昼食
お琴は清隆のところから戻ってきた卯木と一緒に、土間の隅でお昼を食べ始めた。料理は清隆と同じものだが、量は若干少ない。
「私達はお昼を食べ終えたらまた仕事がありますので、しっかり食べておきなさい」
卯木は疲れからあまり箸が進まないお琴を見て言った。
「は、はい!」
お琴は一所懸命ご飯をかき込んだ。気にかけてもらえることがとても嬉しくて、お琴はつい顔が緩んでしまう。
「口煩い私を嫌だと思いますが、榛名家のため、最終的にはあなたのためを思って言っているので我慢なさいね」
卯木は疲れさせたことに対して責任を感じているのか、お琴に謝罪ともとれる言葉をかけてきた。
「いえ、私ができないのがいけないんです!……私、生まれてから14まで祖父に育てれ、祖父が亡くなってから家族と暮らしたのですが……。お恥ずかしい話、母から家のことについて一切教わってこなかったので……。卯木様に教わりながら仕事をしていて、亡くなった祖父を思い出しました。厳しくも優しい教え方がそっくりで嬉しくなりました。私の祖父は教えるという形で私に愛情を示してくれた人だったので、卯木様を口煩いと思っていません」
あ、いけない!しゃべり過ぎたかな……と思ったお琴は、慌てて口をつぐんだ。が、
「それだけ話せる体力があるなら、残りの仕事も大丈夫ですね」
卯木はそう言って、箸を進めた。お琴も頑張ってご飯を食べた。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
お昼を食べ終えた2人は手を合わせ、挨拶をした。
「さぁ、片付けをしますよ。私はかまどの灰を畑に撒きに行くので、お琴はかまどの横にある桶の中で食べた茶碗を洗いなさい」
卯木はお琴に指示をして、かまどの灰をかき集め始また。お琴は自分と卯木が使った茶碗を重ねて持って、すでに水を張ってある桶に茶碗を入れて洗い始めた。
「片付けが終わったら、次の仕事がありますからね。もうひと踏ん張りですよ」
卯木に言われ、お琴はよし、頑張るぞ!と自分を奮い立たせた。