第八章 それぞれの思惑
──那岐山龍守の近衛将軍叙任が、本日の午後に前倒しされた。
その知らせを侍女たちから聞き、織瀬はほっと胸を撫で下ろした。
(良かった。何とか上手くいった……)
葛城乙彦の不快な来訪の後、菊理の素早い行動により、皇宮に向かう途中だった祠部司と接触を持つことが出来た。そこで織瀬は祠部司に告げた。
『昨夜宴の後に夜空を見上げたところ、複数の流星が紫微垣を犯しました。これは陛下の御身に災いが起こる予兆かもしれません。どうかこのことを陛下にお伝えいただけませんでしょうか』
老年の祠部司は、皇女である織瀬の突然の来訪に戸惑っているようだったが、その真摯な言葉に絆されたのか、やがてゆっくりと頷いた。
『かしこまりました、翠蓮皇女殿下。必ずや陛下にお伝えいたしましょう』
『ありがとうございます。……ですが貴方もご存知のとおり、私は皇太后陛下から疎まれております。私の言葉だと知れば、きっと聞き入れてはくれないでしょう。ですから貴方の卜占の結果、そのような卦が出たということにしてくれませんか』
『それは構いませんが……ですがそれでは、陛下をご案じなされる皇女殿下のお気持ちが……』
『私のことなど気にせずとも良いのです。それよりも、何とか陛下の御身を守る術を皇太后陛下や葛城公爵に進言してください。殊に今は近衛将軍も空席となっておりますし、何かあったらと気がかりなのです』
『確かに……前の将軍が退かれて、新たに那岐山侯爵が就任すると聞き及んでおりますが、正式な叙任はまだ先のようですし……。かしこまりました。きっと進言いたしましょう』
『ありがとうございます』
少しわざとらしかったかしら、とは思ったが、人の良い祠部司は織瀬の言葉を露ほども疑ってはいないようだった。わずかな罪悪感にちくりと胸を刺されるが、どうか上手くいきますようにと織瀬は祈る思いで翠蓮宮で知らせを待っていたのだった。
「それにしても、卜占か……確かに良い目の付け所ですね」
腕を組んで感心したように頷く菊理に、
「姫様に向かって、なぜお前は上から目線なんだ」
すかさず明瑠が、菊理の後頭部を軽く叩く。
「ちょっと明瑠、何すんのよ!」
そう喚く菊理に、織瀬は苦笑する。
「由緒ある貴族にありがちだけれど、葛城公爵も意外と迷信深いところがあるの。だからこそ私が毒姫だという話も信じたわけだし……上手くいって良かったわ」
「でも、そのおかげで忙しくなっちゃいましたよ。昼過ぎには太極殿に行かなくちゃなんて……。叙任式用の着物は用意してあるけど……」
「あら、着物があるならそれでいいでしょう? とりあえず式典で恥ずかしくない格好をしてさえいれば」
「そうなんですけどぉ……せっかくだからもっとおしゃれさせたかった……」
「菊理、気持ちは分かるがここは堪えろ。……姫様、葛城公爵のおかげで朝餉を摂り損ねてしまいましたから、少し早いですが昼餉をご準備いたします。その後式典の準備をいたしましょう」
「ええ。よろしくね、菊理、明瑠」
織瀬は侍女たちに向かってふわりと微笑んだ。
*
「那岐山、龍守よ……そなたを近衛将軍に、任ずる……橘花国のために、は……励むように……」
用意された口上をたどたどしく読み上げる皇帝・佐穂彦に対して、龍守は恭しくこうべを垂れた。
そして近衛将軍の証である儀仗を受け取り、高らかに宣言する。
「近衛将軍という職をいただけましたこと、身に余る光栄でございます。この那岐山龍守、皇帝陛下の御為に、身命を賭して職務を全うする所存でございます」
昼下がりの陽光に映える金の髪に、皇太后や紅蘭皇女の唇から陶然とした吐息が漏れる。南陽皇子は皇族らしい毅然とした態度で新しい近衛将軍の姿を見つめつつも、兄である皇帝の背後に立つ葛城乙彦に苦々しい一瞥を投げる。
この場に集っているのは、皇族と摂政である葛城乙彦、その護衛の豺牙、そして安比初臣を初めとするそれぞれ皇宮の東西南北を守護する四将軍のみだ。常に龍守の傍にある三人の家臣たちは、この太極殿に足を踏み入れる前に門前で衛兵に足止めされてしまった。
最もその事自体は、龍守にとってさして意外なことでもなかった。ここに辿り着く前、外廷を通り抜けた際に、大楽署に忍ばせていた鷹比古の配下である日向に『摂政公爵は龍守様に対し謀を巡らせております。ご用心を』と耳打ちされていたからだ。
(しかしその謀とは何なのか……それが分からぬのでは、対策のしようもないな。まあ、出たとこ勝負で行くしかないか)
皇帝の後背から龍守を見下ろす乙彦を眺めていたところで、答えが出ようはずもない。どうせ見るなら美しいもののほうが良いな、などという全く緊張感のない心持ちで、龍守は皇族たちの席をちらりと見やる。
(……ほう)
思わずこぼれそうになる感嘆の吐息を飲み込んだ。
僅かに伏せられた長い睫毛の下で煌めく翡翠色の瞳。それと同じ色の玉が嵌め込まれた簪で結い上げられた、艶やかな黒髪。優美な曲線を描く輪郭と、象牙のように滑らかな肌。ふっくらと柔らかそうな唇は、まるで椿の花にくちづけでもしたかのような紅で彩られている。
清楚な桜色の着物に身を包んだ翠蓮皇女からは、天女のような気高さと同時に、そこはかとなく匂い立つ色香のようなものが感じられた。
(美しい……が、美しすぎるな。まだ十七でこれでは、さぞ苦労することだろう)
老婆心ながら、龍守はそのようなことを思う。
居並ぶ皇太后や紅蘭皇女も、翠蓮皇女と同じ時を生きてさえいなければ、十分にその時代を象徴する美女として史書にその名を刻まれていたに違いない。しかしこの世の全ての美を一身に集めたかのような翠蓮皇女の前には、いかな傾城とて恥じ入り平伏せざるを得ないだろう。
(俺が翠蓮皇女ならば、葛城乙彦だけでなく周りの男どもを全て誑し込んで、文字通り傾国の美女になってやるところだがな。だがあの素直さと真面目さでは……無理だろうな)
今朝がたの密会時の翠蓮皇女の様子を思い返しながら、龍守は心中で微笑する。
思えば翠蓮皇女の姿を最初に眼にしたのは、七年前──龍守が武官として登用され、初めて宮中に足を踏み入れた時だ。任命式の際、幼い翠蓮皇女は今と同じように皇族の末席に座していたが、その頃からすでに子どもとは思えないほど完成された美貌を有していた。まるでそこだけ天の星屑を撒いたごとく、翠蓮皇女の周囲だけが眩く輝いているようだった。
(そうだ、その時も俺は思ったのだ。翠蓮皇女の美しさはきっと、禍福を合わせて引き寄せてしまうであろうと。まだ幼い身で難儀なことだろうと。……今の今まで、すっかり忘れていたな)
それはきっと、幼い皇女に美貌以外に印象に残るものが無かったからであろうが。
しかしあの頃にはすでに皇女は母を毒殺され、水葉上皇の庇護があったとはいえ寄る辺なき身となっていたのだ。父である高徳帝も葛城乙彦の毒牙に侵され始めていたであろうし、その状況で翠蓮皇女が宮中で生き残れたことは奇跡に近いであろう。
葛城乙彦や皇太后の牽制を含んだ労いの言葉を聞き流しながら、龍守は思いを巡らせる。
やがて式の終わりが告げられ皇族たちが退出するその時まで、ついに翠蓮皇女は龍守と目線を合わせることをしなかった。
*
「龍守、お前が近衛将軍とは! いやあお偉方は見る目がないな!」
自らが統括することになる軍との顔合わせに向かうため殿中を出た龍守の肩に、快活な笑い声とともに腕が回される。そのまま体重をかけてきた男に、龍守はすかさず肘打ちを加えた。
「男に引っ付かれても気色悪いだけだ。離れろ初臣」
「痛たた……相変わらずお前は、口と同時に手が出るな……」
脇腹を押さえながら、男は苦笑する。
「変わりなさそうで何よりだ、龍守。……とは言え、今は侯爵で私の上官か。ここは敬語を遣わねば示しがつかんな」
「お前から敬語で話しかけられるなどぞっとしないな。……まあ、そのあたりの機微は任せる」
一見気の置けない友人同士の会話だが、龍守の心中は穏やかではなかった。この会話が表面的なものでなければ、どれほど良かったか。翠蓮皇女の言葉を信じれば、今この時にも初臣の頭の中では、血生臭い反乱の計画が練られているはずなのだ。
(初臣の統括する西苑軍は数には入れられんな。残りの東、北、南苑軍が使えれば良いが……)
「まずは私の西苑軍を見に行くか? なかなかの精鋭揃いだぞ」
「ああ。それは楽しみだな」
龍守が帝都に着いたその日のうちに、反乱に加われと言ったことなど忘れたかのようだった。あの時はいくら道理を説いても聞き入れる素振りすら見せなかったが、今ならばまだ間に合うだろうか。
「初臣、お前──」
「新しい近衛将軍に気に入られようと、兵たちも鍛錬に勤しんでいる。橘花国のためなら命すら惜しまない、まさに武人の鑑のような者たちばかりでな──」
不自然なほど饒舌な初臣は、龍守の視線を避けるように早足で練兵場へと向かって行った。
*
広すぎる寝台に倒れ込むと、龍守はため息とともに天井を仰いだ。鈍く痛むこめかみを押さえながら、舌打ちする。
(このような時は、隼人あたりを話し相手にして思考を整理したいのだがな……)
しかしその望みは叶いそうになかった。叙任式前に太極殿の門前で別れたきり、龍守は隼人たち配下と未だ顔を合わせていない。
四苑軍との顔合わせも終わり一旦屋敷に帰ろうとした龍守は、おそらく乙彦の追従者であろう宦官たちに、有無を言わさず皇宮の一角にある部屋に連行されてしまった。
まだ陽も落ちておらず、屋敷に帰る時間も十分にある。明後日起こるであろう反乱に備えて、鷹比古とも話を詰めておきたかったのだが、そちらも叶わぬようだった。
(下手に抵抗しても面倒なことになりかねんし……ここは大人しくしておくか。隼人とも約束したことだしな)
寝台の寝心地が良いことだけが、唯一の救いである。出来ることなら皇宮の造りを直接自分の眼で確認しておきたかったが、あまり皇宮内を動き回られては困ると侍従たちに止められてしまった。
(全く、何が困るだ。近衛将軍が皇宮の造りを知らなくて、どうやって皇族を守れというのだ)
忿懣をぶつける相手もいないので、龍守はひとり嘆息する。
どうやら葛城乙彦にとって、近衛将軍とは名誉職のような扱いらしい。本当の中枢に当たる部分──例えば皇帝の座所などは、葛城家の私兵に守らせているのだろう。
(鷹比古の配下の働きでほとんどの造りは把握しているが、やはり自分の眼で見ると違うからな。それこそ皇族だけが使えるような、秘密の抜け道といったものも見つかるかもしれん)
いつまで皇宮に留め置かれるのか、そもそもなぜこのような状況になっているのかすら定かではないが、見たところこの部屋の前に見張りなどもいないようだ。
(ここはいっそ良い機会だと思って、皇宮内を探索してみるか。葛城乙彦の配下に見つかった時は──まあ、なんとか誤魔化しようもあるだろう)
そうと決まればと身を起こしたその時、
「那岐山侯爵閣下、夕餉をお持ちいたしました」
扉の向こうから、妙に婀娜っぽい女の声が聞こえて来た。完全に出鼻を挫かれた形になった龍守だが、仕方ないと息を吐いてその声に入室の許可を与える。
「失礼いたします」
それぞれに膳を捧げた女官が三人、しずしずと室内に足を踏み入れる。その中で一番最初に龍守の前に立った、女官らしからぬ一際華やかな着物を纏った女に、龍守は眉を顰める。
伏せ目がちなため顔ははっきりとは見えぬが、やや小柄な背丈と豊満な肢体、そして昨日の大喪の礼や、つい先程終わった叙任式でも聞いた、媚を含んだ独特の声音は──。
「……失礼ですが、皇太后陛下でいらっしゃいますか」
龍守は苦虫を噛み潰したような顔をしたいのを必死で堪え、普段通りの艶やかな微笑みを貼り付けて、目の前の女にそう問うた。
女は一瞬ぴくりと動きを止めたが、
「……もう気づかれてしまうなんて。さすが那岐山侯爵、よく女を見ているのね」
皇太后螺鈿は、顔を上げ傲然と微笑んだ。龍守はすかさず衣の裾を払い、皇太后の前に跪く。
「皇太后陛下にご挨拶申し上げます。……憚りながら、なぜこちらにいらっしゃるのかお伺いしてもよろしいでしょうか」
「あら、ここは皇宮……皇族の住まいよ。自分の家の中なのだから、どこへ行ってもわたくしの勝手でしょう?」
歳の頃は確か三十の半ばと記憶しているが、螺鈿は口元に手を当てて、まるで少女のような笑い声を上げる。その声は、龍守の心に不快感を湧き上がらせた。
その理由のひとつは、眼の前のこの女が大喪の礼で翠蓮皇女の頬を打ったことを思い出したからだが、もうひとつは──。
(葛城乙彦め、これが謀か。てっきり俺を取り込もうとしているか、さもなくば潰そうとしているかのどちらかだと思っていたが……。もっと尾籠なことに俺を使うつもりだな)
「さあ那岐山侯爵、顔を上げなさい。……ああ、間近で見ると本当に美しいわね。その金の髪に紅い瞳、西方の血が入っているのかしら。男たちが貴方に嫉妬し、女たちが夢中になるのも分かるわ。こんなにも美しいなんて……ねぇ?」
鮮やかな爪紅を差した指が、龍守へと伸ばされる。そのまま指先で龍守の輪郭をなぞりながら、螺鈿は連れて来た二人の女官に意味ありげな視線を向ける。女官たちは頬を薄く染めぽかんと龍守の顔を見つめていたのだが、皇太后の声に慌てて平伏した。
まるで身体中を蚯蚓に這われているような感覚に襲われながらも、龍守は平静を装う。
「お褒めに預かり光栄です。皇太后陛下もご存知のこととは思いますが、我が父は那岐山家の養子でございます。しかもどこの出自とも知れぬ者です。ゆえに私自身もこの髪色や瞳が何に由来するのか、とんと見当もつかぬことで……」
「ふふっ……そんな事はどうでも良いのよ。大事なのは、貴方がとても美しいということ」
獲物を前に舌舐めずりをする獣のようだ、と龍守は思った。このような眼で見られることには慣れているし、それを上手く利用したことも一度や二度ではない。後腐れのない相手ならば、誘いに乗るのもやぶさかではないが──。
(よりによって皇太后だと? 葛城乙彦め。ここのところ妹を持て余しているという噂は聞いていたが……厄介事を俺に押し付けようという腹だな)
ある意味、政治的な謀のほうがましであったかもしれない。孤閨に鬱屈を募らせる女を送り込んで、龍守に何を求めているのか──考えただけでうんざりしてくる。
とはいえ、ここは自身と家を守るために上手く立ち回らなければならない。
龍守はそれとなく、皇太后の背後に侍る女官たちを伺う。落ち着かなげな様子で二人分の夕餉の膳を調える女官たちの顔立ち、背格好、ほくろの位置などの特徴的な部分を記憶する。
この者たちにはいざと言う時、龍守の潔白を証言して貰わねばならない。いくら用心していたとしても、例えば皇太后が龍守に凌辱されたなどと言い出せば、それだけで身の破滅だからである。
(後ほど幾許かの金を握らせて、皇太后の報復を受けぬよう計らい、家族がいるならそれも庇護し……面倒だが仕方ないな)
頭痛が酷くなるのを堪える龍守のことなど構わず、皇太后が眼の前に腰を下ろす。
「さあ、那岐山侯爵。ひとりで食べるのも味気ないでしょうから、ご一緒するわ。一献如何かしら?」
差し出された瓶子を、まさか断るわけにもいかない。しかしこの皇太后には、翠蓮皇女の母以外にも、多くの妃や宮女を毒殺したという噂が付き纏っている。
(この酒……毒はなくとも、何か盛られているのは確実か。しかし毒姫という呼称は、翠蓮皇女よりもこの女にこそ相応しいであろうな)
苦々しく思いながらも、龍守は盃に口をつける。かなり強い酒だった。これでは何が盛られていても、気づくことはできないだろう。
「あら、侯爵。皇宮の酒は口に合わないかしら」
二口目をつけぬ龍守に媚を含んだ眼差しを向けながら、皇太后は可笑しそうに笑う。
「いいえ、とんでもございません。ただ、昨夜の宴でもかなり呑んだもので、あの後家臣の小言を食らいましてね。その事を思うと、どうしても手が止まってしまいまして」
「ふふっ……今はわたくしたちしか居らぬのだから、気にすることなどないでしょう? それとも酌をするのがわたくしだから気に入らない? もっと若い女のほうが良いのかしら?」
「いいえ、決してそのような事はございません。美しい皇太后陛下と酒の席を共にできるなど、望外の喜びでございます」
「嬉しいわ。それならば、この後酒以外のものもご一緒しましょうか」
皇太后のころころという笑い声に、寒気を覚える。こうなればいっそ素知らぬ顔で、朝まで歌合せでもしましょうか──とでも提案してみるか、と思ったその時。
突如響いた轟音が、膳の上の食器をがたがたと揺らした。程なくして、遠くから地鳴りのような音が聞こえてくる。
「な……何事……?」
皇太后が呟くのとほぼ同時に、部屋の周囲が騒がしくなる。
「し……失礼いたします、皇太后陛下!」
ひとりの宦官が、血相を変えて部屋に飛び込んで来た。
「謀反でございます! 安比家の旗印を掲げた兵が、皇宮を取り囲んでおり……葛城公爵閣下の首を寄越せと……」
それだけ叫んで、宦官はその場で失神した。
皇太后の唇から、金切り声が上がる。
「お兄様……! そんな、どうしたら……お兄様……!」
右往左往する者たちの様子を横目で見ながら、龍守は腰に剣を差す。
(翠蓮皇女の話では、反乱は明後日の未明であったはずだが……)
予定よりも一日以上早い。しかもこちらはまだ対策も練りきってはいない──だが。
(でかしたぞ、初臣!)
心の中でそう快哉を叫びつつも、龍守は神妙な顔つきで皇太后の前に膝を付く。
「近衛将軍としての初仕事です。皇宮はこの那岐山龍守がお守りいたします」
そう恭しく述べた後、龍守は脱兎の如く廊を駆け去って行った。




