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このゲーム、無理ゲーです。  作者: 音無 紗乃斗
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プロローグ

 これは、今より少しだけ未来のお話________。


その時代の日本はと言うと、2010年代の頃とさして代わり映えもせず、アメリカの押しには弱く。中国からは舐めきられ。そして相も変わらず、平和ボケした資本主義の人々が暮らし呆けていた。


資本主義_____要約するに金儲けしか能がない人間達が築き上げた社会の(もと)では、ありとあらゆる行事・習慣・イベントが、金儲けのための「手段」として利用される。

……それは今も昔も変わらない。


 ことに、恋人を持つもの____リア充という言葉を使わせてもらうが、そのリア充達に狙いを定めた商売手段などいくらでもある。


 例えばバレンタインデー。

元はと言えばあれは、大切な人に本をあげる習慣だったはずだ。

……残念ながら起源は忘れてしまったが、バレンタインという聖職者関係の人物が関わっていた気がする。


そこに男女関係は必須ではなく、単に常日頃の感謝の念を込めて本を贈る________同性だろうと異性だろうと関係なかったと思うが、とにもかくにも、決してチョコレートを渡す日ではない。そう、断じて違う。


 なのに何故チョコレートを渡すというのが一般的になっているかと言えば、あれはどこだかの菓子メーカーが勝手に言い出したからに過ぎない。

流石(さすが)に資本主義。バレンタインデーという海外の習慣に合わせてリア充にチョコレートを売り付けようという算段なのだ。

なにせ海外にはホワイトデーなるものが存在しない。

日本の企業が「バレンタインデーのお返しを!」と、これまた勝手にホワイトデーを設立しクッキーやキャンディを売り付けているに過ぎないのだ。


 無論、恋人を持たない我々が、そんな企業戦略にわざわざ乗ってやるのも馬鹿馬鹿しい。

乗る必要などないし、2月14日にチョコレートを貰ったことがなかったとしても、3月14日にお返しを貰えなかったとしても、何ら恥じることはないのだ。


 うん、本当に。


だって金儲けのために勝手に言い出したことなんだぞ! 毎年のように嘆いているのが馬鹿みたいじゃないか!


 ……と。

さらに言えば、日本と何の関係もないところから利益をあげようとするほどなのだから、資本主義の生み出す商売根性というのは伊達ではない。


 具体例を挙げるならジューンブライドがそれだ。


あれの起源は神話で、6月(June)の由来になった女神の加護だかなんだかで、ヨーロッパ諸国では古くから「6月に結婚をすると幸せになれる」と言われてきたのだった。

(ゆえ)に「6月の花嫁(ジューンブライド)」。


……しかし日本に置き換えて考えてみよう。

6月というのは梅雨の時期。

偏西風の関係でその時期カラッとした気候のヨーロッパならいざ知らず、日本では昔から湿気も多いその日頃に、式を挙げるなどタブー扱いもいいところ、禁止されるべきだ、うん。


 なぁのにそんな企業戦略にホイホイ乗っかって俺の友達はみーんな6月に結婚しやがっ…………


 コホン。


よ、要約するに、だ。結婚式場側が、6月に挙式する人を増やすためにジューンブライドなるものを日本に取り入れ始めたのだ。

俺に言わせればそんな季節に結婚するリア充が多いから、日本人の離婚率は年々上がるし、結婚鬱(マリッジブルー)などという物まで出てきてしまうのだ。


そう、(まさ)しく悪循環。


 経済向上を目指し、景気回復のために企業戦略に力を注いでいるというのに……晩年離婚を増やすは鬱病患者を増やすは何のための企業戦略なのか。


 本当、結婚は人生の墓場とはよく言ったものだ!


 ……さて、数々の悪どいリア充商法に例外はなく、そのほんの一例として12月の戦場、クリスマスも挙げられるのだが……。


 この話はそのクリスマスの時期から始まることになる。


寒いクリスマスの前日___うっざいリア充どもがイチャイチャしまくるその日、忌まわしきクリスマスイブ。


 我々にとっては因縁とも呼べるその日に、「非リア充達だけを対象にして」売り出されたゲームがあった____。

(単にマイナーすぎなゲームだっただけで、イブなんかに発売するからだが)


 当時、ゲームハードとして最も人気のあったVRゲーム用ハード。そのソフトである、「敗人(まけびと)クエスト」である。


 発売日の関係やタイトル等の影響が重なり、リア充達にはおろか非リア充達からも「自虐的すぎる」という理由から発売前、当日ともに人気はあまりでなかった。


……しかし、一年後である今日(こんにち)、リア充を含めこのゲームを知らぬものなどいない。


 ここまで頭でっかちな文句ばかり並べてきた俺だが、そんなこんなを言いながらも……すっかり引き籠りモードを維持しているのをいいことに今更ながらハード、ソフト共に買ったのだが…………。


パッケージにある内容では、とても面白そうには見えない。


 とりあえずプレイしてみるか……。


充電プラグを差す。サインランプが点灯。

ネットワークコードを差し込み、電源を入れる。


グウィィィィィン______

ディスクの読み込みが始まり、ハードを被る俺。

直後、俺はバーチャルゲームの世界へと飛び込んだのだった。


 無理ゲーの世界へと………………。

【次回の投稿は6月1日22時を予定しています。読んでくださった方々、ありがとうございました】

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