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不思議な犬シロ

僕はギルドの初依頼でリーデンさんの家の掃除をした。その帰り道、突然頭の中に声が聞こえ、全身に激痛が走って動けなくなってしまった。しばらく休んでいると、身体の痛みもなくなり楽になった。ふと周りを見渡すと辺りはもううす暗くなっている。僕は慌ててギルドに戻った。



「アル君。終わったの?」


「はい。」



 リーデンに依頼終了のサインを書いてもらった紙をキャサリーに渡した。



「はい。これが報酬よ。」



 報酬は銀貨2枚だ。これで何とか食べ物を買えそうだ。だが、宿泊するにはお金が足りない。そんなことを考えていると後ろからティオが話しかけてきた。



「無事に終わったんだな。」


「はい。」


「あれ?!アル、その指輪どうしたんだ?」


「えっ?!これ?これはリーデンさんがくれたんです。なんか高そうなのにいいんですかね?」


「アル!ちょっとそれを見せてみろ!」


「どうしたんですか?」



“これは伯爵家の紋章じゃないか。どうしてこんなものが・・・・”



「アル。明日、そのリーデンの家に私を案内してくれ!」


「どうしたんですか?ティオさん。」


「この指輪の紋章はロベルト伯爵様のものだ。」


「えっ?!どういうことですか?」


「リーデンという人がどうして伯爵家の紋章の指輪を持っていたのか、それにそんな大切なものをどうしてお前に渡したのか知りたいんだ!」


「わかりました。」



 翌日ギルドで待ち合わせすることにして、僕は食料品を買いに店に行き、パンと干し肉を買って商店街の裏の空き地に行った。流石に街の中には魔物が現れることはないだろう、そう思ってそこで野宿することにした。買ったパンと干し肉を食べようとしていると、薄汚れた子犬がよたよたしながら近づいてきた。



「お前、お腹が空いてるんだな?」


ワン!



 僕はパンと干し肉を子犬の前に置いた。すると僕をチラッと見た後、凄い勢いで食べ始めた。



「やっぱりか~。」



その日僕が食べる予定の食料をすべて子犬にあげた。

  


“善行ポイント50”



 再びあの声が聞こえたが、もう気にしないことにした。それにしても冷える。子犬も寒いのか僕に体をくっつけてきた。そして、子犬の温かさを感じながらゆっくりと眠りに落ちていった。



“アル。アル。”



 誰かが僕を呼んでいる。ふと目を開けるとまた光の球が目の前にいた。



“アル。あなたの魔力の封印が解除されたわ。もっともっと善行を積みなさい。期待しているわよ。”


“あなたは何者ですか?”


“頑張るのよ。”


“ちょ、ちょっと待って・・・・”



 小鳥の鳴く声で僕は目が覚めた。前回は夢だと思ったが、二度まで不思議な現象が起きたのだ。これは夢じゃないんじゃないかと思えてきた。



「お前どうするんだ?」


ワン!


「僕と一緒にいたいのか?」


ワン!ワン!



起き上がって土を払ってギルドに向かった。すると、やっぱり子犬が僕についてきた。まるで僕の言っている意味が分かっているかのようだ。



「お前、帰る場所がないのか?」


ワン!


「わかったよ。なら、今日からお前はシロだ。いいね。」


ワン!



 僕はシロと一緒にギルドに向かった。流石に朝のギルドは冒険者で一杯だ。僕はキャサリーのところに行った。



「ティオさんは来てますか?」


「まだ来てないわね。座って待ってたらいいわよ。」



 キャサリーに言われて酒場の席に座って待っていると、昨日はいなかった人相の悪い冒険者達が声をかけてきた。



「おい!小僧!ここは冒険者ギルドだぞ!なんでこんなところに魔物なんか連れて来てるんだ!すぐに出て行け!」



 シロは子犬だ。魔物なんかじゃない。



「シロは犬ですよ。魔物じゃありません。」


「うるせぇ!口答えするな!」



バコッ ボコッ ガティオン



 いきなり殴られて床に転んだ。口の中が切れたらしく血の味がした。



「い、いきなり何するんですか!」


「うるせぇ!クソガキ!」



バコッ ゲホッ



 今度は足で思いっきり腹をけられた。



ワン!ワン!ワン!



 シロが僕を守ろうと前に出て必死で吠えている。他の冒険者達はただ見ているだけだ。騒ぎを聞きつけてキャサリーが僕に駆け寄ってきた。



「アル君。大丈夫?」


「はい。大丈夫です。」


「あんた達やめなさいよ!ギルマスを呼ぶわよ!」


「うるせぇな!受付の分際で俺達に説教か!お前も殴ってやろうか?」



 バコッ ドカッ ボコッ ゲホッ



「お前ら!私の弟に何してくれてんだ!殺されたくなかったら失せろ!」



 ティオが来てくれたようだ。男達はティオを見て顔を青くして逃げて行った。



「ありがとう。ティオさん。」


「悪かったな。アル。私がもっと早く来ればよかったんだが。」


「いいんですよ。僕が弱いのがいけないんですから。」


「その犬はどうしたんだ?」



 シロを見るとまるで心配してるかのように僕に寄り添っていた。



「昨日の夜、友達になったんです。シロも一人ぼっちみたいなんで連れてきティオいました。」


「そうか。」



 ティオが僕を見る目が微笑んでいるかのようで優しかった。


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