44.屈しろ
信長の声で咄嗟に身体をずらしたけど、何だ……?
糸……ワイヤー……違う、それより細い……何か。
「つっ……!!」
『蝶羽、平気か』
「ちょっと大袈裟に血ぃ流れてるだけ。腕は動くよ。めっちゃ痛いけど」
てか、今障壁ぶち抜いた……?
私が未熟なのはそうだとしても、シリウスの加護だぞ?
防御無効……?
今の攻撃自体イディオンでは見たことないし。
いろんなことに考えをぐちゃぐちゃにしてると、茂みから初見の化け物も初見が顔を出した。
フードを被った山羊角の黒い髑髏。
首狩り幽鬼……ね。
死神みたいな風貌しやがって、追憶の武将みたいな、私が知らない上位種の魔物ってとこか。
「レイスの次は上位種……? ただの魔物ならまだしも、リゼちゃんの護衛中に、こんなピンポイントで襲われる偶然ある?」
『可能だというのであれば、仕組まれたものであろうな』
「だよね……。リゼちゃん、下がってて」
「私も――――――――」
言いかける前に糸が背後からリゼちゃんに迫った。
「【加速】!!」
間に割り込んで糸を弾いたけど、こんなに細いのに鉄パイプで殴られてるみたいにエグい重さ。
『ただの糸ではない。これは、骨か……?』
ワイヤーみたいにしならせてきたかと思えば、チェーンソーみたいに高速で回転させたりと攻撃の幅が広い。
斬れる……けど、数が多い。
斬ったそばから次の骨を無限に伸ばしてくるし、しかもそれがとんでもなく速い。
一本一本が【第六天魔王】の剣速とほぼ同じとか。
障壁もガンガンぶち破ってくるし頭パニクる。
『攻めねばジリ貧じゃ! 出力を上げるぞ!』
「オッケー……!」
地面が爆発するくらい強く踏み込む。
あれに対抗するにはもっと速く、最短のルートで斬り込むしかない。
【加速】に加えて【風魔法】で空気の抵抗を抑えて突っ込む。
「おおおおお!!」
懐に潜り込んだ。
タイミング完ぺき。
この距離なら私の刀が先に届く。
「ライジング――――――――」
そう、届くはずだった。
『っ?! 跳べ蝶羽!!』
【加速】だけじゃ間に合わない。
魔力を全開にして身体能力に全ブッパ。
何とか数メートルと距離を空けたけど、一瞬前まで私の首があったところを、それは空間ごと薙ぎ払っていた。
『馬鹿な!! これ以上無い間であったにも関わらず、あの反応はどういうことじゃ!!』
薄く血が流れる首すじを押さえながら、首狩り幽鬼が持つ黒い大鎌に目をやる。
「黒に赤い波模様の刃……ダークリアクション?!」
スケルトン千体分の骨から作られるその大鎌は、使用者にスキル【超反応】を付与するレア武器。
上位種とはいえあんな武器持ってる魔物とかありえない。
誰が描いたシチュエーションなのかは知らないけどさぁ。
「ガチふざけんな……!! ゲームバランス崩壊してるだろって!!」
『退くことは叶わぬであろうな』
「そんなつもり最初っから無いけどね!」
『その意気やよし。何か手立てはあるか』
あるにはあるけど……
「ッ!!」
こっちが考えてるのに攻撃してくるのズル。
ただでさえ攻撃の手数がハンパないのに、それを掻い潜ってもダークリアクションで迎撃される。
魔法は本体に届く前に掻き消されるし……
「一瞬だけでも隙が作れたら……」
すると、首狩り幽鬼の窪んだ目が光った。
何か来る……刀を構えたその瞬間には、赤黒いレーザーが空を走っていた。
そんな攻撃アリ……?
避けるの無理。
障壁で弾ける?確証無い。
ヤバ……当たる……瞬きさえ許されない時間の中、私の目は確かに捉えた。
「?!」
レーザーが私の前で不自然に軌道を変え、空高く上っていった。
『何じゃ今のは』
「レーザーが曲がった……いや、折れた……」
違う。屈折だ。
そんなことが出来るスキルは、イディオンの中でも限られてる。
「【光魔法】……」
「一瞬、隙を作れたら何とか出来ますか?」
そう言って、リゼちゃんは私の隣に立った。
「隙は私が作ります! あなたは、あの魔物を倒すことに専念してください!」
勇ましい。
身体は震えてるのに。
怖くて仕方ないはずなのに。
「カッコいいじゃん、お姫様」
『女子に啖呵を切らせたのじゃ。応えてやらねば侍が廃るわ』
「私だって女の子だし侍じゃないけど。まあ、サクッとぶっ倒してやるよ」
私の本気に屈しろ、骨野郎。
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