05.女傑ティータイム(4章~5章)※会話文
暮れ3の刻を過ぎたあたりののコロナエ・ヴィテ食堂にて、姦しくお喋りをする影が4つ。コロナエ・ヴィテの女性陣だ。
彼女らの前には、色とりどりの砂糖菓子や焼き菓子、そしてティーセットが並べられている。
他愛ないことを喋り、お茶を飲みつつ、お菓子に手を伸ばす。女子だけの楽しいひと時だった。
そんな中、あるひとつの議題が挙げられる。
それは、“最近目に余るあの二人”について。
「……じゃ、それぞれ意見を述べてくださぁい」
「はい! まずエナね! エナは、もう付き合ってると思うんだけど」
「えぇ~? そうですかねぇ」
「絶対、そうだって! この前なんか二人で寄り添って一冊の雑誌読んでたし……男の子同士なのにあの密着具合はおかしいって! 前々から変だとは思ってたんだよ! 最近露骨すぎ!」
「でもエディフってスキンシップ過多じゃないですか。それだけなら普通に仲良いだけで済みませんかぁ?」
「いくらエディフでもおかしいって! しかもね、この前の休みにね、二人で買い物行くっていうからエナも行きたい! って言ったんだよ、そしたらねソルね、すっごい嫌な顔したんだよ!? むかついたからついてったけど、今思えば二人っきりを邪魔すんなってことじゃないの?」
「いや、それはただ単にエナ自体が嫌がられただけという可能性も」
「何それ!? 十何年の付き合いがあるのに今更!?」
「最近急に嫌になったとか」
「やだぁ~!!!」
「話が逸れてるわよ~、今はあの二人の話なんだから」
「う、あっ、そうだよね! とにかくエナは、もうあの二人付き合ってると思うの! これ結論! ……ジェーニアは!?」
「ええ、私ですかぁ? ……うーん、私は仲良いだけだと思いますけどねえ」
「ええー? なんでぇ?」
「ソル、意外と世間体気にするじゃないですか。もし付き合ってたら、皆といる時はさりげなく距離置くと思いますよ。逆に。でも彼らいつ見ても向かい合ってるか隣同士かなうえに、しょっちゅうくっついてますし」
「ああー、そっかあ……。それは確かにあるかも」
「ま、スキンシップ過多すぎるとは思いますけどね。男同士でベタベタしすぎ」
「うんうん。……でもさ、あの二人だと、ヤマトが綺麗過ぎてあんま違和感ないんだよねぇ」
「それはありますね。……エデルは、どう思います?」
「私は……そうねぇ、付き合ってはいないと思うけど……ソルはだいぶヤマトのこと好きなんじゃないかとは思うわ」
「あ、それは絶対だよねぇ!」
「ええ。……そもそもソル、男友達多くないじゃない? 仲良い人がいてもけっこうドライな感じだったし。だけど、それが今あんなことになってるんだもの……もし友情だけしかなくても、何かの弾みで一線越えそうとは思ってしまうわぁ」
「確かにぃ! 女性関係派手だったせいで男友達少ないもんね、ソル。知り合いとか舎弟は多いくせに」
「派手な女性関係持てるだけの男が、同性に走りますかねぇ」
「……うーん、そこはなんとも……あ、ニーファは?」
「……あたし?」
「さっきからずっと黙ってるじゃん!」
「……あたしはそういうのよくわかんないわよ。まあでも、ソルがヤマトのこと好きだとしてもヤマトは気付かないんじゃないの?」
「ええっ、なんで?」
「本人が言ってたもの。友達が少なかったからソルみたいな仲良い友達が出来て嬉しい、って。それと普段の様子から察すると、男同士の距離感がわかってないんじゃないの? 多分どんなことされても友情として受け取るわよ。押し倒されても気付かないんじゃないの?」
「……そ、そうかなあ。流石に押し倒されたら気付くと思うけど」
「今、体を弄られながらも何々なんの遊び~? とはしゃぐヤマトさんが思い浮かびました」
「……」
「流石に、それはないよぅ」
「でもあのぼんやり具合だとありそうで怖いですぅ」
「ヤマト下ネタ好きじゃん。性的な意味持ってればすぐわかるよそんなの」
「ああー、可愛い顔して意外とそうでしたね、そういや」
「だからさー……」
喧々囂々と、議論は白熱する。
そんな光景を眺めて、エデルはひっそりと呟く。
「精神だけで言ってしまえば、何の問題もないのだけどねぇ。ソルとヤマト」
「……まあね」
ニーファは白けた顔でそれに返答すると、一口お茶を啜ったのだった。