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初めての冒険者ギルド

 僕は12年間を過ごした孤児院を出た。今までは司祭様やマリーさん達に守られてきたけど、これからは自分自身の力で生きて行かなければならない。希望と不安で押しつぶされそうだ。



「俺は王都に行って騎士団に入隊するつもりだけど、アルはどうするんだ?」


「僕はナポルに行くよ。ナポルは大きな街だから冒険者ギルドもあるしね。」


「そうか~。なんか寂しいな~。どうだ?俺と一緒に王都に行って騎士団に入らないか?」


「僕には無理だよ。マイケル。君と違って僕には魔法や剣の才能がないからさ。」



 2人で歩いていると三差路に出た。右に行けば王都コペルン、左に行けばナポルの街だ。



「アル!ここでお別れだな!」


「そうだね。マイケルなら騎士団でも頑張れるよ。絶対に!」


「当たり前だ!お前は俺のことよりも自分のことを心配しろよ!」


「そうだね。」


「ハッハッハッハッ」


「じゃあ、またな。」


「うん。またね。」



 僕達はそれぞれ別の道を進み始めた。しばらく歩いていると、薄暗くなってきたので少し開けた場所で野宿することにした。魔物が心配だったので薪を集めて火をつけた。食料は干し肉だけだ。



“真っ暗だな~。やだな~。”



 生まれてこの方、野宿なんてしたこともない。恐怖と不安で落ち着かない。だが、やはり睡魔には勝てなかったようだ。若干12歳なのだから仕方がない。



“その時が来たようね。”


“誰?”



 僕の前に眩しい光の球が現れた。



“善行を施しなさい。そうすれば道が開けるわ。”


“誰?誰なの?”



 僕は飛び起きた。辺りは薄暗いが東の空の方向が明るくなり始めていた。



「な~んだ。夢か~。でも不思議な夢だったよな~。」



 しっかりと火を消して再びナポルの街に向けて歩き始めた。街が近くなったせいか、人の数が増えて来た。商人らしき人達がいれば旅人のような人もいる。たまに家族連れを見かけると少し寂しさが込み上げてきた。



「着いたぞ~!さて、冒険者ギルドに行こうかな。」



 司祭様にいただいた身分証を衛兵の人に見せて街の中に入ると、その大きさと人の多さに圧倒された。



「やっぱりナポルの街は大きいな~。領都だけのことはあるよな~。」



 門番の人に冒険者ギルドの場所を聞いて向かっていると、目の前ではしゃいでいた女の子が転んだ。



「わ~ん。痛いよ~。」



 街の人達はそのまま素通りしていく。僕は女の子のところに行って声をかけた。



「大丈夫?ちょっと見せて。」



 転んだ拍子で足にけがをしたようだ。血がにじんでいた。僕は布切れを取り出して少女の足の手当てをした。



「もう大丈夫だよ。」


「お兄ティオん。ありがとう。」



 女の子はそのまま来た方向に走って行った。



“善行ポイント10”



「えっ?!誰?」



 頭の中に声が聞こえた。僕は慌てて周りを見たが誰も僕に話しかけていない。



「不思議だな~。まあいいや。」



 大通りを冒険者ギルドに向かっていたが、道路の端に結構ゴミが落ちていた。孤児院にいた時の癖が出たのか、僕はゴミを拾いながらギルドに向かった。



“善行ポイント10”



「えっ?!」



 同じ声がまた聞こえてきた。



「なんなんだよ!なんか気持ち悪いな~。」



 すると先日見た夢を思い出した。



「確か善行を施せとか言ってたよな~。まさかな~。あれは夢だったし。でもな~。」



 そうこうしていると冒険者ギルドに到着した。中に入ると体の大きな人達や肌の露出の多い女性達がいた。それに何か酒臭い。



「おい!坊主!ギルドに何の用だ?ここはお子様の来るところじゃねぇぞ!」


「登録に来たんです。」


「登録だと~。お前みたいなガキがか?」


「はい。」



 すると冒険者風の女性が声をかけてきた。



「ゴング!お前、いい加減にしろ!この子が怖がってるじゃないか!」


「君、冒険者登録はあっちの受付だぞ。」


「ありがとうございます。」


「お前、名前はなんていうんだ?」


「アルフレッドって言います。みんなアルって呼んでます。」


「アルか。私はティオだ。また、誰かに因縁つけられたら私に言ってこい。」


「はい!」



 もしかしたらこのティオっていう女性は結構強いのかもしれない。そんなことを考えながら僕は受付に行った。



「登録をお願いします。」


「いいわよ。この紙に記入して頂戴。」



 紙には名前と魔法の属性、得意な武器を記入する欄があったが、名前だけ記入した。



「アルフレッド君ね。私はキャサリーよ。よろしくね。」


「はい。よろしくお願いします。アルって呼んでください。」


「あれ?アル君、魔法の属性と得意な武器が書いてないわよ。」



 やっぱり聞かれた。なんか魔法が使えないことを言いづらい。



「あの~、僕~、魔力がないんです。」


「魔力がない?!」



 近くにいた冒険者達にもキャサリーの声が聞こえたようだ。みんな僕のことを可哀そうな目で見ている。



「はい。武器も使ったことがないので・・・・」


「そうなのね。ごめんなさいね。」


「大丈夫です。でも、魔力がないと冒険者になれませんか?」


「そんなことはないけど、でも、できる仕事は限定されるわよ。」


「構いません。」


「じゃあ、アル君はGランクだから向こうの掲示板に行ってGって書かれた紙を持ってきてくれる。」


「わかりました。」


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