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おてんば娘と一寸郷士(ごうし)  作者: 宮羽つむり
おてんば娘と椿屋敷
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小人の秘密

洗濯用の水を汲み終えたお琴は、いつもの様に一の間からの拭き掃除を始めた。

無心で掃除を……とお琴は思っているが、今日はなかなか実行できない。卯木様や小人にはああ言ったけれど、清隆様と話せる機会があるかどうか……とお琴が考えていると、ふと視線を感じた。お琴が視線を感じた方向を振り向くと、小人が縁側の障子から顔を出して、お琴を見ていた。しかし、お琴と目が合うと、小人は顔を引っ込めてしまった。前にもこんなことがあった気がする……とお琴は思いながら、畳を拭いていく。またしばらくすると、同じ方向からの視線を感じるが、お琴は気にしない振りをして、拭き掃除を続けていった。



一の間が終わり、二の間、三の間と拭き掃除をしているお琴は、ずっと感じている視線に堪忍袋の緒が切れそうだった。一の間、二の間の拭き掃除の時だけならまだしも、三の間までとは……と、お琴はうんざりしていた。お琴は少し乱暴に掃除用桶の中に雑巾を入れて、

「……あの!話したいことがあったら、はっきり目を見て言って欲しいんだけど!」

と言って、縁側の障子に近づく。

「あなたがずっと私を見ていることは、分かっているんだから!」

お琴が縁側をのぞき込むと、小人が固まったまま、そこに立っていた。

「何か言いたいことは?」

小人に問いかけるお琴。小人はしばらく何も言えなかったが、

「……何で分かったんだ?」

と絞り出すように声を出して、お琴に聞き返した。

「ずっと視線を感じてたからよ!分からない方がおかしいわ!」

お琴が頬を膨らませて、小人を見下ろす。小人はお琴をチラチラ見て、

「そっか……。分かっていないと思っていたのに……」

悔しそうに呟く。そして、小人は何も言わずに三の間の中にはいっていく。

「え?何?何で中に入っていくの?何か悪戯をするつもり?」

お琴は小人の行動を理解できず、小人の後ろについて行きながら尋ねる。

「そんな事をする為に来たんじゃないぞ!失礼な奴だな!」

三の間の真ん中で立ち止まる小人。お琴も一緒になって立ち止まる。

「先ほど助けて貰った借りを返しにきた。お前とは一瞬でも友達になったから、オイラがお前の気になっている事の答えを教えてやる!」

「ええっ!?」

小人の思いがけない言葉に、お琴は驚く。

「お前に見下ろされているのは、何となく悔しい!座って話を聞け!」

小人に言われるがまま、お琴はその場で正座をする。お琴は、あれ?何で私、小人の言う事を聞いているんだろう?と、自分の行動を不思議に思うが、従った以上は仕方ないと思うことにした。

「……つまりはな、お前が清隆に聞きたいという願いを叶えてやるということだ!」

小人はそう言って、お琴の太ももの上にぴょんと飛び跳ねる。そして、お琴の右腕、胸へとどんどん上へ向かってきた。お琴は、

「えっ?えっ!な、何?」

とたじろぐが、小人が落ちるといけないので動けずにいる。お琴の右肩の上に乗った小人は、

「口を閉じろ!危ないぞ!」

と言い出した。お琴は小人の剣幕に押されてしまい、思わず口を閉じた。お琴が黙ったのを見て、小人は深呼吸をする。すると次の瞬間、小人がお琴の唇目掛けて、頭突きをした。

「いったぁい!」

お琴が唇を両手で押さえると、小人はひらりと畳の上に着地した。すると、小人から煙が出てきて、周りを包み始める。

「な、何?何?何が起きているの?」

お琴は訳が分からずにいるが、なるべく状況を知ろうと努める。すると、煙を通して見える人影が段々大きくなっていることに気がついた。

「え?誰……?」

お琴は怖くなり、腰が抜けたその時、煙が晴れ始めた。段々、お琴の視界が晴れていく。

「き、きゃああああ!」

お琴は思わず叫び、目を背けた。そこにいたのは、小人ではなく、お琴に背を向けた裸の清隆だったのだ。

「こういうことなんだ。分かったかい?」

清隆は顔だけお琴に向けて、笑顔で尋ねる。

「ぜっ、全然分かりません!分かるように説明して下さい!」

耳まで真っ赤になったお琴は大きな声で、清隆に訴えた。

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