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このゲーム、無理ゲーです。  作者: 音無 紗乃斗
39/46

【第38話】それでも悪夢は終わらない。

 ________カシャン


 銀色の閃光が(ほとばし)ったその直後、目の前に立つ牙無しのゴールデンスターファングが、その巨体を揺らしながら…………前のめりに倒れ込む。

________決してスタンなどではない。


…………やがて黒いエフェクトライトが王を包み、……重圧のある効果音(サウンドエフェクト)と共に跡形もなく消えてなくなる。


「た……倒した……」


 ……正直、実感なんて沸くわけがなかった。

そこに行き着くまでの過程が、自分の中で整理しきれていなかったこともあったし……何より最後があっという間過ぎて……あれ、というかあれ……? 

金豚どうした、金豚。まだ一匹残ってたろ?


「あいーんさん! 後ろ!」

必死に叫ぶノムさん。


後ろ……?


ガッ__________


「っ……!?」

真っ黒い効果光(エフェクトライト)が俺を包む。


【You are dead】

…………は?






Penalty(ペナルティ) Time(タイム) Now(ナウ)


チャ~ララララララ~ラ~ラ~ラ~♪

チャ~ララララララ~ラ~ラ~ラ~♪


眼前に写し出される、ペナルティタイムに入ったことを知らせる文字列。……そして聞こえてくるバックミュージックが……


……よ、よりによって電話の保留音と同じ音楽とか……。

……曲名は確か…………エルガーの「愛の挨拶」だっけか……?


 ……クラシックなんて全く聞かないのに、曲名知ってただけでも奇跡だな、うん。


……てか、…………このゲーム作ったやつ頭おかしいだろ……。手ぇ込めるとこと抜くとこ絶対ぇ違う…………


せっかく王を倒したのに死んでしまった俺だったが、元より死ぬ覚悟で臨んでいたため精神的なダメージはそれほど大きくはなかった。

______そのためか、三分間のペナルティタイムは、俺にとって本当に短く感じられた。

……もしくは、対戦の余韻(よいん)に浸っている間に過ぎてしまったか。






 兎にも角にも、そんなわけで束の間の三分が過ぎ。


_______フィィィィィィイイイイイイン

電子音と共に戦闘フィールドへと引き戻されるあいーん。


「あ! 戻ってきた」

後ろからノムさんの声が聞こえてくる。


「ご、ごめん……お待たせ……!?」

こ、これは……

「の、の……ノム……さん?」


「ブゥ……ギィ……」


 振り向くとそこには……実に弱々しい鳴き声を漏らす元金豚が倒れていた。


 ……尻尾と四肢、そして牙がない。

尻尾を切り落としたのは見ていた……が、牙、両前足、両後足が切り落とされているのは見ていて相当痛かった。


さらに言えば、本来一撃で仕留められるほどの攻撃力を持っているノムさんが、力加減を意識しながら全箇所部位破壊をしたと考えると…………精神的に何かしら堪えるものがある。


 端的に言おう、(むご)すぎた。


「よくもあと一歩のところであいーんさんを……まあ戻ってきましたし、(とど)め刺しますね」


「あ……」


ズショッ________


ブフォッ……チャリーン______

あまりに軽い効果音が、なんとも言えない焦燥感を生む。


「あの……ノムさん……」


『Congratulations!!』

____話しかけようとするがしかし、音声と派手な効果音に掻き消される。






【RESULT】


【Monster】

Golden Servant Bpigfang:5

The King of Golden Star Fang:1

Total:6


【Zenie】

あいーん:5125

Nom:5125

Total:10250


【Experience】

あいーん:45

Nom:45

Total:90


続けて表示されるリザルト画面______


「凄い……ゼニーがこんなに!」

経験値も普通の群れの数倍はある。

「やったよノムさん!」


先ほどの嫌なイメージを掻き消すためにも明るく言ったあいーんであったが……


「……ノムさん?」


これだけの大報酬を前に、ノムは微塵も喜ぶ素振りを見せない。

「あー、俺が死んだことなら気にしなくてもいいよ?」とか言うべきだろうか……。

いや、俺のことでこうなってるんじゃないならスゲー場違いな台詞だし……うーん……


 1人悶々と考えるあいーんをよそに、複雑な表情でリザルト画面を見つめる彼女。


______だったが唐突に____

「ふっ……ふふっ…………」


「……? の、ノムさん?」


「あはははっはははっ」

笑いだす。


 訳がわからないあいーんは困惑しながら(たたず)まざるを得ない。

「はは……ふぅ…………。あいーんさんって面白い人ですよね」


「え?」


「だって途中から超大真面目な顔で避け始めるんですもん。たかだかゲームにそんな必死にならなくったって……ふふっ、でも凄かったですよ、あの時のあいーんさん!」


「え……あ、そう……? はは……」

やばい、こういう時に何て言えばいいのかわからない。


誉め言葉として受け取って……いいんだよな? 少なくとも最後の部分は。


「別に死んだからってデスペナルティだけで済むのに……あいーんさん、話してて思うんですけど頭でっかちなところあるから……どうせ深く考えこんだりしてたんでしょう? 大袈裟だなぁ……ふふっ……あははっ」

唇に軽く握った手を当てながら、笑いをもらす彼女。……可愛い。


……まぁ、内容は相変わらず素直に喜んでいいものか悩むけれど。

…………というか俺、あんなに必死になってたのが馬鹿みたいだなぁ……トホホ……。


「それからあいーんさん」


「はいっ!?」

すっとんきょうな声で返事をする。


「……あんまりその格好で堂々としないでもらえると……助かります」


「……?」

自分の服装を確認。


……服がない。


下はそのままだったが、なんと上半身裸になっていた______。


「そ、そんなぁ…………」


「ふふっ……」


「……ぁはは……」

彼女につられて笑う俺。……もう笑うしかない。


笑い声は少しずつ大きくなっていき______

そのフィールドで戦闘が終わったことを実感させていた。


……しかし。

けれど。


______それでも悪夢は終わらない。

【次回の投稿は7月31日20時を予定しています。読んでくださった方々、ありがとうございました】

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