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門前仲町小夜曲  作者: ろじかむ
どのジャンルも最強のジョブは大体アレ
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お休み前にうきうきウォッチング/小春

「それ、丈が短いんじゃないか。風邪ひくぞ」

「大丈夫だもん。明日は椿さんちから出ないから」

「…………」


 おとーさんは、私を子供扱いして、すぐ風邪ひくとかそういう理由で私の格好に口出しをしてきます。言い返すとむっとして行っちゃうし。心配してくれるのは解るのですが、じゃあ子供は風の子ですので、ご心配なく。


 玄関先の姿見に映った自分の姿をもう一度確認します。


 てろーんとした、丈の長いセーターみたいな白いワンピース。太ももの半分くらいまであるから別に短くないです。中にシャツワンピを重ねて着ているので、風は通りません。明日はこれにブーツ。

 おニューのお洋服です。小手毬さんのお母さんに買ってもらってしまいました。茉莉くんを面倒見てくれたお礼なのだとおっしゃって、買っていただいちゃいました。


 小手毬さんに「もらっちゃいなさい。迷惑料よ」と言われてしまったので甘えてしまいました。

 遊園地代も出して頂いてしまって申し訳ないです。


「あら、いいじゃない」


 お風呂上りのおかーさんがこちらに駆け寄ってきます。ですよね。小手毬さんがお見立てしてくれたので、悪くないですよね。


「すっかりお姉さんなのねえ、小春は」


 そう言って頭を撫でられます。お姉さん扱いじゃないと思うのですが。これ。

 でもおかーさんにこうしてもらうのは好きなので、甘んじて受けます。


「……ねえ、明日、茉莉くん来ないの?また来ないの?」

「わかんないですけど、明日は来ないです」


 昨日、お店で茉莉くんとご飯食べてアイス食べただけなのに、なぜか茉莉くんに好かれてしまい、皆さんの前で宣言されてしまいました。

 それが一段落したあと、大人の方たちは大人の話がまだあるという事で、茉莉くんをどうするかという話になり、うちに連れて帰る事になったのです。


 予め電話してあったので、おかーさんのお出迎えはハイテンションでした。ごはんが済んでいたので、そのままお風呂に。と言っても、お客さん用にお湯を張り直すところでした。折角なので泡風呂にして遊んじゃいました。かわいかった。茉莉くん。

 小さい子も動物も大好きなおかーさんはメロメロです。パジャマがないのでどうしようとなった時に、バスタオルをかぶって狐になった時はおとーさんも釘づけでした。


 日向家は狐運に恵まれている様です。


 風邪ひいてはいけないのでしっかり乾かして、一緒にベッドへ。翌朝もご飯粒ほっぺにつけながらおにぎりをほおばる茉莉くんに一同でれでれです。一夜にしてアイドルです。

 だからおかーさん、茉莉くんに明日も来てほしいんだろうな、って事はわかります。わかりますが。


 明日は椿さんと久々に二人きりなのです!


 もともと私の家で皆でパーティーするみたいな感じだったのですが、二人きりで過ごしたいと言ってくれたのです。

 他の人が邪魔な訳ではありませんが、やっぱり二人でいるほうが落ち着きます。

 幸せをゆっくり堪能できると言いますか。


「あ、椿さんの事好きだな」って思った時に、好きですって直接言いたいじゃないですか。


 でも皆さんいらっしゃるとそういう訳にいきませんし。

 最近全然そういうのなかったですし。


「楽しみですね二人きり。今日、僕眠れないかもです」


 そう、今日、別れ際椿さんが言ってくれましたし。

 茉莉くんが小手毬さん達と合流する前に「お店に寄る」って言ってくれなければ、明日の事はきっとなくて、普通に私の家でパーティーだったんでしょう。ですから茉莉くんには感謝しないといけないのですが、明日はすいません……


 あ、早く脱がなきゃ。電話来ちゃう。


 この格好を椿さんに見せるのは明日なので。なので。

 そう思っていたら電話が来てしまいました。でも、早い。椿さんはまだお店にいるはずの時間です。違う人かなー。


「小春、電話、椿さん」


 あれ。なんで。もしかして駄目になっちゃったのでしょうか。

 居間から顔を出したおかーさんから子機を受け取ります。あわててるから保留と電源ボタン間違えそう。通話、通話。

 階段に座って、通話スタートです。


「もしもし」

『すいません、小春さん。今日帰れそうになくて』


 電話の向こうは大変賑やかでした。お店はお暇なはずでしたが。一体どうしてしまったんでしょう。


『なんか……神様たちのテンション上がって来ちゃって、帰ってくれなそうなんですよ』

「あら」

『明日の朝には必ずいますから、で、朝とお昼ご飯、こっちで材料用意しておきますから、小春さんは手ぶらで来てください』

「わ、わかりました。頑張ってください」

『あの、すいません。それじゃ』


 あっけなく、電話は切れてしまいました。ちょっと物足りない。

 いいですもん。明日一緒だから。


 一緒……。


 昨日はびっくりしました。いいいきなり街中で……思い出すのも恥ずかしい。


「久々に見たら、自分を止められなくてすいません」

 だそうで……。


 子供じゃなくて、ちゃんと、そういう、恋人として見てもらってるって事ですよね……。

 うれしいけど、ちょっと恥ずかしかったです。

 顔熱くなってきた。

 なんか、どきどきして、眠れないかもしれません。今日私も。


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