13.ロマンチックには程遠い
えーっと、何があったんだっけ?
たしか素材加工のために鍛冶屋に行って……
「こんにちはー。あれ、誰もいない……」
定休日かな?
にしては鍵もかけずに不用心な。
「ごめんくださーい。お留守ですかー?……っと」
何かに躓いた……
「うえっ?!」
『これは……』
「ひ、人が! お姉さんが倒れてる!」
『向こうには子どももいる』
子どもの方は気絶してるだけっぽいけど、お姉さんの方は頭から血が……
「ど、どうしよう?!」
『落ち着け。二人とも息はある。まずは助けを呼ぶのが先決じゃ』
「わ、わかった! 誰か呼んでくる!」
「きゃあああ!!」
女の人の悲鳴……べつのお客さん?!
いやでも助かった。
早く医者に……
「誰か、誰か来て! ナヴィアとメルロが襲われてる!」
襲われ……てる?!
「違っ、違いますけど?! ちょっ、私じゃない!」
「衛兵を、衛兵を呼んで!」
「私じゃな……わ、私じゃないってばーーーー!!」
あーそうだ。
で、今衛兵に捕まってるんだった。
はぁ……
「しらばっくれるな! 貴様がやったんだろう!」
「だぁから私じゃないって! 私が店に入った時にはもうあの人たちが襲われてたの!」
「本当のことを言え!」
このお姉さん……
頭ごなしに私がやったって決めつけて……
「私のどこを見たら人を襲う凶悪犯に見えるっての!」
『笑止』
どういう意味で言ったそれ。
この状況か?
それとも私が凶悪そうに見えるってことに対してか?
『…………』
何とか言ってみろ信長このやろー。
「聞いているのか!!」
「うるせぇな耳元ででけぇ声出してんじゃねーよ!!」
あ、ヤベつい口調が……
「貴様……口の利き方がなっていないようだな……!!」
「いやぁ、その、アハハ……」
「っ?!」
胸ぐら掴むマ……?
「貴様は鍛冶師ナヴィアの店に押し入り、店主ナヴィアとその娘メルロを襲い、店の金と武器数店を強奪した!! 私の前で言い逃れが出来ると思うな!! このリアヌ=バーンズの目が黒い内は、二度と陽の光を浴びれないと覚悟しておけ!!」
無理やり立たされ、突き飛ばされ。
これが衛兵のやり方か、って私は眉根を寄せた。
それからろくな取り調べも受けずに牢屋にぶち込まれちゃいましたと。
ふぅ……
「っざけんなーーーー!!」
あーもうむしゃくしゃする!
「人の話も聞かずにこんなところに押し込みやがって!! しかも腕に枷まで!! おおい出せコノヤロー!! 兵舎ごとぶった斬られてーのか!! あァん?!!」
『叛逆され討ち死にしたわしが言うことでもないが、何故自ら罪人ぶるのじゃおぬし』
「ぶってねーよ!!」
『ならばそういうのが似合う星の下に生まれたのじゃな』
「うっさい!! くっそあの女ァ……」
『そう憤るな。どうせ立証は出来ぬ。早いうちに無罪放免となるじゃろう』
「冤罪かけられた時点で腹わたは煮えくり返ってるけど」
『刀は没収されたが、出ようと思えば力ずくで出られるのもたしか。余計なことはせずおとなしくしておれ』
……わかった。
信長がいなかったらブチギレてたな。
てか、歴史的短気な織田信長に諭される私とは。
牢屋で一夜を過ごし、翌日。
「出ろ」
信長の言ったとおり、私は釈放となった。
そのまま兵舎から出されるのかと思いきや、通されたのは衛兵長の部屋。
衛兵長とはつまり、この兵舎の最高責任者だ。
「衛兵長のジルニコラ=ヘイディスです。斎藤蝶羽さん、この度は部下が失礼しました」
プラチナブロンドのおじ様が深く頭を下げる。
同じく、隣のリアヌも頭を下げた。
冤罪が晴れたんだろう。
私は苛立ちを隠さずに乱暴にソファーに腰を下ろした。
「今朝方病院で目を覚ましたメルロが供述しました。店を襲ったのは大柄な男だと」
「へぇ。じゃあ、私はそんな奴と間違われたってことですか」
視線をやると、リアヌはビクっと身体を震えさせた。
「逸る気持ちを抑えきれなくて、私を犯人だと思い込んでしまったと。まともに話を聞かないで、暴力と暴言で黙らせて犯人をでっち上げる。それが街を守る衛兵のやり方?」
「そ、それは」
「どういう了見なのか言ってみろよ」
魔王の理の威圧のせいではあるんだけど、リアヌはとにかく怯えて、何も言い出せなくなってしまった。
そんな彼女を見かねてジルニコラが割って入った。
「部下の失態は私の責任です。どうかここは、怒りを収めてはいただけないでしょうか。私に出来ることならば、どんな償いでもさせていただきます」
「え、衛兵長……」
どう思う?
『赦す必要はない。原因が何であれ、冤罪をかけられ時間を奪われたのは紛れもない事実。相応の対価が無ければ、手打ちにしても文句は言えまい』
人殺しはしないのが私たちのルール。
それ以外はルールの範疇じゃない。
わかりました、いいですよ、で済ませられるほど、あいにく私は大人じゃない。
「償い、ですか。子どもだからそんな安っぽい言葉でごまかされるって、本気で思ってます?」
「そ、そんなことは、けして!」
「透けてんだよ。テキトーにお茶濁して、機嫌良くしとけばいいだろうって。部下が部下なら上司も上司だな」
私は無遠慮に踵を落としテーブルを蹴り砕いた。
「償いたいって言うんなら、誠意を見せてくださいよ」
「誠意……?」
返却された刀を差し出す。
「本当なら私が首を斬ってもいいんですけど、ちょっと事情があって人殺しは避けてるんです。だから、ジルニコラさんがその人の首を斬ってください」
「なっ、ま、待ってください! いくらなんでもそれは!」
「冗談ですよ」
目の前で人が死ぬのなんか見たくないし。
「首は要りません。なので腕をください。斬るか、それが出来ないなら折るのでもいいですよ」
「あ、あなたは、本気で……」
「本気ですよ。だって本気で疑われたんですから。ねえ、お姉さん」
「あ、ぁ……」
「いい気分だったでしょう? 熱血ぶった正義感で人を殴るのは。何をビクビクしてるのか知りませんけど、大したことじゃありませんよ。吐いた唾が自分に降ってきただけのことですから」
立ち上がり、後ずさりするリアヌに詰め寄る。
「ジルニコラさんに折られるのが嫌なら自分で折れよその腕。ほら、さっさとやれよ。私を突き飛ばしたのは、こっちの腕だっけ。なぁ」
「ご、ゴメンな……さ」
涙目のリアヌを追い込み、壁に思い切り手をつく。
「不愉快なんだよ。二度と私の前に顔見せんな。わかったな」
「はっ、は、は、い――――――――」
リアヌはずるりと壁にもたれながら床にへたり込んだ。
顔は涙まみれ。
股下をあたたかいもので濡らして。
人生初めての壁ドンだったんだけど、はぁ。
ロマンチックには程遠い。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の主人公は、女の子も殴れる系の女の子となっております。
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