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あるシステムエンジニアの他愛もない吐露

作者: 群龍猛

あるシステムエンジニアが日常についての思いを吐露する。

彼は、機械のように黙々とそして、他のエンジニアと一緒で社会という歯車の中でこぼれ落ちまいと生きている。

 キーボードを叩く音がフロアーに時折、響く。


 このフロアーには、三十名以上の人間が三つの島に分かれて、各所定の割り振られた場所に座っている。


 ある者は、少し前のめりに屈みPCに繋がれたモニター画面を真剣な眼差しで覗き込んでいる。また、ある者は、プリントアウトした資料を机一杯に広げ、その印刷された資料の細部に至るまで、細かく記述ミスが無いか蛍光色ペンでチェックを入れる。


 このフロアにいる半数は、プロパーと呼ばれる自社の社員で、その半分が協力会社からの派遣社員でパートナーである。


 このIT業界の中小企業では、概ね自社のみで人員を用意できる物ではなく、中小企業でお互いの人員を融通し合うのが、商習慣として定着している。ただ、これがブラック企業が乱立する温床となっている事も事実であるわけで、受け入れる側も受け入れる側も労働者視点では、非常に危うい立場であることは間違ってはいない。


 にも拘らず、この仕事に携わっているのはなぜであろうかと?


 モニター画面と資料を交互に眺め、プロパー側である男は漠然と途切れ途切れであるが、そんな思考を回していた。


 仕事に対する考え方は、一様に同じのようであるが全てがピタリと合う物ではない。


 純粋に仕事の内容が好きでやっている者もいるだろう。


 システム開発に携わっている事だけで満足な物もいるだろう。


 ここで、人に認められ幹部に出世する事を目指す者もいるだろう。


 それを自己実現する上で、当然、人間の内面には様々な葛藤や嫌悪、妬み、嫉妬など必ず渦巻く。


 しかし、社会人ともなれば、学校での子供の様に露骨にそれを表面に出す事は、憚られる。それを露骨に出せば、それこそ浮いた存在として揚げ足を取られ、内心で意に沿わないと思っている人から手痛い仕返しを受けかねない。


 問題は、そう周囲に悟られないように忍耐力を持つ事であり、逆にまったく逆の心情を吐露する事で信用を獲得する方が利口であると社会人生活では教え込まれる。常に自分自身の内面に問題があると内省させるのである。


 その矛盾するものはストレスに変換され、それは個人差はあるが精神的耐性度によって体調不良の一因となる。


 多くのこのIT業界に関わる人間は、それに加え、長時間の残業や理不尽な人事評価に悩まされ、その波を潜り抜けない限り毎日の様に迫り来るストレスに立ち向かえない。


 青白い不健康な表情を見せるシステムエンジニアの背景には、そのような一見すると推測できるが入り組んだ事情が多く潜んでいる。その入り組んだ事情を常に交通整理しながら状況を考え、対策を講じるのがプロジェクトを束ねる者の役目になるが、日本のIT企業では間違いなくその面での問題解決は出遅れているのは間違いないのではなかと、男は考えていた。


 そう考えると、その各人の持つ仕事への思いや姿勢、感情などは、本音のところでは男は自社のプロパーの社員ですら殆ど知らない。


 そういう事は飲みニケーションで解決などと、古風な事を述べる人種が上司に多いのは事実だが、事はそうではない。人の心根は、その本人が全てを投げ打つ気もしくは、完全に安全地でなければ、決して吐露はしない。酩酊状態でも心の奥にしまい込まれた本音は、無意 識か意識的なものかで常に躊躇と言うブレーキが掛かる。


 人間は、自己の不利な事を容易に吐露しない物だ。


 昨今のネット上では、その匿名性ゆえに暴露する傾向も見受けられるが、情報の信憑性が極度に低い。


 結局、人が心の根に持つ本音はどこにも吐露される事もなく、内面に埋没する事が多く、結果、時期が来てその本音が心に蓄積された時、全てが一気に瓦解してしまう。


 瓦解したした人間は、去る選択しかない。





社会という荒波は、現実には何処か殺伐としている。

それをグッと堪えて、多くの社会人は今を生きていいる。


そんな内面を書けないものかと書いてみました。

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