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6.スキルの価値

『ほぉ』

「声色だけで上機嫌丸わかり」


 気持ちはわかる。

 なんだかんだ言っても、イディオンの中に飛び込んだみたいなもんなんだから。

 私もちょっとテンション上がってたりする。


『どれもよいな。剣も槍も弓も見事な仕上がりじゃ』

「全部初心者用のやつだけどね。品揃えも少ないし」


 ステータス補正は無いけど、素材によって値段は変わる。

 いい武器はいい値段だ。


『あの壁に掛けられた大剣はなんじゃ? あれだけやたら高価なようじゃが』

「あれって、もしかして牙狩り?」

『知っとるのか?』


 知ってるも何も、イディオンでもファスティスで手に入る武器の中ではトップクラスにレアリティが高かったし。

 懐かしいな。

 牙狩りは狼系の魔物に対してダメージ増加のスキルが付与された大剣で、序盤でこの剣を持ってるとそれだけで無双出来て楽だったんだよね。

 どれどれ……やっぱり【獣屠殺】のスキルが付与されてる。


「スキルショップは無いけど、スキル付与の武器はあるってこと?」


 人と同じで、武器もスキルを授かる……的な?

 ドロップはしないだろうし、武器を作ったらスキルが付与されてることがあるのかな。


「武器にスキルが付与されるのは当然のことだろう?」


 って、店主のおじさんは言う。

 設定謎すぎよくわからん。


『無骨じゃがいい面構えじゃな』

「武器好きなの?」

『精巧に作られた武器はそれだけで一つの芸術品じゃからのう。わしの刀剣のコレクションはそれは見事なものであったぞ。おぬしなど見たら目玉が飛び出るわ』


 あっそ。


『あの大剣含めどれもいいが、やはり武器は刀がいい』


 刀ね。

 刀、刀……あったあった。

 

「鉄刀・黒鉄(くろがね)。ガッチガチの初期装備だね」

『ほぉ、よいではないか。買え』


 買うけど、え?何様?


『殿』


 元だろ。

 刀買ったらもらったお小遣いほとんど無くなっちゃった。


『防具も買うのじゃぞ。鎧がいい』

「買えるか」


 ちょっとお昼食べたら手持ちゼロだぞ。


『武士は食わねど』

「気位でお腹が膨れるかっての」

『用心に越したことは無い。戦場では一瞬の油断が命取りになる』

「それはそうだけども。他にも要るものがあるんだって。食べ物にポーションにそれから……」

『そんなに買っても荷物が嵩張るだけじゃろうに』

「荷物……あれ?! そういえばスキルショップが無いってことは、【アイテムボックス】のスキルも無い?!」

『【アイテムボックス】? ふむ、異空間に荷物を収納出来るのか。便利じゃな』


 スキルショップで【アイテムボックス】を買うのはイディオンの基本なのに。


「大荷物持って歩き回るのは現実的じゃない……ええ、どうしよ……。なんかえいってやったら使えるとかないかな……」

『そんな都合のよいことが』

「えいっ」


 ブンッ


「刀が消えた!!」

『刀が消えたのう?!』

「なんだ今の……。もう一回、出てこいっ。うわぁ出てきた!」


 とりあえず自分の意思で出し入れ出来るっぽい。


『これが【アイテムボックス】とやらか』

「たぶん……? なんか違う気も……」

『こんなものが戦国の世にあれば、兵站に苦労などせなんだろうに』

「日本どころか世界も取れたかもね」


 意図せず【アイテムボックス】を手に入れた。

 ただし入れるほどの荷物は無いものとする。

 

 



 装備を整えるなら先立つものが必要。

 ということで、迷いの森にやってきた。


「ここで魔物を狩る」

『それでどうする?』

「魔物の素材は売れるんだよ。【アイテムボックス】があれば容量いっぱい持って帰れる」

『そういうことか』

「スキルの使い方も覚えないと。あと刀も。イディオンでは片手剣使いだったから」

『指南なら任せい。わしの剣の腕、とくと叩き込んでやろう』

「そういうのはいい」

『なぬ?!』


 だからイディオンではそれなりに有名だったんだって。


『狼如きに狼狽えておった分際で』

「あの時はいきなりでテンパってただけだし! いいから見てて!」


 お、いいところに。

 リトルウルフの色違い、グレイウルフが茂みから飛び出してきた。


『油断して死ぬなよ』

「わかってる」


 素直に正面から飛びかかってきたグレイウルフに抜刀のタイミングを合わせる。

 さすがに一撃で仕留められるとは思ってなかったけど、刃はするりと身体を通り抜けた。

 

『ほう』


 やるではないか、とでも言いたげだ。

 自分でも感心するくらい身体がスムーズに動いた。

 刀なんて使ったことないのに。


「これってやっぱりスキルのおかげだよね。パッシブスキルなのかな。今のとこスキルの効果っぽいのは……剣術と、武器の切れ味が上がってるやつ。あとたぶん体力っていうか、身体能力が上がってるのもある。気配察知も出来てたかな」

『【鑑定】もそうじゃろ。女子(おなご)を惹かせるのと、【アイテムボックス】も使えるな。どうじゃどうじゃ小娘。わしという存在の偉大さがわかったか』

「でもこれだけだと、やっぱりユニークの性能じゃないんだよなぁ」


 いいとこエクストラスキルか、普通のスキルの寄せ集め。

 十把一絡げって言葉がよく似合う。


『人を雑多するでないたわけが』

「言葉の綾だって。だいたい、本人が自分の権能を把握してないのってどうなの?」

『おぬしも自分の出来ること全てを言語化するのは難しいであろう』

「そういうもん?」


 他に出来ることがあれば、そのうちわかるか。

 実戦で使い物になるだけ良し。


「さて、じゃあこのまま狩りを続けよっか」

『わしも剣を振りたいのう』

「ドンマイ」


 元から身体は無かったわけだけど、何も出来ないのはなんか可哀想だな。

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