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門前仲町小夜曲  作者: ろじかむ
どのジャンルも最強のジョブは大体アレ
59/155

昔はかわいかったのね、君/茉莉

「あ、よかったわ!まだだった!あらーやっぱりいい感じじゃない!絵になるわ―」


 そろそろ4時だ。今日、おやつ食べてないなあ。


 ぼくとかあさまは、今、ビルの屋上にいる。

 そうしてそこからとても大きな建物の様子をうかがっていた。普通の人間なら見える距離じゃないが、ぼくらは妖狐なので、遠くを見ることができる。

 その建物から小手毬ねえさまと、椿が出てきたとたん、かあさまはひどく喜んだ。


「いい感じって、なんですか?かあさま」

「うふふー。椿が、茉莉のお兄さんになるかもって事。小手毬のお婿さんになって!」

「えっ!?椿がですか」

「さんをつけなさいって言ってるでしょう」


 小手毬ねえさまは格好いい。術も上手でお強い。椿と全然似合わない。

 でも、さっきまでお邪魔してた泡沫おばさまも「椿、うちの婿に欲しかったのに―」と、おっしゃっていた。


「椿のなにがいいんですか」

「椿のいい所はほんとうに沢山あるんだけど、一番は顔です」


 かあさまはとっても真剣な顔だった。


「えー。あにさまたちのほうが全然かっこういいじゃないですか。革ジャン似合うし」

「ああ、人間に化けている時はそうね。造作は悪くないのにうすらぼんやりしてるのよね。化けるのがへたうまよね。そうじゃなくて、狐のとき、あの子それはもう美形なのよ!椿のひいひいおばあさまの科戸って方そっくりでね。もうその方がわたくしよりずうっと年下なのに、なぜか「お姉様♡」って呼びたくなっちゃうような素敵な方で……」


 かあさまは盛り上がっている。


「かあさま、番いって、好きな人とならなくちゃいけないんじゃないんでしたっけ」

「もちろんそうよ。でも、小手毬は椿の事好きだから、後はあの子が勇気出して押せばいいだけだと思うのよね」

「え!?小手毬ねえさまがですか!」

「そうよ。椿より小手毬の方がうーんと年上だから、恥ずかしくて言えないだけなのよ。ばかねえ。愛に歳の差なんて関係ないのに」


 小手毬ねえさまも椿の事が好きなんて。そんなに格好いいのだろうか。狐の椿。


「番いになる相手の顔って、重要ですか」

「えー?……あら……よく考えたらそうでもないわね……お父様そうでもないものね。一番は一緒にいてうきうきするかだわ。見目が良いのは、あったらいいけど、ないならないでってくらいの要素かしらね。カレーの福神漬けくらいのものです。だって茉莉、椿に遊んでもらうの、楽しいでしょう?」

「……小手毬ねえさまとは、椿、似合いません」


 ぼくが言うと、かあさまは「ふふ」と笑った。


「似合う似合わないじゃないの。本人達が幸せならそれでいいの。あら!解散しないで二人でどこか行くわ!後をつけるわよ!茉莉!」


 椿は、ぼくが最強の妖狐になるために倒さなければいけない当面の敵だ。

あにさま達は強すぎるから。べつにやっつける訳じゃなくて、術とかそういう事で勝つとかそういうことだ。


 この間ぼくは、椿より先に番いを見つけると宣言した。小手毬ねえさまと椿が番いになっちゃう前に、ぼくはぼくの番いを見つけられるだろうか。


 一緒にいて、すっごくうきうきする、そんな相手。いるのかな。

いままで会った狐の中にはいなかった。


 だから、ぼくはきっとこの勝負で椿に負けてしまうんだ。ものすごく悔しい。


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