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ハーランド王国の平和

 僕が見知らぬ兵士と話をしていた頃、ヘルナンデス公爵の屋敷ではティオの母のマーガレットとティオ、それに公爵の3人だけで話をしていた。



「父上!とうとう見つけました!」


「見つけた?何をだ!」


「アルフレッド。」


「ま、ま、まさか!それは誠か!」


「はい!テンポスの孤児院で育てられたそうです。リーデン殿にも確認しましたので間違いありません。」


「リーデン殿に会ったのか?」


「はい。やはりアンドレ様に匿われていました。」


「そうであったか。生きていてくれたか~。」


「彼は私の厳しい修行にも耐え、強くなっています。何よりも彼は魔法が使えます。」


「なんと!それは誠か!」


「はい!」


「魔力がないからと陛下が捨てた子が魔法を使うとは、なんと因果なものか。」


「ディオール。アルフレッド様は自分の出生を知っているのですか?」


「いいえ。何も話してはおりません。」


「あなたとのことは?」


「いいえ。何も言っていません。」


「そうなんですか。あの日、教会であなたに降りた神託が現実になるかもしれませんね。」


「アルはまだ子どもです。それに私にはあまりに純粋すぎます。」


「何を言っているのですか!あなたがあの方の妻となることはフィリス様からの神託なんですよ。そのために、幼いころから剣の修行をして探しに出たのではありませんか。」


「はい。ですが、まずは今回の戦争をどう乗り越えるかです。」


「そうだな。ところでアンドレ殿はどうしているのだ?」


「それが、どこにも姿が見えないのです。」


「そうか。」




 兵士達の休息をとるために2日ほどしてから、3万の大群で王都に向かうことになった。僕の隣にはティオがいる。ティオは馬車にも乗らず、僕と一緒に歩いている。シロは僕の背中の袋の中でゆっくり休んでいるようだ。



「そろそろ王都だ。」



 兵士達が一斉に立ち止まった。僕はティオと一緒に兵士達の最前列に向かうと、大きな城壁の前に国王軍が集まっていた。いつ戦いが始まってもおかしくない状況だ。


 すると一騎が両軍の中央にやってきた。そして大声で叫んだ。



「神託じゃ!神託が下った!両軍退くがよい!」



 目の前に現れたのはアンドレだ。そしてアンドレがこちらに向かって大声で叫んだ。



「アルフレッド様!前に!前にお越しください!アルフレッド様!」



 なぜかアンドレが僕の名前を呼んだ。ティオが僕の背中を腕を掴んで一緒に前に出た。



「えっ?!何?何?どうして?」



 今度はアンドレが国王軍に向かって叫んだ。



「誰か!陛下を中央広場の神剣の前に呼ぶがよい!最高神フィリス様の命令じゃ!」



 僕はティオに連れられてアンドレとともに城門を通って中央広場にやってきた。中央広場の噴水の前に大きな岩があり、そこに1本の剣が刺さっていた。注意書きがあり、『この剣は神により与えられた剣である。この剣を抜くことができるのは神が認めた者だけである。』



 しばらくして大勢の兵士に囲まれてユリウス国王がやってきた。初めて見たが40代ぐらいの体格のいい男性だ。



「久しぶりだな。アンドレ。」


「はっ!お久しぶりでございます。」


「神託とは大きく出たな。」


「事実でございます。」


「どのような神託だ?申してみよ!」


「はっ!恐れながら、陛下よりもこの国の王にふさわしき存在がいるとフィリス様に言われました。」


「なんだと~!!!貴様!気でも狂ったか!」


「陛下!陛下にこの剣が抜けますか?恐らく無理でしょうな。それはこの国の王にふさわしくないからでございます。ですが、ここにいるアルフレッド様であればその剣が抜けましょう。」


「アルフレッドだと?まさか?!」


「その通りです。陛下が13年前、我が娘であるジャネット王妃から奪い取って捨てた子です。」


「あやつには魔力がなかったのだ!王家に生まれて魔力がない者など、我が王家に必要ないのだ!」



 もう何が何だか僕にはわからない。僕が国王の子ども?ありえない。だって僕は孤児院で生まれ育ったんだから。僕の父は神父様で、母はマリーだ。ありえない。何故か僕の身体からものすごい力が外に放たれるのが分かった。


 僕の身体から真っ赤なオーラが辺り一帯を威圧していく。アンドレもユリウスも兵士達もたっていられない。それどころか息ができない。



「アル!アル!落ち着け!アル!落ち着くんだ!アル!」



 なんか体が温かい。まるで母に抱かれているかの模様だ。優しさと愛おしさが僕の心に沁み込んできた。気が付けばティオが僕を抱きしめていた。



「正気を取り戻したようだな。アル。」


「はい。ごめんなさい。」


「いいんだ。それよりもその剣を抜いてみろ。それは神様からお前に与えられた剣だ。」


「はい。」



 僕は剣のところに行ってそれを引き抜いた。



「オオ——————!!!!!」



 ユリウス以外が僕に平伏した。



「ばかな!何故だ!何故魔力のないお前にその剣が抜けるのだ!」



 僕は上空に向かって手をかざし、記憶の奥底にある様々な色の混じった火の玉を放った。



ヒュー バーン バーン



 その火の玉からゆらゆらと光の粒子が降り注ぐ。その光の粒子は兵士達の古傷や病を治した。



「奇跡だ!神の奇跡だ!」



 ユリウスは地面に膝をついてうなだれた。


 こうしてハーランド王国で起きそうになっていた内戦は、誰も怪我をすることもなく終結したのだ。僕とティオ、アンドレとロベルト伯爵はユリウス国王と一緒に城に行った。お城にいくと優しそうな女性が涙を流して僕を見ていた。



「アルフレッドなの?」


「はい。そうで・・・」



 その女性が周りの制止を振り切って僕に抱き着いてきた。甘い匂いがする。柔らくて暖かい。まるで神様に抱かれているようだ。ティオに感じた時と同じだ。



「お母さん?」


「そうよ!あなたの母よ!許して!こんな母を許して頂戴!」



 周りにいた人達の目からも涙が流れ落ちた。流石のユリウスも感じるものがあったようだ。



「わしが間違えていた。すまなかった。」



 誰にも頭を下げたことにない国王ユリウスが僕に頭を下げた。



「お父さん。僕は怒ってなんかない・・・」



 涙で声にならない。いないと思っていた両親が目の前にいるのだから。



「ありがとう。お父さん。お母さん。僕なんかのために泣いてくれて。僕ね。テンポスにもお父さんとお母さんがいるんだよ。お父さんやお母さんが2人もいるなんて僕は幸せ者さ。」


「アルフレッド。こんなにいい子に育ってくれてありがとう。フィリス様、ありがとうございます。感謝します。」



 その後、応接室に移動して今までのことをいろいろ話した。僕のことを毛嫌いしていた父も驚くばかりだった。母はずっと優しい目で僕を見つめていた。そして、僕から二人に大事な話をした。



「僕は国王になんかならないよ。お父さんの後は弟のアントニーが国王をすればいいよ。」


「アルフレッド!急にどうしたの?」


「僕ね。世界中の人達を幸せにしたいんだ。だから自分にできることをやりながら世界中を回りたいんだよ。いいよね?ティオさん。」


「そうだな。それもいいかもな。」



 するとヘルナンデス公爵がティオに言った。



「ディオール、お前はそれでいいのか?お前は王妃になるように神託を受けていたんだろ?」


「えっ?!それって僕と結婚するつもりだったってこと?」



 珍しくティオの顔が真っ赤になった。



「アル!お前、年上は嫌か?」


「ティオさんが僕の奥さんになってくれるなら最高だよ。」


「バカ!恥ずかしいだろ!」



 僕とティオの様子を全員が温かい目で見ていた。



「おめでとう。アルフレッド。ティオさんでいいかしら?アルフレッドのことをよろしくね。」


「私からもお願いする。息子のことを頼む。」



 その日は王城で夕飯をいただいてベッドに寝転んでいた。



“アル!よかったわね。これで私の役目も終わったわ。”


“えっ?!シロ!どっかに行っティオうの?”


“またいつか会えるわ。”

 


 シロの姿がどんどん薄くなっていく。そして完全に見えなくなった。


 翌日、僕とティオははみんなに見送られて王城を後にした。街を出ようと城門のところまで来るとそこには見慣れた少年がいた。



「マイケルじゃないか!」


「久しぶりだな!アル!驚いたぞ!まさかお前が王族だったなんてな!」


「いいや。僕はただの冒険者さ。確かに僕の父親は国王だったけどね。」


「それでこそアルだ!ところでお願いがあるんだ。」


「何?」


「俺と戦ってみてくれ!広場で見たお前の闘気、あれは普通じゃない!お前相当強くなったんだろ?俺も自分の実力を知っておきたいんだ!」


「いいよ。でも昔の僕じゃないよ。」


「わかっているさ。」



 マイケルの能力を魔眼で見てみた。



『剣術200 魔力100 戦闘力250』



 マイケルは僕と同じ13歳だ。僕と違って善行ポイントがあるわけじゃない。それにもかかわらず、これだけの能力になるためにマイケルがどれだけ努力したのかわかった。



「行くぞ!」


カキン バキッ シュッ スパン



「やっぱりお前相当強くなったな。今の俺じゃ勝てそうにないよ。でもいつかお前に追いついてやるからな。」


「僕はこのまま旅に出るけど、マイケルはどうするの?騎士団に入るの?」


「騎士団はもうやめだ。俺はナポルの街行って、ジンさんに頼んで『鷹の爪』に入れてもらうんだ。俺もお前のように人の役に立つ人生を送りたいからな。」


「変わったね。マイケル。」


「お前の陰かもな。」


「じゃあ、またな。」


「うん。またね。」



 僕とティアは左の道を、マイケルは右の道をそれぞれ歩いて行った。


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