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このゲーム、無理ゲーです。  作者: 音無 紗乃斗
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【第7話】救われないわぁ……。

 俺の心の葛藤など露知らず? ……の彼女は、フィールド外へと繋がる村門へスタスタ歩いていく。


村門に向かう途中、通りがかった店の武装をのぞいてみると……なんとただの剣が9000ゼニー台後半で売っていた。


 なんかこの世界の武器の価格設定が妙に現実くさい…………序盤装備が9000超えとか、どんな高級装備だよ。

……鉄製の真剣を現実の鍛冶屋に頼んだ時も、そのくらいするんじゃないか?


あ、日本刀は除く。あれはちょっと歴史的例外。

値が張る分、日本のオーバーテクノロジーとか評されてるだけあってあの性能は時代の先取り過ぎだ。


詳しく説明すると長くなるのだが、日本刀は「斬る」ための物で西洋剣は「叩く」ための物、とでも言えば良いだろうか。

切れ味や寿命など、耐久性以外のほとんどに置いて日本刀が(まさ)っていると言えるだろう。


西洋と日本で防具に傾向の違いがあるのもその為だ。

西洋甲冑は衝撃吸収を目的としていたりだとか、武士甲冑は斬られにくさ重視だとか……。剣と聞くとスパスパ斬れるイメージがあるが、西洋剣のそれは重さと鋭部を利用して力任せに分断しているに過ぎない。

日本刀は西洋剣と比べて比較的軽く、重さに任せて斬ると断面が粗むため、斬り方にコツが要るそうだ。あれは真に「切れ味」を利用して斬っている。


なぜそのような発展の違いがあるかと言えば、日本が小さな島国なのに対して西洋は陸続きの国々なわけで……ヨーロッパの総人口と日本の総人口など比べるまでもないし、戦で必要になる武器の総数もかなりの差があるわけだ。

つまるところ、武器の生産性や造りやすさなんていうのも差異の理由になっている。


……無論、それぞれを造る過程や材料等にもかなりの違いがあるわけで…………だから西洋剣。

西洋剣なんかを海外の鍛冶屋に頼んだ時は……たぶん一万前後くらいだろう。


金属レートがどのくらいかにもよるだろうが。

……完全に話が脱線した。ゲームの価格設定の話に戻ろう。


 ……さて……改めて考えてみると…………実際に鍛冶屋に頼んだ剣を店で売りに出す……手数料込みとか、そうなると9000ゼニーって結構安いのかも…………しれない。

……などと、早くもこのゲームの色に染まりつつある俺の価値基準。


危ない危ない……

間違いなくこの装備はぼったくりだ、高すぎる。

このゲームの価格設定はおかしい。


……つまるところ制作者の頭がおかしいということになるが…………。剣以外にも、例えばこれ。


ゲーム内なのだからほとんど誰も食べようとしないレタスなどの野菜が、一個600ゼニーで売っている。


回復アイテムなのだろうが、他にもマシな食べ物(回復アイテム)がある中で、レタスは選ばないだろう…………間違っても初期金額の3分の1以上を使って買うような代物ではない。


そしてこれは突っ込ませてもらうが、現実に600円もするレタスなんざ誰も買わん!


 いくらなんでも回復アイテムが高すぎる……あ、もちろん装備品も。……なるほど……これはクエストを多くこなさないと色々きついな……。


 ドロップするゼニーがいくらかにもよるが。


 彼女が歩いている際中に話してくれた内容によると、クエストはジョブ保有者でなければ受けることが出来ないらしい。

そのジョブ限定のクエストもあれば万人ができるクエストもあるそうだが、まぁ当然「無職(ニート)」がやれるクエストなどないわけで……。


 あれ? そういえば……


彼女のジョブはなんなんだろ?






 いや……、しかし。


 よく考えて見ると……、ゲーム内であえて非表示にされているステータスを無闇に聞くのはいかがなものなのか。


間違っても俺は自分の職業なんざ言いたくない。

あ、これはリアルでも一緒だ。


 なんとなくこういう場ではリアル関連の話題はタブー扱いだし、それに……このゲームでは初期ジョブから相手の素性が割れかねない。


聞くのは失礼というものだろう。


あ、初っぱなからチキン割れした俺はどうあっても救われないわぁ……。


 そんなことを考えながら歩いていると、既に村門手前まで来ていた。


……さっきも思ったけど、始まりの村にしては規模がかなり大きいな。

商店街や村役所が置いてあったり、ちょっと豪華過ぎるくらいの大きさだ。

それに確か、商店街の裏通りには他にも色々と店が並んでいたような……。

ちょっと力入れすぎじゃないのか? 発売から1年……というのは短くもあり長くもある、節目の時期。アップデートもイベントも、プレイヤー群にとってはむしろこれからが本番と言ったところだろう。

なのに序盤でこんなに作り込んでて…………マップが途中で跳躍23次元とか空間断絶とかしてないといいけど……。


そんな心配をしてしまうほど、グラフィックも作り込みも見事だった。


 村門も木製とはいえ十分立派だな……。

……ここをくぐったら戦闘フィールド。

モンスターや他プレイヤーから狙われることになる。


 攻撃料金が存在していることからも察することが出来るように、このゲームはPK(他プレイヤーを殺す行為、プレイヤーキルのことだ)がOKなゲームだ。

アイテムやお金を取られることになってしまうので、出来るだけそれは避けたい。


中には好き好んでPKしまくるプレイヤーもいる。

モブ狩りとプレイヤー狩りと、どちらが効率的かと言えば一長一短なので一概に言えない。


例えばプレイヤーなら預金額が多くて所持金が少なく、PK時のドロップマネーが少なかったりするわけだし……それ以前に負けるかもしれないことを考慮にいれるなら、マイナスになる可能性だってあるわけだ。


それならモブ狩りに興じていた方が有意義だと俺は思うが、例外はあり……新人狩りとかがそれだな。

初めたばかりのプレイヤーだけを狙ってPKするなら、初期金額が手に入るし……効率的にも悪くはない。


……無論、無闇やたらに格下をPKしまくるような奴は顰蹙(ひんしゅく)を買うことになり、物好きな熟練プレイヤーに狩られることになるのだが。だから俺はそんなことはしない。


どっちにしろ今のレベルでは俺達がその新人なので、土台無理な話なのだが。


「じゃあ、行きましょうか」


「う、うん!」

 村門に向かって歩きはじめる……(まさ)にその瞬間。


「ちょっとそこのあんたら!」

俺達は誰かに呼び止められたのだった。


フィィィィィィィイイイイイイイン______


突如俺の周囲から、ちょっと前に聴いた効果音(サウンドエフェクト)が鳴り響く。


あぁ、またか……


 緑の光が俺を包んだ____。

【次回の投稿は6月17日20時を予定しています。読んでくださった方々、ありがとうございました】

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