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白い嘘  作者: らるみん
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2話.残された世界

白い嘘 :残された世界

君が逝ってから、季節は何度巡っただろう。病室の窓から差し込む夏の光が、今も俺の目を焼く。あの眩しさの中に、君が消えてしまったような気がして、未だに夏が来るたびに胸が締め付けられる。

君のいない世界は、あまりにも静かだった。君の笑い声も、優しい眼差しも、もうそこにはない。俺の生活から、鮮やかな色が失われたようだった。あの頃の俺は、ただ呼吸をしているだけだった。朝、目が覚めても、何のために生きているのか分からなかった。夜、眠ろうとしても、君の姿が瞼の裏に焼き付いて離れなかった。

時折、無性に嘘をつきたくなる衝動に駆られる。君に「治るよ」と囁き続けたあの頃の自分が、まだ俺の中にいるかのようだった。誰かに会えば、「元気にしてるよ」と笑顔で答える。本当は、心の中は嵐の後の廃墟だ。君がいない現実を、未だに受け入れられない自分がいる。

ある日、君の病室があった病院の前を通りかかった。自然と足が止まる。あの白いシーツ、点滴のチューブ、そして、君の穏やかな寝顔。全てが鮮明に蘇る。ふと、病院の受付に、以前君を担当してくれていた看護師さんの姿を見つけた。彼女も俺に気づき、少し寂しそうな笑みを浮かべた。

「お元気にしてましたか?」

彼女の優しい声に、俺は思わず言葉を詰まらせた。そして、気がつけば、俺は彼女に、あの白い嘘のことを打ち明けていた。君に希望を与え続けたかったこと。それが、どれほど自分を苦しめているか。感情が溢れ出し、止めどなく涙が溢れた。

彼女は静かに俺の話を聞いてくれた。そして、話し終えた俺に、そっと手を差し伸べた。

「あの子は、きっと分かっていましたよ」

その言葉に、俺は顔を上げた。

「最期まで、あなたの優しい嘘に、幸せを感じていたはずです。あの子の笑顔は、決して嘘じゃなかった。あなたは、あの子の光でした」

彼女の言葉は、凍り付いた俺の心に、そっと温かい光を灯してくれた。君が、俺の嘘を知っていたかもしれない。それでも、その嘘を受け入れて、笑顔でいてくれたのかもしれない。そう思うと、張り詰めていた心が、少しだけ解けた気がした。

今も、君のいない日々は続く。だが、もうあの頃のように、ただ息をしているだけの自分ではない。君が残してくれたたくさんの愛と、あの白い嘘の先にあった真実の優しさを胸に、俺は少しずつ前を向こうとしている。

空を見上げると、あの日の夏空と同じくらい、青く澄み渡っていた。


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