表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このゲーム、無理ゲーです。  作者: 音無 紗乃斗
2/46

【第1話】冒険をはじめます、

 製作会社のロゴが表示された後、何だか平面的な文字を無理矢理立体化したようなタイトルが出てくる……


敗人(まけびと)クエスト】


 うん、これだ、間違いない。

……というかこのハードのソフトはこれ以外に持っていないのだから、間違いようもない。


壮大なBGMが流れてくると同時に手元に選択肢が表示され、


New Game?

  or

Continue?


と文字が出現する。


 もっとも選択肢と言えど、Continue……つまり「続きから」というのは灰色掛かっていることからして押しても意味がないのだろうが。


 迷わずNew Gameを選択する。

 空気中……ゲームの中なので空気中という表現が正しいのかは謎だが、とにかく空気中に浮かんでいる文字をタップする感覚で軽く押す。

文字が一瞬だけ淡く光り、表示されていた全てのロゴ等々がスウッと消えていく。


 画面が切り替わる。冒険をはじめます、Road中です……


 一般的な読み込み画面だ。


ヴン……という音をたててそれらが消え、キャラクター作成チュートリアルが始まる。……ちなみに音声によるチュートリアルだ。


「コレヨリ、アナタノあばたーヲ製作シマス」


 機械的な声が辺りに響く____。


「アナタノ性別ヲ教エテ下サイ」


「あ、えと…、おとっ男です!」

 ……何をキョドっているんだ……、俺は。


 自分でも半ば呆れ、半ば諦めつつも、精神を落ち着けようと奮闘する。

己のメンタルのなさでは相手がゲームの音声(女性)でも耐えられないらしい。

やれやれ……と言った具合で頭を左右に振り、再度声へと意識を向ける。


「アナタハりあ充デスカ?」


…………


「……………………え?」

 ふと声が漏れた。

びっくりしてちょっと状況の把握に手間取……え? リア充? 関係あんの?


 心の中でも再度確認……予想外の質問すぎる。


「アナタハりあ充デスカ?」


 機械が、俺が「聞き取れなかった」と判断したらしい。

機械なので当たり前だが、機械的に同じセリフを繰り返す。


「い……いいえ」


 ……しばしの沈黙。


 ポーン……という水面が揺らぐような効果音(サウンドエフェクト)とともに、俺の目の前に表示される文字列____


 可哀想な人ですね☆


「うぐっ……」


あろうことか音声ではなく文字列で返しやがった…………

妙に傷付く。とくに最後の☆マークが。


「アナタハ何歳デスカ?」

 尚も質問を続けるソフト。

こちらの都合なんぞお構い無しに、設定されているであろう任務をこなし続ける。


少しはこちらのことも気遣って欲しいものだ……機械に対して言うのは(こく)なのだろうけど。


 質問の内容……あぁ、ゲーム内での年齢設定か?

じゃあ……

「15で」


 フィン


 センサーのような物が出現し、赤い横一線の光が俺の体を縦に何往復かする。

……何か計っているのかな?


 フィン


効果音と共にセンサーが消える。

「現実ミロヨ」


!?


 俺が口をパクパクさせていると、再度音声が、

「アナタハ何歳デスカ?」

と聞いてくる。


ゲーム内の設定じゃない……つまり、

「……り……リアルの?」

……応答はない。


 Yesという意味だと捉え、しぶしぶながら質問に答える俺。

「に…28だけど……」


……

「可哀想ナ人デスネ☆」

ブチッとくるな、このゲーム。


 正直言って止めたくなってきた。


「ゴメンナサイ」


「思考よめんのかよ!」


 なんなんだこのクソゲー…………。


…………いや、待て。落ち着け、落ち着くんだ俺。

ゲームに対して怒っても仕方がないし……、そうだ、あれだ。


この手の、シュール系ギャグ要素を詰め込んだクエストゲームなんだ。


 なーんだそんな事か、ここで怒らせることこそ製作側の狙いなわけだ。俺本人はイライラするが、例えば俺のキャラ作成を覗いている友人が隣にいたとして、そいつは嫌みったらしく笑い転げる……だろう、たぶん。

あいや、こういうのはツボにはまらない場合は苦笑・失笑されて終わりだけど。

 まぁとりあえずここは、寛大な気持ちとポジティブ精神で質問内容を受け入れようじゃないか。……そんなことが出来てたら現実(リアル)で苦労してないとか、そう言うのはひとまず置いといて。


 ネタだというのなら流そう、スルーイズベスト。


 ……そうして、これがシュール系ギャグだと1人納得し(というより必死にそう言い聞かせ)チュートリアルを続ける俺。


正直言ってそうでもして無理矢理にでも納得しないと、ハードごとゲームソフトを叩き割りそうだった。


「身長ト体重、体脂肪率ヲ教エテ下サイ。アマリニ違ウト動カシ辛クナリマス」


 そうか……じゃあ仕方ないな、


「171……61…………8%」

………………また沈黙。

今度はなんだ?


「ホントデスカ?」


「うるっせーよ!本当だよ!」


「最後ニアナタノにっくねーむヲ教エテ下サイ」


ニックネーム? ……じゃあ……ううんと、

「Kainで!」


「ようこそ! 敗人クエストの世界へ!」


最後だけ妙に卓越した日本語を話ながら画面が切り替わり、俺の視界は黒く染まった____。

【次回の投稿は6月3日20時を予定しています。読んでくださった方々、ありがとうございました】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキングに参加しています! クリックして投票をよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ