幕間:A UZIMARU IS SCARY AROUND HERE
新章、月下孤狼編。
どうぞお付き合いくださいm(_ _)m
「信長的に、戦国最強の武将って誰だった?」
『わし』
「そういうのいいって」
『わし以外なら、まあ信玄か謙信じゃろ。武力という個の力のみに限定すれば一概には決められぬが、あの二人は指揮官という点では他の誰よりも優れておった。わしの次にな』
「ほぇー」
ピチャン
あ、魚跳ねた。
『釣り糸を垂らしておるが、一向に釣れぬな』
「ふあぁ。ねー」
『もう風で一網打尽にしてしまえ』
「風情の欠片も無いこと言うじゃん」
ま、これも贅沢な時間の使い方なんじゃない?
「てか海行きたいなー。可愛い水着着たい」
『海か。良いのう』
「信長も海好き?」
『嫌いではないが、わしの海の思い出といえば、もっぱら堺の商人や村上水軍に関連しておるからな。遊び呆けた楽しいものではない』
「え、じゃあ楽しい思い出私と作り放題じゃん。やったね。信長幸せ者すぎん? 海とかめっちゃ楽しいから。ガチで」
すいか割って〜バーベキューして〜砂でお城作って〜。
あっ、花火とかしたい。
「やりたいことって無限だね」
『わはは、そうじゃな。無限じゃ』
「信長のいた時代だと、夏って何してたの?」
『おぬしの時代ほど娯楽があったわけではないが、七夕にはそうめんを食ろうたし、井戸できりっと冷やした諸白を飲んでたくらいのものじゃ。ああ、涼を取るのに怪談が流行ったこともあった。夜な夜な人が集まり怪談を聞かせては、蝋燭の火を吹き消していくというな』
「百物語的な? 楽しそう」
『おぬしは怖いものは平気なのか。まあ、随分肝が据わっておるしな。それだけ図太い性格をしておれば、怖いものなどあるまい』
「なにディスってんだコノヤロー。私にだって怖いものくらい……」
クンッ……
「おっ、何か釣れた! キテるキテる! これは大物の予感!」
『釣るなら宇治丸でも釣れ。あれは美味い』
「なんそれぇ……くうぅおっもい! 負けるかぁ……どぅおりゃあー!」
よっし釣れ……んん?
なんだ、でっか。
ちょっとした丸太くらいある。
『おお、本当に宇治丸を釣ったか。やるのう蝶羽』
「だからそれ何……鑑定鑑定、ファッティーイール……川に住む鰻の魔物……。これ鰻?宇治丸って鰻のことなんだ。臆病で警戒心が強く滅多に人前に姿を現さないが、川魚や藻を食べて丸々太った身は脂が乗って絶品……」
『食いでがありそうじゃな。三十人前はあるぞ』
「これ食べるマ?」
『何故じゃ。でかいだけで普通の鰻じゃろ。ああ生では食らうなよ。鰻の血は毒じゃからな』
食欲が湧かなすぎてヤバい。
丸ごとだからかな。
「捌くのは大変そうだなぁ」
『わしの分は残しておけよ』
「はいはい」
『そういえば』
「?」
『さっき言いかけたじゃろ。おぬしの怖いものとは何じゃ?』
「あー」
『やはり幽霊物の怪の類か? それとも虫か? いや、虫なら魔物を普通に狩っておるか。となると……案外、蛇か蛙ということも』
「数多の才能と溢れんばかりの美貌を併せ持つ私が一番怖い」
そう言うと信長は、
『そうか』
短く素っ気なく返した。
え、だって怖くない?
こんなに完ぺきな美少女本当に存在するの?ってなるでしょ?
「おーい信長? のーぶーなーがー?」
めっちゃ無視された。
聞いてきたのそっちなのに。
……ここらで一つ宇治丸が怖いの方が洒落が利いてたかな。




