真夏の見ッ会、延長戦/彼のターンだけど彼女のターンのような
あー。昨日はさすがに飲みすぎました。頭ガンガンします……
昼から終電コースはさすがにきますね。小手毬ちゃん大丈夫ですかね。
まあ、今日も休みですしだらだらしましょう。
なんだか小手毬ちゃんがやけに小春さんの事聞いてくるから小春さんの事、色々思い出してしまいました。
何してるんだろ。夏休みの宿題とか終わったんですかね。
RRRRRR
あれ、電話。
そうだお休みだから、お店の子機、僕の部屋にあるんでした。
薄い灰色のそれを手に取って通話ボタンを押します。誰でしょう。
「はい、もしもし」
相手が間違い電話電話だった場合、非合法なお店やってるのがばれるといけませんからね。
お店の名前は言わないのです。
『もしもし、椿さんですか?』
あ。
「そうです」
久し振りに声、聞きました。
「どうしました?小春さん」
なんか身体から力が抜けてしまいます。
だめだ布団に寝転がろう。
『突然すみません。あのですね、日曜なんですけど』
「宿題が終わってないんですか?」
『そんな訳ないじゃないですか。もー』
そうですよね。そういう感じじゃなさそうです。
それにしてもこんなに近くで小春さんの声が聞こえるなんて頭がくらくらしてしまいます。
「…………」
『椿さん、あの、聞こえてます?』
「あ、は、はい。聞こえています」
『あの、もし、すごく見たい映画がある訳じゃなかったら、別の場所につきあって欲しいのですが』
「どこですか?」
『葛西臨海水族園です。あの、チケット貰ったんですけど』
あ、行った事ないです。そしてまあ、そこでも喋らなくても済みますしね。
「じゃあ、そこにしましょう」
『うちから微妙に行けないので、ぐるっとしてくんで、東都駅待ち合わせでもいいですか?』
確か葛西だと東西線と京葉線、距離ありますもんね。
「わかりました。京葉線の、お店に近いほうの改札って知ってますか?」
『多分、大丈夫です』
「そこで待ち合わせにしましょうか」
あれ葛西ってご飯食べる所あるんですかね……?
『あの、私その日夜予定があってですね、集合を早めにしてほしいんですが大丈夫ですか?』
「ええ。大丈夫ですよ」
『10時とか』
まあ、こっち戻って来てもいいですしね。
「それで大丈夫です」
『じゃあ8月27日、10時に』
「はい、また」
子機を元の場所に戻して、布団に戻ります。なんか不意打ちくらってしまいました。
身構えていない時に、あの声を聞くと結構ぐらつきます。
「こはるさん・・・」
もう本当に何で彼女の事になると、こんなにも心乱されてしまうのでしょうか。
だめです。心を静かにして、この気持ちには決して気づかれないように。