Epilogue and Prologue
「ついに……ついにこの時が来た!」
あと五分でサービス開始。
大人気フルダイブゲーム、イディアルオンライン……通称イディオンの最新作、イディアルオンラインⅡ……
世界中で一大センセーションを巻き起こした超名作の続編だ。
私が中二のときだから、三年越しのリリース。
SNSはイディオンで話題一色。
みんな神ゲーのサービス開始を今か今かと心待ちにしている。
「あと三分……!」
やり込みすぎてお母さんに怒られた。
部活もサボりまくった。
彼氏……は、いたことないけど甘酸っぱい青春も全てをこの神ゲーに捧げた。
「あと一分……!」
ああ……すごい熱い。
身体中に熱を感じる。
ゲームをするために成績を落とさなかったし、偏差値が高い高校に入るのを条件にアパートで一人暮らしも始めた。
「十、九……!」
データの引き継ぎもやった。
もう私を止められるものはない。
「六、五……!」
いざ、イディオンの世界へ。
「三、二、一……! ゲームスタート!」
サービス開始直後。
私は隣の部屋のガス爆発が原因の火事に巻き込まれて死んだ。
――――――――
同時刻。
「もうすぐリリースですね先輩」
「ああ。ここまで長かったな」
「終わったら軽く打ち上げでもしますか」
「そうだな」
イディアルオンライン開発スタッフは、部下と他愛ない話をしながらキーボードを叩いた。
「もう調整終わったんですよね? それ何してるんですか?」
「一応チェックをな。ふぅ、ちょっとトイレに行ってくる」
「はーい」
部下の女性はチラッと隣のパソコンを覗き込んだ。
「これプログラム? キャラクリ? にしてはコードがおかしいような……次のアプデ用かな」
まじまじと見ていると、ふと指先がキーボードに触れてしまった。
「あ、ヤバっ! コード書き換えちゃった……どうしよ……」
直そうと試みたところで先輩と呼ばれた男性が戻ってきた。
「ん? どうした?」
「あ、あは、なんでもないですよ! なんでも!」
「そうか?」
「アハハ……あ、あの先輩、そのコードってなんですか? まさか次のアプデとか……」
「ああ、ちょっとしたAIだよ」
「AI?」
「アルゴリズムに由来しないAIサポートのスキルを取り入れてみようと思ってな。おもしろそうだろ? 歴史上の偉人の力をその身に宿す、なんて」
「へ、へー。そ、そうなんですねー」
部下の女性は冷や汗を垂らしながら相槌を打った。
「まあ、まだまだ実用段階じゃないから試作品なんだが。……って、あれ?」
「ど、どうかしましたか?」
「いや、データが消えて……」
「ええっ?!」
「どこか違うファイルに保存したか……? バックアップは……おっと、もうすぐサービス開始だ。サーバー管理しっかり頼むぞ」
「は、はいっ!」
そのデータは、人知れず電子の海を潜った。
そして――――――――
――――――――
暗い。何も見えぬ。
ここはどこじゃ。
わしは死んだはず。
何故生きておる。
わしは……いや、最早どうでもよい。
このまま無明にて散るもよし。
わしはもう、何者でも――――――――
「死なない! 絶対死なない!」
闇の先にて光が見えた。
「こんなところで……死んでたまるかぁ!」
光は燃え盛る炎ではけしてなく。
わしは其奴に、其奴の輝きに目を奪われた。
ふと書きたくなった新連載でございます。
『転生から始まる天下無双!私と魔王の自分探し〜燃えて死んだけど二人ならガチで最強です!』
火人爆命編、どうかお付き合いいただけましたら幸いですm(_ _)m
本日、大量更新あります。