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門前仲町小夜曲  作者: ろじかむ
ちょっとした狐噺3
134/155

解脱と闇落ち(1)

 あらかじめそうなることは知っていたというのに、いざなってみると驚いて、そしてじりじりと高揚していくこの感覚。


 夜のにおいが夏のものに変わったな、と気づく時に似ています。

 ……今、バリバリ冬なんですけどね。ええ。


 いてもたってもいられないので布団から出てはしゃぎまわりたいのですが、夜中なので我慢です。ご近所迷惑はいけません。


 その期間を脱すれば、口にする事、思い浮かべる事すら恥ずかしい、忌まわしい期間が終わりました。今、唐突に。


「………………」


 体が軽くて、頭がすっきりしています、どこまででも走っていけそう。


 いえ、不審者になってしまうので実際にはしませんが。誰に引き取りに来てもらうんだって話ですよ。


 警察署の人をだまくらかして僕を連れ出せるのは店長さんしかいないのですが借りを作るのはめんどうくさいので無理です。

 人の世に溶け込んで生きるには色々足りない僕ですが、だからこそ人の手を借りる機会は最小限にしたいですし。


 それくらいのプライドはあります。


「………………」


 さて、うすら色ぼけ……どちらかといえばどどめ色ぼけ……ここはっきり自覚しておきませんと。僕の欲望はえぐい。心底えぐい。悔い改めたい。


 そんなモードから脱出したらしなくてはと思っていた事を起きたら色々片づけはじめませんと。

 まず電話して、それから店長さんにあれこれして、山茶花ちゃんをゴリゴリのめためたにして、それから。


「………………」


 もう、我慢しなくていいんですね。


 ちゃんと小春さんの目を見ても平気、触れるときに余計なことを考えながらじゃなくてもいい。気を張り詰めなくていい。心の中に湧きあがった時にそのまま好きと伝えてもいい。


 まだ実践してないのに幸せです。思わず口元が緩む。

 早く会いたいなあ。


 日向家の合鍵をいただいてはいるのですが、勝手に入る訳にはいかないので朝を待ちます。あと5時間くらいの辛抱です。

 なぜか無性にどきどきしています、初めて一緒に出掛ける事になった日のようです。


 ほんとう早く会いたいな。


 頭の中はそれでいっぱいです。目が冴えてきてしまったのですが、頑張って寝なくては。

 最高の状態で小春さんと会いたい。ので。なにか眠くなることを考えます。

 このわくわくを打ち消すような何か。


 最近荒れている店長さんの世話がめんどうくさいです。

 山茶花ちゃんは何かあると一言言わない時がすまないタイプで、堅香子さまの苦悩がしのばれます。どうしてああもみなさん問題児なのでしょうか。

 あの方々の乱行に思いを馳せると気が遠くなってこのまま眠くなれそうです。


 いい調子です。いい調子。

 起きたら小春さんと出かけたい場所とかしたいことを箇条書きにしてみましょう。優先順位を決めて、小春さんの予定と希望を聞いて。


「…………」


 やらなくてはいけない事はたくさんあるのですが。ちょっとくらいご褒美があってもいいじゃないですか。春休み間くらいは小春さんの事だけ考えていたい。そうです。


 あ、目が冴えてしまった。いけません。


 山茶花ちゃん用のお酒の分量ドリルを作って、店長さんが面倒くさかった時用にたい焼きを買っておいて、あとこまごましたものを買いに行くので明日は早めにここを出て……ねむれます、とてもよくねむれそうです


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