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転生から始まる私と魔王の天下無双!燃えて死んだけど二人ならガチで最強です!  作者: 無色
月下孤狼編

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35.凄まじくおもしろくない

 イディオンの魔物にはランクがある。

 ウルフやゴブリンみたいな一般の魔物。

 追憶の武将リコレクションジェネラル酒乱御前(ゴゼンズドランカー)のような上位種。

 そして、世界に一体しか存在しないユニーク個体。

 それぞれが世界の均衡を崩しかねないとさえ謂われる、生物という枠を超越した存在……神獣とも呼ばれる魔物。

 それが二つ名持ち(ネームド)。 

 この天狼(てんろう)フェンリルも、その内の一体だ。


「っは……」


 やっばい足震える。

 息上手く出来ない。

 怖い以上にドキドキしてる。

 あの二つ名持ち(ネームド)が、今目の前にいるなんて。

 イディオンでも討伐例どころか目撃例すらほとんど無くて、運営のネタ枠扱いになってるくらいだったのに。

 本物マ?

 ガチで……ガチで勝てる気しないの、笑うしかない。


「身構えるな人間」


 フェンリルはそう言うと、焚き火の傍に大きな身体を寝そべらせた。


『此奴、戦う気が無いのか?』

「そんなものあるわけがない」

『?!』

「今、信長と喋った?!」

「霊体……いや、スキルが意思を持っているのか。珍妙なこともあるものだ。長く生きているが、そんなものは初めて見た」

『わしの声が届いて……わしの……』


 信長は感動していた。

 当然だ。

 今までは私しか話し相手がいなかったんだから。

 自分の声を聞いてもらえるっていうのは、当たり前に当たり前じゃないってことだ。


「人間」

「え、あ、はい」

「早くせねば焦げるぞ」

「焦げる……ああ私のきのこ……へ、へくちっ!!」


 なにはともあれ……服、着ていい?




蝶羽(あげは)に信長。異世界人に、異世界の魔王か。また珍妙な組み合わせだな」

「まーね」

『何故二人して呑気にきのこにかぶりついておるのじゃおぬしら』


 だってお腹すいたし。


「香ばしき匂いに誘われたものでな」

『だからといって刀を折るやつがあるか! 見ろわしの刀! 真っ二つになっておるわ!』

「いきなり得物を向けられれば誰だって反撃するだろう」

「それはそう。次の街で直すって。あ、塩あるよ。かける?」

「くれ」


 フェンリルとご飯食べてる。

 今絶対スクショタイムなんだけど。


「てかガチで感動しててヤバい。あのフェンリルに生で会えちゃうとかマジでハンパないこと起きてる」

「おぬしの世界の遊戯が、この世界と酷似していると。我もまた遊戯の中の駒であったと、つまりはそういうことか」

「だいたいそう。ゲームの世界に似てるってだけで、めっちゃ違うとこだらけだけど」

「面妖なこともあるものよ。我はその遊戯ではどういう立ち位置であったのだ?」

「えっとねーまず存在が神! 会ってみたい二つ名持ち(ネームド)ナンバーワン! あとビジュが良すぎてマジ天才! カッコよさと神々しさのマリアージュ!」

「ふむふむ。よくわからんが褒めているのはわかる。なかなか見る目があるな蝶羽(あげは)

「エッヘッヘ」


 フェンリルに褒められた。


『ときにフェンリルよ、おぬしは何故ここにおったのじゃ?』

「神獣だからと霊験あらたかな山奥に籠もったり、人が寄り付かぬ孤島に身を潜めている必要はあるまい? どこにいようと、何をしようと、我は我の自由を謳歌するのみ。我は誰の指図も受けぬ」

「マージでカッコいい」

『ようはただの野良犬ということじゃろ』

「異世界の魔王とは随分狭量らしい。これなら蝶羽(あげは)の方がずっと物わかりがいいぞ」

「ゴメンねフェンリル。信長ちょっと神経質なとこあるから」

「構わぬ。久しぶりの美味と人間との談話に、我はすこぶる機嫌が良い」


 聞くと、フェンリルが人間に興味を持ったこと自体が久しぶりらしい。

 フェンリルの目には、大半の人間は同じに見えるとかで。

 曰く、人間に羽虫の区別などつくまい?だって。

 この王様の振る舞いがいいんだよね。

 王様っていうか女王様だけど。

 ビジュにピッタリの超弩級クールお姉様ボイスたまらん。


『犬ころめ』

「なにか言ったか山猿」


 なんか信長は水と油だけど。

 二人とも似た者同士っぽいし、同族嫌悪的な?




「ふう、もう食えぬ。腹がはち切れそうだ」

「見た目のわりに少食? 私より食べてなくない?」

『大食漢のおぬしに比べれば大概は少食じゃろ』


 うっさい。


「我は大気中の魔力(マナ)を主食にしておるからな。物を食うのは嗜好品に近いのだ」

「ほぇー。魔力(マナ)っておいしいの?」

「場所によるな。味も濃度もその場所次第で変わる」

「えーいいなー。私も食べてみたい」

「出来ぬことはない」

「マ?」

「魔力制御のスキルがあるな。それを使えばいい」


 魔力制御……たしか魔王の理の中にそんな権能があったっけ。

 魔法操作を精密にして、魔力(マナ)の消費を抑えるスキル。


「魔法が使えるなら問題は無い。試しに手の中で炎を出してみよ」


 言われたとおりに、手のひらを向かい合わせて炎を作る。


「そのままではいずれ霧散する。魔力(マナ)を込めて持続しろ」

「ふんぬ! ぬぐぐ……なんこれ、めっちゃ疲れる……!」

「攻撃性を抑えよ。魔力(マナ)が暴発せぬよう、荒れ狂う箇所を丁寧に除去するのだ」

「いや、これ大変……ぐぎぃ!」


 気を抜けば魔力(マナ)が爆発しそう。

 いつも自然に使ってたけど、意識を集中するとこんなに大変なんだ。


「それでいい」


 魔力(マナ)の制御に苦戦しながらも、ようやく手の中に魔力(マナ)の塊を作り出すことに成功した。

 

『ほう。炎の猛々しさは残しつつも、済んだ紅玉の如き魔力(マナ)じゃな』

「うん。でも、これ食べるの?」

「試してみよ」


 熱くはない。

 火傷するなんてことはないだろうけど……


「うう……はむっ!」

『どうじゃ?』 

「食感は無い……口に入れた瞬間無くなって……んんッ?!」

『ど、どうした?!』

「熱……あっつい!! え、何?! 熱ッ!! 身体の中で炎が燃えてる!!」


 身体が焼けてるわけではなくて、こう……熱いお湯を飲んだときみたいな。

 苦しくない、むしろ心地良い熱さ。


「めっちゃおもろい! これ超好き!」

「下手な制御なら、口にした瞬間暴発しただろうが、上手くいったようだ」


 今サラッと怖いこと言わなかった?


「先ほどとは逆だ。我にとっては主食でも、人間にとっては嗜好品だ。さして栄養があるわけではなく、腹も満たされぬ」

「そういえば食べた感じはしないかも」


 自分の魔力(マナ)だから、ようは自分に還元してるってことか。

 じゃあ労力と見合ってないじゃん。


「なら大気中の魔力を……ふんっ! ぬああああぃ!! あ、あれ?! さっきよりムズい?! このっ、言うこと聞けぇ……ふぬぬぬぬ……ぜえぃ!! はぁはぁ、で、出来た……」 


 けど、ちっちゃ!


「自分以外の魔力(マナ)は扱いが難しい。ましてや魔力(マナ)の扱いは魔法の練度に直結する。今の貴様ではそれが限界だろう」

「むぅ……ぱく。しかもなんか、味も微妙だし」

「初めてでそこまで出来たことを誇るといい。並の魔法使いではそうはいかぬ」

「いや、コツは掴んだ! 次はやれる!」


 私は器用だ。

 一度見たことはわりと出来る。

 魔力(マナ)の操作だってきっと。


「ふんっ! おっ、なるほど……無理やり抑えつけるんじゃなくて、魔力(マナ)の流れを整えてやる感じ……。これが、こうで、こうして……ほぁい! よっしゃー出来たー!」

「ほう……」

『おお、さっきより大きく澄んでおるな』

「ニッシッシ、どーよ? ま、私にかかればこのくらいヨユーってゆーか? さーてお味は…………なんか、ぬるい……シンプルおいしくない……」

「フフフ、人間にはまだ早い」


 むぅ、なんか悔しい。


「貴様らは何故旅をしている?」

「せっかく転生したんだから、やりたいこといっぱいやろうかなって。あ、せっかくフェンリルに会えたんだから、他の二つ名持ち(ネームド)にも会ってみたい!」

「ほう? 我を前に他の雑多の話をするなど。世迷い言をほざく口なら、塞いでしまおうか」

「ぎゃんッッッ!!!」


 かかか、カッコよーーーー!!!

 メロすぎぃーーーー!!!


「その大きなお口でパクッてしてくだしゃひ……♡」

「フフッ、可愛らしい奴だ。気に入ったぞ蝶羽(あげは)


 フェンリルは立ち上がると、辺りの魔力(マナ)を渦巻かせた。

 光が集まって幻想的。

 光はやがて一粒の結晶になって、私の手の中に落ちてきた。


「食べてみるといい」

「じゃあ……ぱく。ンンっ?!」


 蜂蜜みたいに甘い。

 なのに爽やかでスッと後味が消えていく。

 冷たくてパチパチ弾ける刺激もおもしろい。

 

「めっちゃおいしい!! ポッピンなシャワーみたい!」

魔力(マナ)を極めるとこういうことも出来る」


 ほぇー。

 奥深すぎ。


蝶羽(あげは)、おぬし』

「んぁ?」

『身体が光っておるぞ』

「はぁ? んなわけ……わあぁピカピカしてる?! たしかに私の存在は太陽みたいに輝いてはいるけど!!」

『言っている場合か!!』

「落ち着け。我の魔力(マナ)を喰らった影響だ。害は無い」


 あ、光消えた。


「なんか……身体の調子がいい気がする」

魔力(マナ)を喰わせたついでに、我の加護を授けた」

「加護?!」

『たしかに、【天狼の加護】というものが付いている』


 加護は基本ステータスと魔法の威力を上げる、イディオンでは伝説級のバフだ。

 そんなのを私に……


「でも、なんで?」

「共に喰らい、共に語らうそれを、人間は友と呼ぶのであろう? 我が貴様を、貴様らを気に入り友と認めた。それだけだ」

「フェンリルの友だち……それあっつ!」


 モフモフのお腹にぎゅーしてやった。

 んーお日様のいい匂い。


「ありがとうフェンリル!」

「ただの気まぐれだ」

「それでも嬉しいっ!」


 あのフェンリルと友だちとか、転生してよかったぁ。


『良かったのか? これは大層な力のようじゃが』

「問題は無い。加護を授ける相手を見誤ることなどあるものか。蝶羽(あげは)の器は貴様が一番よく知っておろうよ」

『ふん』

「ねえねえフェンリル。【天狼の加護】って、どんな効果があるの?」

「はしゃぐ気持ちもわかるが、もう夜も深い。続きは明日にしよう」


 気付いたら月が高いとこにある。

 うう、残念。


「ていうか、明日も一緒にいられるの?」

「我の気が移るまではな」

「やったぁ! ねえねえ、フェンリルに抱きついて寝てもいい?」

『その身体では洞窟に入るまい。かと言って外で寝ては、誰かに見られて騒ぎになるやもしれぬぞ』

「たしかに……」

「辺りに我ら以外の気配は無いが、仕方ない」


 フェンリルの身体が光って……

 

「おっふ?!!!」

「うむ、これならば問題はあるまい」

「デカワンちゃんがスーパーグラマラス爆イケお姉さんになったぁ!!!」


 顔良っ!!

 おっぱいでっか!!

 腰細っそ!!

 足長っが!!


「うひぃ〜てぇてぇ〜♡」

「抱きついて寝たいと言ったか。許す。存分に堪能し咀嚼せよ」

「わっはーーーーい!!♡」

『服を着ろ』

「何を言っている? 今の今まで貴様も我の裸体を拝んでいただろう」

『人の身体は別物じゃ!!』

「我は気にせぬ。貴様も気にするな。蝶羽(あげは)は何も言わぬぞ」

「こんなの寝れないどーしよー♡」


 信長は不機嫌そうに舌打ちした。


『凄まじくおもしろくない』


 ゴメンって私だけフェンリルの柔肌堪能して。

  

『違うわたわけ!!』


 なにが?

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


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