【第20話】……お、俺?
装備出来る武器がないという事実を知り、ある程度落胆したあいーんだったが……
明日の約束を思い出すことで、なんとかモチベーションを保っていた。
……というより、相も変わらず浮かれていた。
3分後、役所前……。
向かって左にあるのが出入口。
簡易な木製の扉があるだけの、質素な造りだ。
右にあるのがログアウトポイント。
時刻が時刻なので、見る間に数人がログアウトしていく。
ポイントの地面は青白く円形に光っており、そこに立つとログアウトがメニューに加えられるらしい。
各町々にあるそうだが、ここははじまりの村なのでそこまで数が用意されているわけではなく、五つの円が一列に並んでいるだけだ。
発売当初はかなり混雑したそうだが、今ではそういうことはないだろう。
扉を軽く押して、中に入る。
…………目の前が真っ暗になったと思ったら、電灯で明るく照らされた役所内に入っていた。
______あれ? デジャヴだな……、今の感覚どこかで……
……ダメだ、思い出せない。
想い出そうとするのを諦め、目の前を改めて見直す。
受付と売店があるが……たったそれだけの施設なのに、妙に広く感じるのはなぜだ?
……あ!
「鏡張りになってるのか……」
左右の壁は全て鏡で出来ているため、すごく広く感じる。
現実なんかでもよくファミリーレストランとか小洒落た店とかで見かける、店内を広く見せるための工夫だ。
……この場合はいまいち必要性を感じないが。
売店には一切用事がないので、受付時間が終了……なんていう落ちにならないうちに、さっさとジョブチェンしに受付にいこう。
約十数メートルの距離を歩いてゆくあいーん……
「本日はいかがなされましたか?」
……こうして聞くと、さっきの武器屋の兄ちゃんの声……というか話口調はかなり人間じみていたな……。
受付をしている彼女がNPCだとよくわかる。
これなら気負いする必要もなく、自分が無職だと言えるだろう。
……え? チュートリアルで機械音声相手に挙動不審になってたのはどこのどいつだって? ……まぁ、うん、えーっと……
「ジョブを変えたいのですが……」
自虐思考を止めて、受付嬢の質問に応える。
「少々お待ち下さい……」
受付の机から何か取り出す仕草をし、直後、効果音とともに眼前に派生表が出現する。
……アイテムというわけではなさそうだ。
アイテムであれば、先程の片手剣や刺突ナイフのように手渡されるのだろうが……仕草の後にいきなり現れたのだから、ゲームシステムによるメニューに準ずるものなのだろう。
【転職したい職業を選んでください。】
一番上にそう書かれ、その下に村人、見習い剣士、見習い木こりという3つのジョブが並んで書かれている。
どのジョブも右側のスペースが大きく空いているのは……おそらく派生ジョブのスペースだろう。
まだ俺には表示されていないが、ジョブチェンするなりジョブ上げするなりすれば、この【???】の部分が見えるようになるのかな?
……しかし、選べと言われてもタップしてもなんの反応もない。
……というか、なんか全部文字部分が暗いんだけど……。
「現在転職出来る職業はございません」
……。
「このクソゲーがああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺以外に誰もいなかったのが幸いだった_______。
「嘘だろ……」
ステータスが足りないってことなのか?
……いや、足りないにしても防御力が若干低いってくらいだろう。攻撃力はそこそこあるんだ、大丈夫……
そうだ、もしかしたらレベルも条件なのかもしれないし……、まだ10レベにすらなってないから……そうだよ、そう何も悲観的にならなくったって…………
……いや、違うだろう。
パワーバランスが取れてないにも程がある。他のプレイヤーが10レベ未満でも派生ジョブになれてるケースがあるのに、俺達ニートにはこんな仕打ち……
流石にこれはない。ひどすぎる。
ニートにとってこれは鬼畜ゲー以外のなにものでもない……、いや、確かにわかってはいたけど……、ここまでとは正直思っていなかった。
無職だからってひどすぎやしねぇか? いい加減報われても……
受付を離れ、フラフラトボトボと出口に向かって歩く。
ドアの前が光っている……あれが出入口だろう。押す必要はなさそうだった。
ドスッ…………
あまりにも足取りがおぼつかなかったせいで、よろめいて鏡張りの壁に激突する。
「くそぅ……なんで俺ばっかり……」
そう呟いて、恨めしそうに顔を歪ませながら……事の元凶、即ちは自分自身を侮蔑するかのように一瞥する……。
………………?
俺のアバターどこだ?
鏡張りになってるのかと思ったけど、何だか違かったらしい。俺の隣には、俺と同じように何だか落ち込んだ雰囲気の蒼髪の好青年が立っていた。
……目があってしまったのですごく気不味い。
軽く頭を下げて会釈しつつ、ハニカミながらバックステップ…………完璧だ。
ニート流奥義、「避人術」。
相手と会話を交わすことなくその場を撤退できる業だ……誰にでも出来るものじゃない。
……………………
「は?」
……今……向こうも奥義を使った?
……
恐る恐る、その相手に向かって手を伸ばす……。
________コツン。
指と指が当たる。しかしその感触は______肉の感触などではなく、硬い硝子……。
「これ……お、俺?」
彫りは深め、若々しい顔立ちにスラッとした体型……。加えて蒼髪蒼眼という、鮮やかな蒼を主とした色彩。……色白めな肌にマッチングした、果てしないほどのイケメンだ。
そう……さっき会ったVolsなど霞んでしまうほどの、せいぜい二十歳ぐらいになったばかりの好青年。
瞳が獣のように縦に切れているのと、鼻の穴が驚くほど薄く、鼻に横の厚みがないのが現実味を欠いている……。
あ……
あ……
「ぎぃやあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
______こうして、まるで追い討ちをかけるかのように…………
………………俺の悪夢は続く。
【次回の投稿は7月7日20時を予定しています。読んでくださった方々、ありがとうございました】




