【想異だした】
掲載日:2026/03/13
【想異だした】
ゆらゆら幽霊のような
白銀な衣服に、夜のような髪がかかっている。
まるで宇宙だ。
名前も知らないあの人は、
今どこにいるのだろうか。
私を覚えているのだろうか。
あの日あの夏の昼下がりに、
運命の人のように出会ったあの人は、
とても綺麗な瞳で。
私のことを
恨む宿敵のように睨んでいた。
その瞳に惚れた私は、
小さなスコップを取り出し。
お気に入りだからといって惜しみもせずに、
その人に渡した。
その人は難なくその
差し渡す私の手を薙ぎ払い。
唸りながらにこう言った。
お前のせいだ。
そうすると、
その人はすーっと、
元に戻るかのように。
空へ消えた。
草へ消えた。
無へ帰った。
私は子供ながらに情熱的な恋をした。
ああ欲しい、
その目が欲しい、
そして子供の私は思い出した。
ああなんだ、
もう持っているじゃないか、
この手で手に入れたではないか、
この手であの人を帰したではないか、
でめたしとはこう言うものを言う。
ああ、
とても両者共に幸せだなあ。




