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別れと再会

 ティオと一緒に郊外の西の湖でジャイアントフラッグを討伐した僕はFランクに昇級した。



「ティオさん。以前聞いたけど、魔法について書かれている本を読んでみたいんです。どこに行けば読めるか教えてくれませんか?」



 どうやら僕が真剣だと分かったのだろう。



「わかった。なら、図書館に行こうか。あそこなら魔法の本もあるだろう。」


「ありがとうございます。」



 僕はティオと一緒に図書館に来た。図書館は領主である伯爵様の屋敷のすぐ隣だった。僕が魔法の本を読み始めると、ティオは夕方迎えに来ると言ってどこかに行ってしまった。


 魔法の本を読み始めたのだが、どの本を読んでもあまりピンとこなかった。確かに各属性魔法の特性について書かれていたが、どうしても腑に落ちないでいた。



“『魔法は想像の具現化』なら、属性とか関係ないんじゃないかな~。むしろどれだけ想像力があるかの方が大事なような気がするんだけどな~。”



 ただ、本を読み終わってわかったこともある。どんな魔法が使えるかは魔力量が重要だということだ。今の僕にはすべての魔法を使えるだけの魔力はない。



「この前まで魔法が使えないとか言って諦めていたのにな~。まさか、この僕が魔法を勉強するなんて不思議だな~。」



 ティオが迎えに来たので一緒に宿屋に戻った。リンと留守番をしていたシロが尻尾を激しく振って僕に向かってジャンプしてきた。



ク~ン ク~ン ペロペロ



「やめろよ。シロ!くすぐったいだろ!」



 僕とシロの様子を羨ましそうにリンが見ていた。



「やっぱりシロちゃんはアル君の方が好きみたい。」


「仕方ないよ。シロとはずっと一緒にいるんだから。」



 そしてその日の夜から僕は郊外の人気のない場所に行って魔法の練習を始めた。



『出でよ。炎。』


『出でよ。水の玉。』



 最初は戸惑ったが、徐々に魔法が体に馴染んできた。まだ強力な魔法は使えないが、ゴブリン相手なら十分だろう。



「シロ!僕、魔法が使えるようになったよ!なんか夢を見てるみたいだ!」


ワン!ワン!ワン!


「もっともっと訓練していろんな魔法が使えるようになりたいな~。そうしたらきっと困ってる人達も助けられるかもしれないしね。一緒に頑張ろうね。シロ。」


ワン!



 シロも尻尾を大きく振って喜んでるみたいだった。そして翌日、ティオと一緒に朝食をとっているとアリスと両親がやってきた。どうやら父親が王都から帰ってきたようだ。



「その節は妻とアリスがお世話になったようでありがとうございました。」


「いいえ。僕はヒール草を分けてあげたくらいで何もしてませんよ。」


「そのヒール草のお陰で私もすっかり良くなったんです。アル君には感謝してるんですよ。」



 なんか人の役に立てたことが物凄く嬉しかった。両親の隣にいたアリスの表情が少しくらい。



「アリス!アル君にちゃんと挨拶をしなさい。」


「うん。」



 アリスが悲しそうな声で言ってきた。



「アル君。私、お父さん達と王都に行くんだ。だから今日でお別れなの。」


「どういうこと?」



 すると父親が説明してくれた。



「王都で店を構えることになったんですよ。だから、妻とアリスと一緒に王都で暮らすことにしたんですよ。」


「そうなんですね。おめでとうございます。」


「ありがとう。」



 シロも耳が下がっている。きっと悲しいんだろう。僕はアリスのところに行って手を取った。



「また会えるよ。王都には僕の友達、いや兄弟がいるんだ。マイケルって言ってすごく強いんだよ。恐らく今頃は騎士団の見習いぐらいにはなってると思うよ。僕もいつかは王都に行ってみようと思ってるし。」


「本当?アル君も王都に来るの?」


「まあ、いつになるかはわからないけどね。でもきっといつかは行くと思うよ。」


「わかった。なら、アル君が王都に来るのを待ってるね。」



 暗かったアリスの顔に笑顔が戻った。そしてアリス親子は深々と頭を下げて帰って行った。



「アル。お前、王都に行きたいのか?」


「はい。でも、まだこの街にいるつもりですよ。だってティオさんの修行がまだ終わっていませんから。」


「そうだな。(まだアルを王都に連れて行くのは早いな。)」


「えっ?!何か言いました?」


「いや何でもないさ。それよりギルドに行くぞ!早く用意しろ!」

 


 それから僕達はいつものようにギルドに行った。ギルド内が何やら騒がしい。



「キャサリーさん。何かあったんですか?」


「アル君。ティオさん。実はね。東の森にオークが巣を作ったみたいなのよ。それで討伐隊を編成してるところなの。」



 僕はティオの顔を見た。ティオも頷いている。



「僕も参加したいんですけど。」



 すると外から声が聞こえてきた。



「アル!お前死にたいのか!お前には無理だ!」



 聞き覚えのある声だ。声のする方を見るとそこには『鷹の爪』のメンバー達がいた。



「ジンさん!お久しぶりです。」



 するとメアリーさんがいきなり僕を抱きしめてきた。大きな胸で息ができない。



「く、く、苦しいです!」


「メアリー!アルが苦しがってるわよ。その辺にしなさい。」


「いいじゃない。サリナ。アルに会うのは久しぶりなんだから。」



 僕達の様子をティオが苦い顔をしてみていた。



「ジン、今のアルは結構強いぞ!それにいざという時は私が付いている。安心しろ!」


「ティオか?!もしかしてアル!お前、ティオに鍛えられていたのか?」


「はい。ティオさんにいろいろ教わっています。」



 するとジョニーがいきなり僕に殴り掛かった。今までならそのまま殴られていただろうが、ジョニーの動きがはっきりと見える。僕は後ろに下がって避けた。



「何するんですか?ジョニーさん。」


「なるほどな。ティオの言う通りかもしれんな。どうやら孤児院にいた時とは少し違うようだ。」



 すると今度はサリナが僕を抱きしめてきた。やっぱり苦しい。



「すごい!すごい!ジョニーの攻撃をかわすなんて!あれだけ訓練を嫌がっていたのに頑張ったのね。」



 するとジンが少し悲しそうに言った。



「アルは真面目だし努力家だ。それは俺も認めるさ。でも、アルの能力には限界があるんだ。こいつは生まれつき魔法が使えないんだから。」


「ジン!魔法が使えないことがそんなにダメなことか?現にアルは魔法を使わずにジャイアントフラッグを倒したんだぞ!」


「ジャイアントフラッグをか?!」


「ああ、そうさ。」


「あのアルがね~。信じられないがティオが言うんだ。間違いないだろうな。」



 するとジョニーが言った。



「ジン!いいじゃないか。俺達だって討伐隊に参加するんだし、いざとなったらみんなで守ってやるさ。」


「そうだな。」



 討伐隊に加わったのは総勢30人の冒険者達だ。鷹の爪のメンバー4人とティオがAランク、それ以外にゴングをはじめとするBランクが10名、Cランクが10名、Dランク以下が5名だ。



「アル!いいか、私の近くを離れるんじゃないぞ!」


「はい!」



 ギルド職員達に見送られて僕達は東の森に向かった。


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