2.第2の生ときっかけ
明るい日差しが窓から射し込む。
気が付くと僕はベッドに寝ていた。
ひどく怖い思いをしたような気がしたけど・・・。
寝返りをうつと、雰囲気が違うことに気が付く。
それと、ベッドがいつもとなんか匂いが違う。
慌てて目を開くと、部屋は見たこともないところだった。
起き上がろうとするとまるで力が入らない。
手を、腕を見ると、とても細かった。
僕はどうなったんだろう。
ドアがいきなり開いたと思うと、大きく目を開けた女性が立っていた。
「ショウ・・・ショウ!!目が覚めたの・・・?」
顔をグシャグシャにして喜んでいる。
少し疲れた顔をした女性。
誰だろう。
声に出そうとすると、全く出てこない。
「か・・・は・・・・」
「まだ無理をしちゃダメ。1ヶ月くらい、眠っていたんだから」
1ヶ月?
なんて言ったの?
「ここ・・・な・・・」
「だからダメ。お医者様が結構飲んで痛めたはずだから、喉の調子はすぐに戻らないだろうって」
飲んだ、何を?
痛めたって何?
穴から落ちただけじゃないの?!
気持ちが高ぶるが、反面とても疲れてきた。
何故か体力がない。クラクラする。
体に正直に、そのまま目を閉じた。
また眠ったと思ったのか、さっきの女性が走るように出て行く。
「あなた!!ショウが!!ショウが目を覚ましたわ!!」
翔太は遠くから聞こえるようになってきた。
たったこれだけの時間でも、相当疲れている僕の身体は睡眠を要求している。
状況がわからない。
だけど、僕はまた眠りに落ちていった。
お母さん、お母さん。
お父さん。
帰りたい。
僕はどうなったんだろう。
++++++++++
桜の花びらが満開になる頃。
翔太が行方不明になって、1年が過ぎ、渡す相手のいなかった卒業証書とアルバムが届いた。
最後は2組だったらしい。
みんな少し大人になっている中、右端の写真の翔太だけが少し幼く見える。
洋子は出席すると言って聞かなかったが、なんとか止めることができた。
しかし、俺のその判断の見返りは、一週間ほど、ろくに食べず、ベッドから出ない洋子の行動だった。
「目が覚めたんです」
哲也が会社に行こうと準備をしていたら、ベッドから出てきて一言、洋子がそういった。
「・・・あ、うん。おはよう」
何を言っているんだろう。
普段なら、なにか茶化していると思うが、今は違う。すこしまずいか・・・。
哲也の頭はフル回転し始めた。
最近はビラ配りもしなくなり、SNSの更新も返信もぱったりとないままだ。
周囲の人たちも無関心になり、何事もなかったのように避け始める日常。
そんな中で、ベッドで寝ている洋子に笑顔が増え始めた事が、哲也の気持ちを重くした。
こんな状況でおかしいとは思っていたが、穏やかになったので心のどこかで安心もしていた。
なにがあっても支えていく覚悟はある。
しかし。
「ショウです。少し似ているから呼びやすいわ」
「その、ショウ・・・君は、翔太の学校の友達?近所の?」
「違うの。私のショウなの」
「でも、一番近い同級生はたしか、娘さんだっ・・・」
「違う!!私の子の、翔太なの!!」
洋子は貴方が何を言っているの、と言いたいかの様な顔で哲也を睨みつけた。
その目を見返して色々な心配が哲也の頭に浮かぶ。
誘拐、略奪、いろんなキーワードが浮かんできて嫌な汗がでてきた。
翔太がいなくなってからもう、俺たちも元にもどらないのかもしれない。
「なあ、俺の親戚が看護師をしている・・・」
「ねえ!!おかしくなってないの!!翔太は、生きているの!!」
洋子は引き下がらない。
というより、おかしいのは貴方だと言わんばかりに。
「そうだね、生きている。翔太は生きているよ・・・きっと帰ってくるよ」
哲也からは、もう次の言葉が出なかった。
どんな言葉をだそうとしても、訳のわからないことを言う洋子が怖い。
書き方的に、大体、子供、親、で構成しています。
とても短い時もあります。