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おてんば娘と一寸郷士(ごうし)  作者: 宮羽つむり
おてんば娘と椿屋敷
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救出と懺悔

「私はこの神社の神である!」

山車の方から聞こえる凜とした声。

叫び声や悲鳴が響く中、その声は村人達の動きを止めるのに十分だった。

どこに声の主がいるのか見回すが、それらしき人物が見当たらず気味悪く思う。

声の主はホオジロと共にお琴の肩の上にいるのだが、やはり見えないようだ。

すぐそばにいる神主も驚きを隠せない。

自分の近くで聞こえる主が見当たらない声に恐れたのか、お琴から距離をとった。

「動物達は私の倦属である。むやみやたらに人を襲う事はない。動物達の命を奪おうとするのであれば、私が容赦しない。私がここに現れた意味は分かっておるだろう」

村人達は静かになると今度は、

「あの娘は本当に神の使いだったのか……?」

「神が娘を助けにきたという事は……」

「あの娘は本当に神の使いだったのだ!でなければ、この動物達と声の説明が出来ない」

とこの摩訶不思議な状況を認め始めた。

「お琴。今、縄を解く」

清隆が手を上げると、お琴の周りにりすが集まってきた。

りす達は歯でお琴の口と手の縄を噛みきって、お琴を自由にしてくれた。

「……っ。ありがとうございます。清……じゃなくて神様!あそこの納屋にもう1人閉じ込められています!助けて下さい!」

お琴は納屋を指差す。寿言を助けて欲しいと目でも訴える。

「相分かった。皆の者、納屋を壊せ」

清隆は納屋を指差すと、お琴の肩に止まっていたホオジロが納屋に向かって羽ばたいた。

動物達は一斉にホオジロの跡に付いていく。

村人達は納屋が壊されていくのを見ているだけだった。

熊は表の戸口に思いきり体当たりし、牡鹿は立派な角で裏の戸口を突く。

狐、狸、野ねずみの小動物達は納屋の隙間に爪や歯を立てて木の壁を削る。


そして、納屋の表戸が割れた。動物達は納屋から少し離れる。

お琴は山車から降りて、納屋へとおぼつかない足取りで向かう。

お琴の後ろにりす達が続く。

誰もお琴を止める者はいなかった。

お琴は納屋の中に入ると、驚いた表情の寿言と対面した。

「え……。な、何が……」

「か、神様が助けに来てくれたのです。さ、縄を解くから動かないで。お願いします」

お琴はは後ろにいるりす達に頭を下げた。

りす達は小走りで寿言に駆け寄ると、寿言の手足の縄を噛みきった。

「わ、私も神様に助けて頂けるなんて……」

自由になった手足を動かす寿言。

「私を助けてくれたから、神の救いがあるのは当然です」

自信を持って言うお琴に、寿言は優しく微笑む。

「助けて頂いたお礼として、私には最後にやるべき事がある」

寿言は小さく呟くと納屋から出ていき、大声で村人達に告げた。

「皆に伝えなければならない事があります!聞いて下さい!これが今の私に出来る神様、村人達皆に対しての償いであります」


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