魔眼
オーク討伐を終えた僕達は街に戻ることにした。その途中でいつもの声が聞こえた。
“善行ポイント300 規定に達しましたので魔眼を獲得しました。”
“魔眼?なんのことかな~?”
“魔眼は自分や相手の能力を見ることができるわ。試しに見てごらん。”
シロを見るとやっぱり僕を見ている。気のせいじゃない。やっぱりシロが話しかけてきているんだ。
“今までの声はシロが話していたの?”
“全部じゃないわよ。私はアルの成長のためのお手伝いをしているだけ。”
“そうなんだ~。いつもありがとうね。シロ。”
“いいのよ。”
僕はティオを魔眼で見てみた。すると、僕の頭の中にティオの能力が次々に表示されていく。
『剣術280、魔力250、戦闘力500』
僕はどうなんだろう。
『剣術10、魔力30、戦闘力35』
こうなってくると他の人達の能力も気になる。帰る途中、みんなの能力を確認した。そしてわかったことがある。剣を得意とする人達の剣術の平均は80程度であり、魔法を得意とする人達の魔力は平均して70程度だ。そして平均的な戦闘力は100程度だった。そうしてみると、ティオの能力はかなり高く、逆に僕の能力はかなり低い。自信喪失だ。
「どうかしたのか?アル。」
「いいえ。別に。やっぱりティオさんは凄いですね。」
「キングに勝てたのはお前のおかげだ。アル。お前が魔石の位置を教えてくれたからだ。」
まさかシロが教えてくれたとは言えない。
「だがどうして知っていたんだ?」
「この前、図書館で読んだんです。」
「そうだったのか。」
僕達がギルドに戻った。それぞれ報酬を受け取ったが、オークを討伐していない僕は銀貨5枚だけもらった。ティオはオークキングを倒したことが評価されたせいか金貨1枚だ。
「アル!明日、お前の剣を買いに行くか?」
「僕、剣を買うほどお金を持ってませんよ。」
「キングを倒せたのはお前のおかげだ。この金貨はお前のものだ。」
「ティオさんの言葉は嬉しいですけど、やっぱりそれは受け取れません。僕は自分の力でキングを倒せるようになったら自分で買います。」
「そうか。わかった。なら、明日からまた修行だな。」
「はい。」
その日は宿屋に戻って晩御飯を食べてる間に眠気に襲われた。よほど疲れていたのだろう。自分で気が付かないうちに眠ってしまったようだ。
「あらあら、アル君はよほど疲れているのね。」
「すまない。リリーさん。彼は私が部屋まで運ぶよ。」
僕はティオにベッドまで運ばれたようだ。僕は寝ていて気が付かなかったが、ティオが僕の服をめくって背中のあざを確認したようだ。僕の背中には星形の形をしたあざがあるのだ。
“やっぱりな。見間違いじゃなかったようだ。アル、君は・・・”
翌朝、いつもの通りシロが顔をなめてきた。
「ん~。シロ~、くすぐったいよ。」
ワン!
目が覚めてかなり焦った。自分でベッドに来た記憶がなかったからだ。慌てて一回の食堂に行くと、すでにティオの姿があった。
「あの~、僕、昨日~」
「ああ、よほど疲れてたんだな。私がベッドに運んだんだ。」
「ごめんなさい。ティオさん。」
「いいさ。それより早く食べろ!今日からまた訓練をするからな!」
それから日中はティオの訓練を受け、夜にはシロの指導の下で魔法の練習をした。その間、空いている時間にはギルドの依頼を受けて家の掃除や街の清掃を行った。
『善行ポイント30』
『善行ポイント50』
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『規定に達しましたので戦闘力が向上しました。』
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『規定に達しましたので戦闘力が向上しました。』
気付いてみれば僕の能力は以前と比べものにならない程にレベルアップしていた。
「剣術60、魔力50、戦闘力100か~。人並みには力が付いた気がする。なんか嬉しいな~。」
僕の成長をティオも感じ取っているようだった。
「アル!お前、めっきり力が付いたな。これならダンジョンに行っても大丈夫だろう。」
「えっ?!ダンジョンですか?」
「ああ、そうだ。隣街にあるダンジョンに行って実践訓練するぞ!」
そして翌朝、僕は食堂でティオとダンジョンについて話をしていた。するとリンが聞いていたらしく話しかけてきた。
「アル君、ダンジョンに行くの?」
「うん。ティオさんとね。」
「なら当分ここには帰ってこないんだね?」
「なんだい、なんだい。リン!あんた、アル君がいないと寂しいのかい!」
「違うもん。」
リンが顔を真っ赤にして厨房の中に入っていった。食事が終わって僕達は隣町ミランに向かうことにした。ダンジョンに入るにはEランク以上でないとは入れない。僕はオークの討伐に加わったことからEランクになっていたのだ。
「アル!ミランについたら食料品を買いに行くぞ!」
「食料品ですか?」
「ああ、そうだ。ミランのダンジョンは50階層まである。今回は5階層までが目標だ。」
「ティオさんは行ったことがあるんですか?」
「まあな。私も40階層までしか行けてないがな。」
「ティオさんでも制覇できないんですか?」
「下層に行くにしたがって魔物が強くなるのさ。40階層までいくとオークキング並みの魔物がうじゃうじゃといるんだ。」
なんか血の気が引いていくのが分かった。僕がダンジョンに行って大丈夫なんだろうか。
「さあ、もうすぐミランの街だ。」
体の小さなシロは僕が背負っているバッグの中にいる。どうやら安心して眠っているようだ。