【第31話】めっちゃいい子……
ドドッドドッドドッ______
「くっそ……無敵とかマジで勘弁……!!」
続く三匹目の攻撃をかわす。
_____あ、元から俺は攻撃出来ないから関係ないか……。
先程まで以上に金ピカに光る豚。
無敵時間が長いゲームなど聞いたこともないが、事実こいつらは既に十数秒も無敵状態が続いている。
このゲームでは……攻撃する、もしくはされると、当たった箇所には赤いダメージ演出が入る。
ナイフで斬りつければ被斬撃演出が、突進をもらえば破損演出が……。
今こいつらに掛けられてる補正が、防御力アップの類いであれば…………それらの演出は出るのだろう。
が、ノムさんが斬りつけてもその演出が入らなかったということは、やはりこれは無敵補正だ…………
無敵の場合、補正というより単にステータス変化のような気がするけど。
フイイイイイィィィィィン______
唐突に鳴る発動サインの効果音。
補正が変わる______?
……ィィィィィィン…………
光が……消えた!
「効果切れだ!」
合図を送るように叫ぶ俺。
攻撃をかわしつつノムさんのいるはずの方向へ目を……
____いない!?
背後で炸裂音が弾け、黒味がかった光を眼の端で捉える……
倒した時に出る黒い効果光だ。
やった…………のか!?
いつもながらノムさんの瞬発力と跳躍力には驚かされる…………とても6レベとは思えない。
俺とノムさんの間にはステータスにかなりの開きがあるが、ステータスには表示されていない隠しパラメーター……例えば素早さなんてのがあった場合、それにもかなりの差がありそうだ。
それとも種族補正?
回避補正の恩恵はものすごいし、彼女の種族が移動速度補正に特化しているのなら……隠しパラメーターがなかったとしても納得だ。
同じ推測で言うのなら職業の補正という線もあるけど。
無機質なチャリーンというサウンド。
これで残るは三匹……。
まだきついけどこれなら……いや、ボスの力量が未知数なだけに楽観視は出来ないか……。
「ブルロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
……噂をすれば……か……
「また補正……?」
半ば呆れ、半ば諦め……そんな意が込められ言葉がノムさんの口から発せられる。
三匹全員がラグ状態だったため今回は発動シーンをじっくりと伺うことが出来た____
フィールドが揺らぐほどの王の絶叫の後、みるみるうちに豚達の体つきが変化してゆく……
金色の光を包む、深紅の光……その光の出現とともに増大する筋肉。
無敵には体の変化がなかったのだろう、そんな様子はなかった。
速度補正の時は気付かなかったが……多分スマートになっていたのかな?
「体つきを見ただけで、ここまであからさまに補正が分かるってのは……考えもんだと思うけど」
ため息混じりに呟く。そもそもこういう補正は初見殺しくらいがベストで(あいーんノ持論ハ以下略)
スピードが上がるとかわしづらくなる、無敵になられるとノムさんが攻撃出来ない……
さっきまでのと比べて今回の補正はそこまでの脅威じゃない。
「深紅は攻撃補正か……」
金は無敵、蒼白は速度、深紅は攻撃。
他にもあるのかも知れないが……とりあえずは相手の手の内が判ってきたぞ。
……まぁ、王様の容姿からして攻撃補正の鼓舞能力があることくらいは想像できてたけど。
「あいーんさん」
駆け足でノムさんが近付いてくる。
今まで戦闘中はあまりコミュニケーションを取らなかったから……なんだか新鮮だ。
改めて彼女の存在を確認したわけで……鼻の下が伸びたりしていないかな…………若干心配になりながらも、どうかした? と明るく対応する。
「さっき攻撃喰らってたでしょう? 体力が不味いんじゃないかと思って……だから……これ、今のうちにどうぞ」
ちょちょいとメニューの操作(何度も言うが俺にはメニュー画面は見えていないので憶測)をし、アイテムが出現する。
手渡されたのは……
「……レタス」
「あっ……えと……値段的にそれぐらいしか有効活用出来そうな回復アイテムがなくて…………効果は高いそうですから、何枚か千切って食べて下さい。食べてる時に突進が来たら放り投げていいです。アイテムストレージの中に戻るので。」
「…………」
ポカーンとした顔で見つめる。
いつの間にこんなものを……。
確か価格は1つ600ゼニー。……そんな高価なアイテムを……
というか待て、俺。
え?
……ということは……だ、
……ノムさん喫茶店に入ったときには既に結構な出費をしてたってこと?
しかも基本的に攻撃を受けるのは俺だから……まさかこれは俺のために?
……待ち合わせに遅れたのってこれを買ってたからってのもあるんじゃ…………
(ノムさんめっちゃいい子……)
はにかみながら定位置に戻って行く彼女を見つめながら小声で呟き、涙腺崩壊させつつもムシャムシャと食べる。
……せっかくの好意を無下には出来ないし、体力は残り半分近かったから有り難く頂戴する。
しかし不甲斐ない……ノムさんの所持金はもはや0に近いじゃないか……。それなのに……俺は…………
やはりゴリ押ししてでも奢るべきだった。
攻撃は出来ない、出費はかさむ、食べ物はおごり……なんてお荷物なんだ、俺は。
グゥーと体力ゲージが戻っていき……二、三枚食べただけで完全に回復した。
効果はホントに高いな。レタス1つで三人分は全回復出来そうだ。……味はかなり酷いけど。
早々に投げ捨て(かなりの罪悪感があった)、黄金の王を睨む。
____これでますます、こいつを倒さなきゃいけなくなったわけだ。
ノムさんにはレタスのお礼も言い忘れてるし、今度は俺が奢ってやるんだ……
……お前を倒してから。
金をいっぱいドロップしろよ?
そんでもってプレゼントなんかも買ってやるんだ。
フレンド登録だって……!
倒さなきゃいけない理由は多い方がいい。気合いも入るってもんだ。
もう種族特性の心配なんてない。
それどころか今のうちに対策立てまくってやるぜ……駄王!
ボクシングでいうオーソドックススタイルの構えを取って精神集中。
攻撃、速度……ときたら防御もありそうだが……無敵補正がある以上可能性は薄いな。
……あとは回復とかか?
回復っていうと緑……緑の光が出てきたら気を付けよう……緑は回復、緑は回復……っと。
……色については完全なイメージだけど。
ラグがなくなり、一番奥にいた豚が突進を始める。
ザッザッ……ドドッドドッドドッドドッドドッドドッ_____
リズミカルな突進。かわしてくださいと言ってるようなものだ。
これで…………おしっ!
タイミングに合わせかわす。
ノムがスタートダッシュを切り、あいーんは2匹目の攻撃をかわしながら引き付けに入る。
セオリーと工夫の混じった完璧なプロセスに支えられ、続けざまに2匹を撃破。
その二人の姿は、もはや新規プレイヤーのそれではなかった。
【次回の投稿は7月22日20時を予定しています。読んでくださった方々、ありがとうございました】




