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おてんば娘と一寸郷士(ごうし)  作者: 宮羽つむり
おてんば娘と椿屋敷
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夢現

4畳半の中の間に着いたお琴はドキドキしている心臓を落ち着かせるため、ゆっくり深呼吸をした。

「……少し落ち着いてきたわ……」

少し狭い中の間は、お琴にとって落ち着く場所だった。お琴は祖父の家にいた時は中の間くらいの部屋で名品達と向き合っていたので、何だか祖父の家にいるように思える。祖父の家は無口な祖父と一緒だったため、滅多なことがない限り、ずっと静かだった。しかし、ここは椿屋敷の生活音が聞こえてくる。

「今日は早く戻れたのですね」

小さくて少し聞きとりづらいが、中の間の隣の土間から卯木の声が聞こえた。

「あら、では……に……、……たら……ですか?」

卯木は誰かと話しているようだ。ついお琴は正座をしたまま、聞き耳を立ててしまう。しかし目を閉じて聞いていると、だんだん眠気が襲ってくる。お琴はあくびをしながら、土間から聞こえる声を聞いている。

「……何もやることがないのは暇だわ……」

だんだんお琴の意識が遠のいていく時間が長くなる。お琴は眠気に負けじと目を開ける。しかし……。ついにお琴は意識を手放してしまい、壁に向かって首をコクリコクリと動かし始めた。



「……危ないっ」

誰かの優しい声。誰かが自分の頭を支えるのをお琴は感じた。誰だろう……?とお琴は思うが、目が開かない。

「先ほどは怖い思いをさせてしまい、申し訳なかった……」

聞き覚えのある声に、お琴は何とかうっすら目を開ける。すると、若草色の着物を着た男の人がお琴と向かい合って座っていた。頭を支えていると思っていた男の人の手は、お琴の右頬に触れていた。逆光と眠気で男の人の顔があまりはっきり見えない。だが、お琴は直感でこの男の人はさっきの小人だと思った。

「……あなたは小人?……小人が大きくなるなんて……。これは夢?」

目を閉じながらお琴が問うと、

「夢の中でなら、同じ大きさでも違和感はなかろう。夢なのだからな」

という返事が返ってきた。

「犬はやめてよね……。鳥くらい……なら……いいけ……」

言いたいことはたくさんあるが、お琴は正座をしたまま、また眠ってしまった。



「……お琴。お昼の時間ですよ」

卯木の声でお琴は目が覚めた。お琴は自分が正座のままではなく、うつ伏せになって畳の上で寝ていたことに気づく。

「も、申し訳ありません!眠ってしまっていました……」

起き上がり、慌てて正座になって頭を下げるお琴。卯木は優しく笑い、

「そんなことは気にせず、お昼に致しましょう」

と言って、お琴を立ち上がらせる。そして、2人は一緒に土間へ行った。

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