27.剣の神父
「はあっ、はあっ!」
すばしっこいなぁあの子。
刀一本抱えてるのに、人混みも裏路地もスルスル抜けて。
『あの悪餓鬼……捕まえて馬の餌にしてくれるわ!!』
「キレすぎだろ」
『盗っ人に情けなど要らぬ!! 殺さぬ程度に焼き討ちにしてやれ!!』
「魔王っぽいとこ見せてくんな」
逃がしたら信長がグチグチうるさそうだし、早いとこ捕まえよう。
「はあはあ、ここまで来れば……」
「はい捕まえたー」
「わああっ?!」
「イディオンの街は裏路地の一本一本まで把握してんだ。鬼ごっこで私を撒けるわけねーだろ」
「このっ、離せ! 離せよ!」
「離してほしかったら刀返せ」
『よくやった蝶羽!! そのままひと思いにやるのじゃ!!』
やらねーよ。
「このっ離せ、離せよおばさん!!」
「誰がおばさんだ性癖歪めてやろーかクソガキ!!」
ズボン脱がして大通りで裸踊りさせてやろう。
「はぁ……。ほら、刀返せ。今ならいたずらで許してあげるから」
「ふんっ!」
このガキ……
「このまま衛兵に突き出されるのがいいか、プリプリなケツぶっ叩かれるのがいいか好きな方を」
言葉を言い終わる前に、銀色の何かが私の視界を横切った。
剣だ。
咄嗟にその場から飛び退いたけど、反応遅れてたら腕が飛んでた。
「その子を離せ」
剣を持った……神父?
黒髪と眼鏡で地味な印象だけど、それだけじゃ隠しきれないどちゃくそイケメン。
「聞こえなかったか。その子を離せ。次は斬る」
「神父様が一般人に斬りかかるっていうのは、神様的にどうなのそれ」
『蝶羽、侮るな。此奴はやるぞ』
わかってる。
追憶の武将を相手にしたときみたいな威圧感を感じるから。
「ふっ!!」
「っと!!」
剣はっやっ?!
こいつマジで殺しに来てる!
「てか前髪かすった最悪ガチ萎える……イケメン神父さんさぁ、ちょっと落ち着いて話聞いてって」
「悪党に貸す耳は持ち合わせていない」
「にゃろう……止まれっつってんの!!」
「?!」
威嚇のために炎で壁を作ると、神父は目を丸くした。
「炎……?! スキルか……ただの小悪党ではなさそうだ」
小悪党どころか魔王だぞって言ったらビビってくんないかな?
「ならばこちらも手加減の必要は無さそうだ」
神父の剣が光って……スキル?!
てか、あの構え……
「罪を悔いて死ね」
「だから話聞けって言ってんだろ」
神父が炎を突っ切ってくる。
私が鍔を鳴らしたところで、張りつめた空気に耐えられなくなった子どもが大声を出した。
「待ってジール兄ちゃん! 違うんだ!」
神父の剣が目の前で止まった。
「キノン、どういうことだ?」
「はぁ……どういうことだじゃないっての。話聞けって言ったじゃん」
とりあえず、何ともなくてよかったよかった。
「すまなかった」
神父は深く頭を下げた。
「おれの勘違いで危険な目に遭わせた」
「いいよもう。刀も返してもらったし」
「本当にすまない。キノン、お前も謝るんだ」
「ゴメンなさい……」
「ニシシ、ちゃんと謝れて偉いじゃん」
頭よしよししたろな。
おばさんって言ったのは忘れねーけどな。
「おれはジールという、この街の教会で神父をしている。こいつはキノン。教会の子どもだ」
「私蝶羽。よろ。んで、キノンはなんで私の刀を盗もうとしたの?」
「…………」
「事情はおれが説明する。ついてきてくれ」
いや、どうしても知りたいってわけじゃないんだけど。
ついて行かないって選択肢はアリかな。
『人としての格は下がるであろうな』
それは避けたいね。
ま、気になることもあるし。
おとなしくついて行こうかな。
なんかまた、騒動の予感がしてるんだけどなぁ。
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