25.前へ
雨が上がって、ゴブチたちの亡骸は集落の奥に埋葬した。
「こんなのでゴメンね」
木の棒を紐で組み合わせただけの粗末なものだったけど、無いよりはマシかなって。
『その気持ちが此奴らには供養になるじゃろうて』
「だといいな」
山で摘んだ花と、酒乱御前からもらった宝杯を供える。
『奴は知っておったのやもしれぬな。共に此奴らを弔いたかったのであろう』
瓶からお酒を掬い、宝杯に注ぐ。
雨の匂いに、甘く芳醇な香りが混じった。
「お酒、付き合えなくてゴメンね。私が飲めるようになったら、その時はまたみんなに会いに来るから。そしたら一緒に飲もう」
ゆっくり休んで、って。
みんなの前で手を合わせた。
「昨日あった命が今日消える。不思議なことじゃない。でも、信長……私やっぱり受け入れたくないよ。そんな当たり前」
『受け入れぬためには、強くなるしかあるまい』
強くなれば生きられる。
人よりちょっとだけ長く。
けど、それだけじゃダメだ。
「私は……誰かを守れるくらい強くなりたい。せめてこの手が、この刀が届くまでは」
『ああ、おぬしならやれる。それもまた、やりたいことじゃ』
私は手に持った一振りの脇差しを握りしめた。
小鬼刀……ゴブチが最後まで戦った証を。
「ゴブチ、一緒に行こう」
せめて守れなかった約束の代わりに。
――――――――
命は尽きる。
わしの時代では、死とは限りなく身近なものであった。
殺し、奪い、犯し、嬲り、そうしてわしらは人よりも上に立った。
ゴブリンたちの亡骸を見ても、此奴ほど心が動かなかったのは事実。
しかし、同じようにそれを受け入れろと言ったところで、そんなこと出来うるはずもない。
此奴はまだ、成人もしていない子どもなのじゃから。
が、それでよい。
『蝶羽よ』
「なに?」
『死に慣れるな。死とはわしらに等しく付き纏うもの。侮ることなく、忘れず、恐れ、悼み、悲しめる者であれ。そうしてこそ、おぬしと縁を結んだゴブチたちの魂も浮かばれよう』
「……うん」
いくらでも悔いよ。
涸れるまで泣け。
強くなれ。
わしは、共におるから。
わしがおぬしを守るから。
――――――――
私は今日のことを一生忘れない。
信長の言葉を胸に刻んで前に進む。
「行こうっ、信長」
『うむ』
ゴブチたちの分まで生きるために。
一歩、もう一歩。
前へ。前へ。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
おもしろいと思ってもらえたのなら、僭越ながらリアクション、ブックマーク、感想、☆☆☆☆☆評価にて応援していただけますと幸いですm(_ _)m




