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門前仲町小夜曲  作者: ろじかむ
門前仲町小夜曲
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真夏の見ッ会/センセイがログインしますた

「あっ、小手毬ちゃんが椿くんに詰め寄って椿くんがかわしてる、なんかひいてる!これ多分小手毬ちゃんがねー椿くんのこと好きで、椿くんはまったく気づいてないパターンだよ!大丈夫だよ小春ちゃん!!」

 双眼鏡をのぞいた先生は楽しそうに私を呼んでいますが、そんなものを見に行く元気は私にはありません…………。


 だって椿さん、私といるときより楽しそうです。


「あーもー、落ち込み過ぎじゃ、小春」

 店長さんは私の頭を優しく撫でてくれます。


 撫でてほしい人は向こうで楽しそうにしています。

 双眼鏡とこちらを見比べて先生は私の隣に座ります。


「あのだね、小春ちゃん…………えーと…………」

「やっぱり迷惑だったんですかね…………私の事…………椿さん、いつも私といるときあんなにゆったりしてないんです。しゃっきりしてるんです」

「…………」

「…………」

「いつもこう、お店に連れて行ってくれても向かいに座るんです。あんな風に隣には来てくれないんです」


 そうです。いつも背筋ぴんとして、どこかよそよそしいんです。


「いや、飲食店で隣に座るのはカップルでもイタイからねなんか。向かいは普通だからね」

「…………」

「そんな事ないよ?絶対そんな事ないよ?」

「…………」

「…………」

 いいんですよ。二人で目配せなんかして。慰めてくれなくていいんですよ。


 ※※※※※


「……へえ、そうなんだ」

 小春さんとの出会いと再会とかの事情をかいつまんで、小手毬ちゃんに説明してみました。

「そうなんですよ」

 僕と彼女の気持ちは伏せて、友人のような関係だと。そこを口に出すとまた切なくなってしまいますのでね。

 小手毬ちゃんも「告白しなよ!」とか言ってくるタイプですし多分。


「かわいいの?」

 それはもう。

「妹がいたらこんな感じかなーっていう。僕一人っ子でしたし」

 途中まではそうでした。ええ。本当にそうでした。

「…………なんだ、彼女かと思った」


 そうだったらいいんですけどね。


「この年でそんな無責任な事出来る訳ないじゃないですか」

 せめて小春さんがもう少し早く生まれていたらなあ。と、思った事もありますが結局僕の命の長さは変わりませんので、きっと同じことだったのでしょう。

 なかなかうまくは行きません。


 シャツの裾を引かれてそちらを見れば小手毬ちゃんがなんだかしょんぼりしています。

「どうしたんですか」

「あんたがいなくなるのは、寂しいわ」

「相変わらず、優しいですね」

 小手毬ちゃんの生きてきた時間からすれば、僕との友人歴なんてすごく短いものでしょうに、こうして気にかけてもらってありがたい事です。

「…………椿、このあと暇なの?」

「ええ、あと帰るだけです」

 その言葉に小手毬ちゃんがにやりと笑います。

「飲み足りなく、ないかしら」

「いいですね、行きましょう」


 ※※※※※



 あーもーほんっとに昼ドラ大好きなんだよねえ。大したことのない色恋沙汰や遺産相続に、こじれにこじれにこじれまくるあの展開ィ!昔を思い出すよ……!


 おっと。ボクの事はいいんだよ。

 今はこっち。


 なんだ椿くんなかなかやるじゃん。何話してるかわかんないけどあの小手毬ちゃんって子完全に勝負に出てるじゃん!

「ああ…………いっちゃうけど…………小春ちゃん」

「…………」


 ああ、小春ちゃん、今だよ!


 今飛び出して行って「椿さんっ、その人、誰ですか?」って行く所だよ!

 ベンチで麗ちゃんにもたれかかって、虚ろな顔してる場合じゃないんだよ!


 椿くんだってあんなほわんほわんしてて、キミいない時パンケーキ焼くと油断して、超はにかんでる程キミの事好きだけどさー、男だから!

 美味しそうな膳がそこにあったら手を出さざるを得ないのが男ってもんだから!

 ほらー!小手毬ちゃんが椿くんの手首掴んでる!グイグイ行ってる!

「小春ちゃん、あそこに割り込んでったら?」

「行けませんよ。先生、私ただでさえお店に押しかけて椿さんに迷惑かけてるんですよ……なんか年下だからいつもお茶とか映画とかご馳走して貰ってるし……」


 それね椿くんはキミの事好きだからだからね。


 さすがにそれは椿くんの口から言わせるべきだから言わないけどね。

 あーあー言いたい。

 椿くんねーもうねー小春ちゃんが男の子と歩いてるの見たショックで、カクテルグラス5脚割ったからね。

 シャンディ―ガフ作ろうとしてコーラぶち込んでたし!


 というか、最近の女子高生ってスゴイんでしょ?コギャルとか。

 なんで小春ちゃんはそんなに時代に逆行して清楚なの?控えめなの?ルーズソックスはかないの?ボク結構好きだよあれ。

 あ、話ずれた。あの子達みたいにさー遠慮なしに行ってもいいと思うんだよねえ。

 もはや荒ぶる獣だもんねえ。コギャル。


「いいの?それで」

「いい訳ないですけど、椿さんは私のものじゃないんですから行けません……」

 麗ちゃんもさー……何かいってよ。何でボクの事を責めるような目で見るかなあ。

「先生、大丈夫です……落ち込んでますけど……私、諦めませんから」

 あれこれ、東急ハンズでデッキブラシとか買って来たほうがいいパターン?

 うーん、売ってるのかなあ…………

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