第4話「始まり」前編
この後輩はなかなか自分でも気に入っています
「なんで……またここに……」
ナンデッテ
ヨバレタカラニキマッテルデショ?
唐突に目の前にいるアステールが、喋り出した
「呼ばれたってなに?」
コノセカイガキミヲヨンダンダヨ
マタタカエッテネ
「ちょ、ちょっと待って私貴方と契約した覚えはないよ?パンドラに乗って闘うのって願い事をした契約者だけでしょ?」
アステールは口を開こうとはしなかった
「ねえなんで契約したことになるてるの?」
イマハソレハオシエテアゲナイ
アナタガイズレジブンデオモイダスコトダモノ
トリアエズアナタハイマメノマエニイルパンドラヲコロサナイトイケナイ
アステールは私の質問に答えようとはしなかった
サァハヤクノッテ!!
「ちょっちょっと!」
嫌がる私をアステールは無理やりコアへと押し込んだ
「私が思い出すってなんなの……」
その時だった
目の前に現れたピンクと赤のパンドラの
身の丈ほどあるハンマーが目と鼻の先まで迫ってきていた
すぐさま両腕を目の前で組みハンマーを防いだ
防いだ両腕は衝撃に耐えきれず
どちらもひしゃげてしまった
アステールの両腕の痛みが
昴にも伝わってきた
「ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁ」
ダイジョウブダヨサイセイスルカラダケドスコシジカンカカルカラソレマデマデタエテ!
「はぁ……はぁ……そんなこといったって……」
そんなことをしてる間に次の攻撃は始まっていた再び相手はハンマーで自分を殴ろうとしていた
逃げようと足を動かそうとしたとき
機体全体に違和感が生じた
「アステール?!う、動かないよ!!」
何度操作をしても足はおろか
機体自体が動かなくなってしまった
「お、重い……ぜん……ぜん動かない……」
すると
目の前のパンドラは
振りかぶっていたハンマーを下ろし
こちらに話しかけてきた
「どうだい……僕のパンドラグラビティアイは……まるで体が鉛のようだろ……ふふ……僕のグラビティアイの視界に1度でも入ったらパンドラ自体に重力がかかるんだよ……」
聞いていて寒気がするほどおぞましい声だった
「あ、あれ……この声……何処かで」
パンドラから聞こえる声は
何処かで聞いたことのある声だった
「も、もしかしてその声……」
「え、?……もしかして先輩?」
そう確かに先程聞いた声だった
自分は今それから逃げきたばかりだった
そうあの1年生の声だった
「せ、先輩もパンドラに乗ってたなんて!ビックリです!これは運命ですね!」
「何言ってるの?……こんなことやめようよ、ね?こんな下らないことやめようよ?ね?」
「くだらないこと……くだらないことってなんですか?先輩はこれが下らないことだっていうんですか……」
「くだらない事だよ!こんな訳の分からないこと!」
「訳の分からないことって単純なことじやないですか……自分の夢を実現する為に殺し合うだけそれだけの事じゃないですか」
「だけって……」
「まだなにか言いたそうですから僕の大好きな先輩にだけぼくの夢教えてあげますねふふ……僕の夢はですね……大好きな人への想いを成就させることです……
そのためにぼくは今まで勝ち続けて来ました……勝っていくほどにだんだんとその、好きな人との距離は近づいて来ました……そして遂にぼくはそのひとに想いを打ち明ける時が来ました……」
私はそれが誰だかは知っていた
「でも…想いが届くことはありませんでした……でも神様は僕を見放してはいませんでした……だってこうして今目の前に先輩が現れたんですからしかもパンドラに乗って……これは神様が僕に
先輩を倒して自分の物にしろってお告げなんですよ……」
「ち、ちがうよ……そんなことある訳ない……」
「あるんですよ!現に今こうして先輩がいるじゃないですかぁぁぁ!!!!」
相手は大声で叫ぶと同時に
思い切りハンマーを振りかぶってきた
スグには避けきれず再生中の右腕が肩ごとグシャグシャに潰された
昴に伝わる痛みは耐えられるようなものではなかった
「もう……やめて……」
「やめませんよ……ふふ……先輩いますごく綺麗ですよ……はぁはぁ……はやく僕のものにして幸せにしてあげますからね……これでコアを潰せば先輩は僕のものですよ……ふふ……アハハハハハハハハハ!!!!!」
コアだけを壊さずグラビティアイはそれ以外のアステールの四肢や頭部を次々と潰していく
「あぁ……最高ですよ……アハハハハハハハハハ」
その瞬間だった
グラビティアイの額に
1本の鳥の羽の様なものが突き刺さった
「グァァァァァァァッッッッッッ!!!!なんだ!」
僅かに見えるアステールの瞳からは見えるたものは
もう一体の緑色のパンドラだった