10.掌の熱
どうやって街まで帰ってきたんだろう。
気付いたら病院の病室にいた。
お医者さんの話を聞くと、全身傷だらけの状態で街に倒れてたらしい。
なんでも一週間眠りっぱなしだったとかで、生死の境を彷徨う結構危ない状態だったんだってさ。
「ポーションも携帯食料も持たずに魔物と戦うなんて何を考えてるんですか!!」
お医者さんには準備不足と無茶を死ぬほど怒られた。
「ふぃー」
『用心を怠るな。いい薬になったのう』
「まーね。せっかく狩った魔物が入院費と治療費でパーだよ」
『わはは、仕方あるまい。金子などまた稼げばよい』
「……ありがとね。信長が街まで運んでくれたんでしょ?」
『なんじゃ藪から棒に。覚えておらぬ。無我夢中じゃったからな』
照れてやんの。
可愛いとこあるじゃん。
「夢かと思ったけど、夢じゃないんだよね」
右手から黒いオーラを出してみる。
『いい具合じゃな』
「やっと身体に馴染んだかな」
ユニークスキル
【第六天魔王】
権能:魔王の眼……鑑定、解析、視野拡張、俯瞰、望遠、夜目、動体視力、真贋看破
魔王の刀……剣術の極意、切断力上昇、武器耐久
魔王の肉体……武芸百般、騎馬、身体能力強化、五感強化、気配察知、自然治癒力上昇、状態異常耐性、環境耐性
魔王の宝物庫……容量無限、内容物不変
魔王の理……思念共有、纏魔、魔力制御、威圧、演算処理、能力吸収
魔王の寵愛……魅了、献上、床上手、絶倫
「ちゃんとわかるとガチでチートなんだけど。これはユニークスキルだわ」
『さすがわし。さすわしじゃろ』
現代語感に慣れた織田信長解釈違い起こしそう。
『だから言うたであろう言うたであろう? わしは剣術のみに収まる器ではないと』
「言ったっけ? てか壊れ性能すぎて諸々ツッコみたいところはあるんだけど……魔王の寵愛は何?」
魅了は私に好意を抱いた人の好意をブーストさせる。
献上は好意を抱いた人が貢ぎ物をくれるようになる。
まあ、ここまではまだいい。
床上手と絶倫て。
「私未だかつてシたことねーんだけど」
『いずれ役に立つ場面もあろう』
「今のとこ女の子にしかモテてないのに?」
『さもありなん』
戦国時代出身なのに多様性に寛容すぎるだろ。
「あとこれ見てよ」
手から炎ボオッ。
『おお。妖術か?』
「どう考えても追憶の武将が使ってたやつだろ」
エクストラスキル【炎熱操作】……炎を自在に操るスキルだ。
「魔王の理の能力吸収かな。倒した相手のスキルを自分のものに出来るっぽい」
『ほう。火種要らずで便利じゃな』
「まーね。じっくりスキルを検証しないとなぁ。またいつあんなことがあるとも限らないし」
『そうじゃな、しかしようやく歩けるようになったんじゃから、しばらくは静養しておれ』
「美人の看護師さんに面倒見てもらえるのは悪い気分じゃないけど、もう決めちゃったからなぁ。好きなことして生きる、って。信長は何やりたい?」
『まずは甘味じゃな。思う存分南蛮の菓子を食ろうてみたい。茶の湯も相撲も。時間を忘れて湯に浸かり、くいっと一献を傾けるのもいいのう。おおそれとな、名刀集め! これは外せぬ! 武具に名物、安土よりも立派な城! わはは、心が躍るのう!』
「ニシシ、やれるやれる」
てか絶対やるし。
『おぬしはどうなんじゃ蝶羽。おぬしは何をやる? 何になる?』
「そうだなぁ。ドラゴンの背中に乗って空を飛んでみたいし、甘くておっきなお菓子の家にも住んでみたいし、異世界に転生したからには最強にもなってみたいけど」
『けど?』
「天下統一して魔王になる!……のも、悪くないかなって思ったり?」
『くっ、わっはっは!』
「アッハッハ!」
ま、先のことは誰にもわからないからね。
「よろしくね、信長」
『うむ』
せいぜい遊び倒してやろうかな。
相棒と一緒に、ね。ニシシ。
――――――――
相棒、か。
ふっ、悪くない。
共にさせてもらおう。
蝶羽と信長の新たな始まり。
見つけようではないか。
わしらのやりたいこと、なりたいものを。
「ところでさ」
『む?』
「信長はなんで私と一緒に転生したんだろうね?」
『それは……』
「死なない! 絶対死なない!」
「こんなところで……死んでたまるかぁ!」
『……ふっ、何故じゃろうな』
思えばとうに、か。
「なに?」
『なんでもないわ。たわけが』
この信長を惹かせる女とは。
まるでおぬしのようじゃよ、帰蝶。
『ふっ、いや……奴はもっと気が強かったか』
「何の話してる? おーい信長。のーぶーなーがー」
『ええいうるさい! そうと決まれば行くぞ! さっさと支度をせんか!』
「行くってどこに」
『どこでもよい! 行けば何かしらがあるじゃろうて! 兵は神速を尊ぶものじゃ!』
「だからそれ人のやつだろって。兵でもないし。んじゃ、行こっか」
『おう! わしらが紡ぐ天下無双の始まりじゃあ!』
身体は無い。
しかし、わしはたしかに感じた。
高らかに合わせた熱を、この右手に。
しばらく経って、とある噂が人々の間で蔓延した。
「知ってるか? 黒の剣士の話」
「ああ、街道の魔物を全部斬っちまったってやつだろ?」
「おれは道を塞いだでっけぇ落石を斬ったって聞いたぞ。何者なんだろうな」
「一度だけ見かけたことがあるけどよ、とんでもない美人だったぞ。まあちょっとおかしいとこがあったけどな」
「おかしいとこ?」
「一人で旅をしてるらしいんだが、たまに一人で喋ってるんだよ。そこに誰かいるみたいに」
「ハハハ、幽霊でも見えてるってか?」
「いやぁ、ありゃあ幽霊っていうより」
刀一本を携え、美しい黒の髪を靡かせる不思議な少女。
どことない虚空に話しかける姿が度々目撃されながら、今日も今日とて何処ぞへと。
その行く先も行く末も、今はまだ誰も知らない。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
不定期更新ですが、ぼちぼち書くつもりでいますので、どうかダラダラとお付き合いください。
応援のリアクション、ブックマーク、感想、☆☆☆☆☆評価にて応援いただけましたら幸いですm(_ _)m
なお、今から12時まで10分ごとに更新されます。




