45.大狼の爪
「行くぜ、リゼちゃん」
「合わせます!」
その場で軽く跳躍を数度。
ほら、無防備だろ。
「撃ってこい」
首狩り幽鬼は、私目掛けて骨のワイヤーを放った。
下手に狙われるよりタイミングを誘導してやった方がずっと避けやすい。
着地と同時に駆け出し距離を詰める。
そのまま斬りかかると【超反応】でカウンターをくらう。
だから頼んだよ。
「光の矢!!」
リゼちゃんの周囲に光球が浮かぶ。
そこから放たれる三十の光の矢が首狩り幽鬼を襲う。
内二十は骨のワイヤーで、残りはダークリアクションで斬り落としたけど、その間に私は背後に回り込むことが出来た。
光の残滓が散る中、首すじに向かって刃を振り上げる。
【超反応】には発動から再使用まで数秒ラグがある。
リゼちゃんが作ってくれたこの一瞬があれば……
『油断するな蝶羽!!』
「?!」
骨、まだ増えるの……?
『蛸足のようにうねうねと。纏魔を使っても押し切れぬとは』
「単純に力不足ってことね。ちゃんと筋トレしよ……っ?!」
「きゃあ!!」
距離が近い私じゃなくて、リゼちゃんに攻撃……!
『小癪なことを考えおる』
「ほんそれ!!」
高速で回転する骨と刀が火花を散らして、ギャリギャリと嫌な音を立てる。
「っぶね、間一髪……!」
「あ、ありがとうございます……」
「いいってことよ。くそ、あの骨野郎……!」
『今のと同じ攻撃は通じぬじゃろうな』
ってことは何?
リゼちゃんの安全を確保しつつ、骨の攻撃を全部躱して、ダークリアクションの【超反応】もどうにかして斬り倒せってこと?
鬼畜ゲーが過ぎるだろ。
「私が重荷なのは承知しています。ですので、いざとなったら私を見捨てて魔物を討ってください」
『その意気やよし』
「その意気やよしじゃねーよ。何のために護衛してると思ってんだ。かすり傷一つその白い肌につけさせないから」
ていうかそもそもこのタイミングでの強襲、どう考えても狙いはリゼちゃんだろ。
誰が仕向けたかは今はさておき、戦いを長引かせて消耗するのは避けたい。
やっぱり……
「あれを使うか」
『逸るな。あれはまだ制御が出来る代物ではない』
「一発デカいのぶち込めばあいつも倒れるでしょ」
そのためにはリゼちゃんの協力が必須なわけだけど。
「リゼちゃん、お願いがあるんだけど」
「な、何ですか……?」
「ギュッてしてくんない?」
「は、はぁ?!!」
『気でも狂ったかうつけ者!!』
「こ、こんなときに、何をバカなことを!!」
ステレオでツッコむな……
そういうんじゃないから、って私はリゼちゃんの腰に手を回した。
「ひゃっ?!」
「お、可愛い声。よっと、片手でお姫様抱っこきちぃ〜。ちょっとだけ我慢してね。そしたら特等席で見せてあげる。あいつを真っ二つにするとこ」
「は、はい……ですが……」
『これで死のうものなら腹を抱えて嗤ってやるからな』
「だーいじょうぶ」
なんてったって。
「私には最強の魔王がついてるから」
――――――――
わしがついてるから……か。
ならば応えてやらねば嘘というもの。
亡霊よ、疾く消えるがいい。
貴様が眼前に見据えるは、わしが認めし最強の小娘よ。
やれ、蝶羽!
「おう!」
蝶羽は笑い、姫を抱えて駆け出した。
――――――――
極細の骨のワイヤーが雨のように降り注ぐ。
「リゼちゃん!」
「斜陽の幕!!」
半球状の薄い光の幕が盾となって攻撃を防ぐ。
その内の何本かは盾をぶち破ったけど、その頃には私たちの影を貫くだけに終わった。
続いて第二陣、大型の恐竜の脊髄を思わせる骨が空間を大きく薙ぎ払う。
その破壊力は地面を大きく抉った。
「遅ぇよ!!」
こんな大振り当たるわけないと、骨の上を駆けて跳ぶ。
「お願い!!」
「は、はい!!」
着地。
刀の間合い。
振り抜けば斬れる。
けど、青白い炎を揺らめかせるその双眸は、たしかに私たちを捉えていた。
その程度の速さでどうにか出来るとでも?と言わんばかり、ダークリアクションが私たちの身体を斬り裂いた。
ように見えた。
「斬ったと思った?」
斬られた私たちが揺らめいて消え、その背後で姿を現した。
【光魔法】は、光を収束させて攻撃するだけの単純な魔法じゃない。
光を屈折させて周囲に風景を溶け込ませたり、幻影を作ることだって出来る。
蜃気楼。
【超反応】に頼りきったお前にはさぞ効果的だっただろ。
「っ、骨が!!」
そう、ダークリアクションを掻い潜っても、まだ骨のワイヤーが伸びる。
この至近距離、リゼちゃんの魔法じゃ間に合わないし、私の剣じゃ力不足。
なら、今以上の強烈な一撃で消し飛ばしてやればいい。
外せば終わりのこの魔法、何が何でもぶち込んでやるよ。
「【狼魔法】……」
狼の紋様が走った刀身が、鮮烈な銀の輝きを放った。
「大狼の爪!!」
振り抜いた刀が夜闇に三本の爪痕を刻む。
骨野郎は腕の先と下半身を除いて完全に消滅した。
残った身体も風化して風に散っていく。
「どうだ……見たか……」
ドヤ顔をキメたいところだけど、私は虚脱感でそのまま後ろに倒れた。
「蝶羽さん!!」
リゼちゃんナイスキャッチ〜。
助かる〜。
「しっかりしてください!」
「いやぁ……この魔法使うと、指一本動かせなくて……ヘヘヘ。たぶん明日には起きるから……そしたら目覚めのキスで起こして、ね……ガクッ」
「蝶羽さん?! 蝶羽さん!!」
『まったく……此奴は……』
世話かけてゴメンて。
でも、勝ったからいいじゃんね?
読んでくれてありがとうございます。
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