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魔物との遭遇

 お金がない僕は食料品だけ買って、街の空き地で野宿することにした。そこで腹を空かせて弱っていた子犬になけなしの食べ物を与えた。あまりにも懐いてきたので、シロと名付けて行動を共にすることにした。だが、人相の良くない冒険者達に絡まれ、それをティオが助けてくれた。



「アル!お前は何も知らないかもしれないがな。世の中には救いようのない者達もいるんだ。」


「そうなんですか?」


「ああ、そうだ。昨日のゴング達は、あいつらは悪じゃない。だがな、さっきの連中は別だ。あいつらは救いようのない悪だ。気を付けろよ。」


「はい。」


「じゃあ、リーデンの家に行こうか。」


「うん。」



 ティオと二人で歩いていると何か姉ができたようで嬉しかった。



「どうしたんだ?アル。」


「さっき、ティオさんが彼らに向かって僕のことを弟って言ってくれたのを思い出したんです。」


「ああ、思わずそんなことを言ったな。」


「僕は孤児院で育ったから、本当の姉ができたようで嬉しかったんです。」


「フツフツフッ アルはおかしな奴だな。」



 なんかティオも少し嬉しそうに見えた。そしてリーデンの家に到着したのだが、家の中は空っぽで誰もいなかった。



「えっ?!どうして?」


「アル。本当にこの家であっているのか?」


「はい。間違いないです。でもどうして?また依頼してくれるって言ったのに。」


「そうか。」



 昨日は『またお願いしてもいいかしら』って言ってくれていたのに、どうして急にいなくなっちゃったんだろう。結局、リーデンには会えずにギルドに戻ることにした。戻る途中、ティオは何か考え事をしているようだった。ギルドに戻った後、僕は薬草採取の依頼を受けることにした。



「アル。薬草は城壁の外の草原地帯だ。あそこには魔物が出ることもあるから、魔物が出たら急いで逃げるんだぞ。」


「はい。そうします。」


「私も一緒に行ってやりたいが、今日はちょっと用事があってな。」


「大丈夫です。」

 


 僕はシロと一緒に城壁から出て西側の草原地帯に向かった。目的の薬草は『ヒール草』と言ってポーションの材料となる薬草らしい。実物を見せてもらったので他の草と区別はできる。


 

「シロ!あまりはしゃぎ過ぎて離れるなよ。」


ワン!



 草をかき分けて探し始めたがなかなか見つからない。するとシロの鳴き声が聞こえてきた。行ってみると、そこには『ヒール草』が群生していた。



「ありがとう。シロ。」


ワン!



 僕は両手いっぱいにヒール草を抱えて、城門の方向に歩き始めた。シロは尻尾を激しく振っている。活躍したことが誇らしいのだろう。歩き始めて10分した頃、叫び声が聞こえた。



「キャー!誰かー!誰か助けてー!」



 声の方向に走って行くと、10歳ぐらいの少女が血を流して倒れていた。そして彼女を囲むように3体のゴブリンがいた。ゴブリン達は僕に気が付いたようだ。



ギャギャギャ



 ゴブリン達が棍棒をもって向かってきた。非力な僕にはどうしようもない。かといって彼女を残して逃げるわけにもいかない。勇気を振り絞ってゴブリンに向かっていったが勝てるはずもない。



バコッ ボコッ ゴツン



 ゴブリンが棍棒で僕を殴りつけてきた。背中や腕を叩かれて息ができない。このままだと僕も殺されてしまう。逃げようとも思ったが、目の前には血を流して倒れている少女がいる。逃げるわけにはいかない。僕は咄嗟に彼女を守るように覆いかぶさった。



バコッ ボコッ ボコッ



 意識が遠のいていく。


“もうだめだ。このまま死ぬんだ~。何もできなかったな~。”



“善行ポイント300 規定に達しましたので魔力操作を取得しました。”


“えっ?!”



 薄れ行く意識の中で声が聞こえた。なんか体に暖かいものが流れているのが感じられた。物凄く心地いい。不思議なことに体の痛みが消えていき、力がみなぎってくる。



ワン!ワン!ワン!ウー、ガウー



 目を開けると、身体の小さなシロが必死にゴブリンに噛みついて僕達を守ろうとしていた。僕も負けてはいられない。すると頭の中に再び声が聞こえた。



“魔法は想像の具現化よ。魔法を使いなさい。”



 何時も夢に現れるあの光の球と同じ声だ。誰かは知らないが指示に従ってみることにした。すると、手に意識を集中すると手が光始めた。その手をゴブリンに向けると一瞬辺りが見えなくなるほど眩しく光った。



ピカッ

ギャギャギャギャ




ゴブリン達は何か危険を察知したのだろう。慌てて逃げて行った。



「おい!大丈夫か!」



 僕は倒れている少女のところに行って彼女を抱きかかえた。すると血が流れていた少女の傷が完全に治っていた。



“あれ?!どうして怪我が治ってるんだろう?もしかして僕が願ったから?”



 慌てて自分の身体を見ると、あちこちにできた傷がきれいに消えていた。あれだけ殴られたのにどこも痛くない。



「ん~。私、助かったの?」


「よかった~。気が付いたようだね。」


「あなたが助けてくれたの?」

 

「僕じゃないよ。このシロがゴブリン達を追い払ってくれたんだ。」



 咄嗟に僕は嘘をついた。



「ありがとう。シロちゃん。」


ウ~ ワン!



 落ち着くまでその場で休むことにした。その間、僕達はお互いのことをいろいろと話した。彼女の名前はアリス。父親が仕事で王都に行っている間に母親が病気になり、薬草のヒール草を採取しに来たそうだ。



「アリスちゃん。ヒール草を半分あげるよ。」


「いいの?」


「いいよ。まだまだたくさんあるから。」


「ありがとう。アルお兄ちゃん。」



 孤児院でも年下の弟や妹にお兄ちゃんと呼ばれていたけど、あったばかりの少女にお兄ちゃんと呼ばれるとなんか照れ臭かった。



「街に帰ろうか。」


「うん。」


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