四回目も浮つかない/彼女のターン
本日は7月26日。第4土曜日。
夏の日差しがじりじりと首の後ろをやいて行くのを感じます。日焼け止め塗るの、わすれてしまいました。失敗しました。
「あれはフィクションですよ。そもそも二足歩行する訳がないでしょう。あんな風に」
「そうなんですか?」
封切りされたばかりの映画を見終わったのですが、椿さんは珍しく不機嫌そうです。
映画大好きで、先生が酷評するような映画も「あれはあれでいいんですよ」とか言ってよく喧嘩になっているのに。何ででしょう。あ。
「じゃ、じゃあ狐もあんなんじゃないんですよね?実際」
「そうですね。少なくともあんな風に狸に出し抜かれるようなへまはしません」
唇とがらせてる椿さんなんて初めて見ました。ちょっとかわいいです。
「仲悪いんですか?」
「そもそもスタンスが違うんですよね。狐はこう、ストイックなんですよ。自身の術の向上のために化かして人を脅かしたりするんですけど、狸は自分が面白ければ何でもいいみたいな。阿呆なんです阿呆。結果楽しくなりすぎて狐が細心の注意を払って行ってる策略を気付かずにぶち壊して行って、でこちらはたまったものではないので抗議しても向こうはどこ吹く風なので更に関係が悪化するというのがもう、何千年の昔からですね…………」
珍しく長口上です。一生懸命です。と、椿さんはこちらを見て咳払い。
「この話やめましょう」
「え、もっと聞きたいです」
「人間の小春さんには関係のない話でした。平成狸合戦ぽんぽこはフライドチキンが食べたくなる、とてもいい映画でした」
そう言って椿さんは少し早めに歩いて行ってしまいます。
もっと知りたいのに。椿さんの事。
そんなこと言いながらラストシーンとかで鼻すすってたの聞こえてますからね。
あれ絶対泣いてましたよね、椿さん。