ジョブを与えられるヒーロー
豪と4人の高校生たちは、聖女リリアンに導かれ、神から与えられる「ジョブ」を確認するための神聖な場所へと向かっていた。途中、互いに簡単な自己紹介を交わしながら、少しずつ緊張をほぐしていく。
「僕は篠崎陽翔。普通の高校生だけど、生徒会副会長をやってて、まとめ役とかは得意ですね。こんな状況だけど、みんなで協力して乗り越えましょう。」
陽翔の穏やかで冷静な言葉に、4人は少し安心した様子を見せる。
「鷹野莉奈。陸上部で中距離の選手だった。後は勉強も好きね。まあ、こんな異世界じゃあんまり役に立たないかもしれないけど……やれることはやるわ。」
莉奈の自信に満ちた態度に、直人が感心したように笑う。
「俺は大友直人!野球部のキャプテンだったんだ。力仕事は任せてくれ。どんなモンスターが来てもぶっ飛ばしてやるよ!」
豪快に笑う直人に、一同の緊張が少し解ける。
「藤崎美桜……です。特技とかはないけど、みんなの邪魔をしないように頑張ります。」
控えめながらも優しげな雰囲気を醸し出す美桜に、直人が「俺たちみんなで助け合えば大丈夫だよ!」と声をかける。
最後に豪の番になると、全員の視線が自然と彼に集まった。
「俺は神宮寺豪。ただの社会人だよ。まあ、これまでに色々あって、場数を踏んでるだけさ。」
豪は穏やかに答えるが、その裏で自分の真実を話すわけにはいかないと考えていた。
その時、莉奈がふと疑問を口にした。
「ねえ、そういえば……なんでこんな異世界で言葉が通じてるの?普通、言語とか違うはずよね?」
「確かにそうだな。」豪が腕を組み、考え込む。
「異世界なら言葉が違って当たり前だ。でも、多分神とやらが俺たちをここに送る時に、何かしたんだろうな。翻訳みたいなもんだ。」
「神様便利だな。」直人が冗談めかして笑い、陽翔も苦笑いを浮かべる。
しばらく会話を続けながら移動していると、リリアンが立ち止まり、振り返った。
「皆さま、目的地に到着いたしました。」
目の前には荘厳な宗教建築が立ち並び、内部は神秘的な光に包まれていた。高い天井にステンドグラスが輝き、中央の祭壇には淡い光を放つ珠が置かれている。リリアンは静かに説明を始めた。
「ここは、神から皆さまの適性に応じたジョブを授けられる場所です。この珠に触れることで、それぞれのジョブが明らかになります。どうか順番に試してみてください。」
陽翔が最初に一歩前へ進み、祭壇の珠に手を触れる。珠が青白い光を放ち始め、浮かび上がった文字が「聖騎士」だった。
「聖騎士……。守ることがメインなのかな。」
陽翔はその結果を静かに受け入れる。リリアンは彼に向かって微笑みかけた。
「聖騎士は防御と治癒の力に優れたジョブです。あなたの冷静さとリーダーシップにぴったりの役割でしょう。」
次に莉奈が前に出る。珠が赤紫の光を放ち、「魔導士」の文字が浮かび上がった。
「魔導士……魔法使いってことね。」
莉奈は頷きながらもどこか納得している様子だった。リリアンが説明を加える。
「魔導士は攻撃魔法を得意とし、遠距離から強力な力を発揮するジョブです。知性と直感を併せ持つあなたに最適だと思います。」
続いて直人が祭壇に手を伸ばす。珠は力強い金色の光を放ち、「闘技士」の文字が浮かび上がった。
「闘技士!?かっこいいじゃん!これ絶対強いやつだろ!」
直人は大喜びし、拳を握って構える。リリアンも笑顔で説明を続けた。
「闘技士は格闘技術に優れ、敏捷性と攻撃力を兼ね備えたジョブです。ありとあらゆる武器を使え戦闘で真価を発揮します。」
次に美桜が珠に触れると、珠は柔らかな緑色の光を放ち、「癒し手」の文字が浮かび上がった。
「癒し手……私に合ってるのかな。」
不安そうな美桜に、リリアンは優しく頷いた。
「癒し手は、仲間の傷を癒し、戦いを支える大切な役割です。あなたの優しさは、このジョブにふさわしいものです。」
最後に豪が前に出た。珠に触れると、それまでとは異なる黒い光があふれ出し、しばらく揺れた後、「戦士」という文字が浮かび上がった。
「戦士か。」豪が呟くと、リリアンが驚いたように言った。
「戦士は、高い攻撃力と防御力を持ったジョブです。強い体を持つあなたにふさわしい選択なのでしょう。」
豪はその言葉に内心驚きつつも、表情を崩さなかった。
(どうやらナノマシーンは反映されなかったな。少し安心した。)
こうして5人それぞれのジョブが決まり、彼らは新たな力を手に入れる第一歩を踏み出したのだった。