったり会った。真成は薄茶色の小袖で焦げ茶色の袴を着ている。外に出ていることが多い真成が屋敷の中にいるのは、お琴にとって珍しかった。

「真成様、おはようございます」

お琴が頭を下げようとすると、

「おいっ、肩まで下げるな!落ちる!」

清隆がお琴の小袖にしがみつく。

「あ、清隆様はお琴の肩の上にいらっしゃるのか」

真成はお琴の両肩を見た後、ふぅとため息をついた。

「やっぱり、真成様には清隆様の姿は見えないのですか?」

「……人間は生まれた瞬間から業を背負っているのだから、仕方ないことだ」

真成はお琴の頭に優しく手を置いた。自分が清隆様を見えていないことは気にするなという意味だと分かるが、この仕草は気になります……とお琴が思っていると、

「ま、真成。留守は任せたぞ!お琴、早く卯木を探そう」

清隆が慌てた様子で、2人に声をかける。

「あ、母なら土間にいましたよ」

「ありがとうございます、では土間に行ってみます」

お琴は清隆と共に土間へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ