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ティオが公爵令嬢?!

 ダンジョンから戻ると、ロベルト伯爵の使いの者が僕を向けに来た。だが、疲れていたし、もう時間が遅いということもあって、翌朝迎えに来てもらいことにした。



フ~



「どうしたんだ?アル。何か心配事か?」


「僕、何か悪いことしたんですかね?」


「したわ!私に内緒でダンジョンに行った!」


「これっ!リン!もういい加減にしなさい!」


「だって~・・・」


フ~


「別に気にすることはない。私もあると一緒にいて、お前が悪事を働くとは思えない。安心しろ!それより料理が冷めないうちに早く食べろ!」


「そうよ。アル君。料理は温かい方が美味しいんだからね。」



 美味しいはずの料理がなかなか喉を通らない。



“いざというという時は逃げればいいのよ。アルはもう誰よりも強いんだから。”


“そういうけどさ~。なんか気が重いんだよな~。”


”しっかりしなさい!“



 部屋に戻った僕はなかなか寝れなかった。こんな時は魔力切れを起こせばいいんだ。そう思って宿を抜け出して郊外に行った。そこでいろんな魔法を放ってみたが、いっこうに魔力切れを起こさない。魔力量が増えた分、簡単には魔力切れを起こさなくなっていたのだ。


 翌朝、眠れないまま朝を迎えた。領主様の屋敷にはティオも同行してくれることになった。背中の袋の中にはシロも隠れている。



「では行きますよ。」



 どんどん領主様の屋敷に近づいていく。もう逃げだしたくてもかなわない。こうなれば俎板の鯉だ。なるようになるだけだ。



「着きましたよ。」



 外からしか見たことはなかったが、さすがは領主の屋敷だ。立派なのは建物だけではない。庭もしっかり手入れされていて見事だ。ところどころに兵士の姿も見える。



「中にどうぞ。伯爵様のところにご案内します。」



 玄関も広くメイド達がなんか僕達を見ている。その場で立ち止まってお辞儀をしてきた。僕もお辞儀をした。するとメイド達がニコニコ笑って仕事に戻っていく。



コンコン



「入れ!」



 ドアを開けて驚いた。広い部屋に立派なソファーが置かれている。その奥には伯爵様の机や本棚があった。本棚には難しそうな本がぎっしりと並んでいる。何よりも驚いたのは、目の前にあのレストランの老貴族とリーデンがいたことだ。



「えっ?!どうして?」



 すると立派な紳士がティオの前で片膝をついた。



「えっ?!何?」


「お待ちしておりました。ディオール様。」


「伯爵殿。いつも言っていますが、私に堅苦しいあいさつは必要ありません。」


「ハッハッハッハッ 申し訳ありません。どうしても公爵令嬢としてみてしまいます。」



“えっ?!どういうこと?ティオさんが公爵令嬢?なにがどうなってるの?”



 立ったままで驚いている僕の前にロベルト伯爵がやってきた。僕は慌てて土下座した。



「すみません!貴族様の前で!」


「いいんだよ。そこに座ってくれたまえ。」



 ティオの顔を見ると頷いている。僕はティオの隣に腰かけた。するとリーデンが声をかけてきた。



「驚かせてごめんなさいね。アル君。」


「僕の名前を憶えてくれていたんですか?」


「当たり前よ。あなたほど真面目に掃除をしてくれた人なんていないんだから。」


「別に・・・僕は・・・仕事ですから。」



ハッハッハッハッ



 リーデンの隣に座っていた老紳士が大きな声で笑い始めた。



「どうだ?ロベルト!私の言った通りだろう!」


「はい!父上。」


「父上?」



 すると隣に座っていたティオが説明してくれた。老紳士はロベルト伯爵の父でアンドレ元伯爵だ。リーデンはアンドレの妹だった。



「この少年は伯母上と父上の言った通り、素直で真面目な少年だと分かりました。」


「ありがとうございます。」


「あのレストランでの行い、見事であった。さすがのこのわしも心を動かされたわい。君の言う通り、今の世の中はお金や地位、名誉に惑わされ過ぎておる。残念なことじゃ。」


「そうですね。貴族達も国民の生活など考えもせず派閥争いをしています。本来、彼のような人間が国政に携わるべきでしょうに。」


「そうじゃな。」



 ここでアンドレが僕とティオを見ながら言った。



「どうじゃろう。わしと一緒に王都に行ってみないか?」



”僕が王都に?どうして僕にそんなに親切にしてくれるんだろう?ティオの友人だから?“



 僕はティオの顔を見た。いつもなら僕の進むべき道を示してくれるのに、ティオは前を向いたままだ。僕自身で考えろってことかもしれない。



「僕は王都で何をすればいいんでしょうか?」


「勉強じゃよ。王立学院に行って様々なことを学ぶのじゃ。将来のためにな。」



 勉強なんて考えたこともなかった。だって僕は冒険者として生きていくつもりだし、いろんな人のお手伝いができればいいとしか思っていなかったんだから。



「僕は孤児院で育ちました。孤児院には僕のように親のいない子ども達が沢山いました。そんな子ども達を、司祭様やシスターのマリーさんはまるで父親や母親のように面倒を見てくれました。勉強している時間があるのであれば、僕は街で一人でも大勢の人達の役に立ちたいと思います。」



 これにはその場の全員が固まってしまった。予期しない返事だったのだろう。



クスクス クスクス 


 ティオが笑いながらアンドレを見た。


ハッハッハッ



「ディオール殿の言う通りじゃったな。参った参った!ここまでとはの~。よし!わしの腹は決まった!ロベルト!お前も覚悟を決めるんだ!」


「はい!父上!」



”えっ?!一体何のこと?何の覚悟?どうなってるの?“



 僕が不安そうにしているのをティオが察知したようだ。



「アル!心配しないでいいのよ!今ね、ここにいるみんながあなたのことを守るって決めたの。良かったわね。」


「僕のことを守る?どうして?僕は別に誰にも狙われてないよ。」


「そうね。アルは何も考えなくていいのよ。今まで通りでいいの。」



 みんなの前で急にティオが手をつないできた。思いっきり恥ずかしい。するとアンドレが真剣な顔で言ってきた。



「アル君。今日は呼びつけて悪かったね。じゃが、時が来たらきっとわしと王都に行ってもらうから。その時は頼むよ。」


「よくわかりませんが、こちらこそお願いします。」


ハッハッハッハッ


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