選ばれし異界の救世主たちとナノマシンのヒーロー
豪が神の空間を抜けると、そこは壮麗な大広間のような場所だった。周囲は白い大理石の柱が連なり、光を反射して神秘的な雰囲気を醸し出している。だが、豪の目を引いたのは、そこに立つ数人の人影だった。
ローブをまとい顔を隠した男たちが無言で立ち並び、その中心には洋風の衣装を纏った一人の少女がいた。金色の髪が光を受けて輝き、青い瞳が真剣な眼差しを帯びている。豪が周囲を見渡すと、自分と同じ日本人らしき高校生くらいの男女が4人立ち尽くしていた。制服姿の彼らは明らかに混乱している。
少女は一歩前に進み、優雅に頭を下げた。
「異世界の方々、よくぞこの地に来てくださいました。突然お呼びしてしまい、大変申し訳ありません。」
柔らかい声だが、どこか張り詰めた空気をまとっている。
豪はその言葉を静かに受け止めたが、背後から聞こえた声に視線を向ける。高校生たちが明らかに動揺している。
「ちょ、ちょっと待って!これはどういうことですか!?」
短髪の男子が声を荒げた。
「そうよ!私たちはただ学校にいたはずなのに……いきなりこんなところに連れてこられるなんて!」
隣のロングヘアの女子も困惑した表情を浮かべている。
その場がざわつき始める中、一人の美少年が手を上げた。彼の整った顔立ちは冷静そのもので、柔らかな声が場を包む。
「皆さん、少し落ち着いてください。まずは状況を整理しましょう。」
その言葉に、高校生たちは一瞬言葉を飲み込んだ。その少年の落ち着きぶりと存在感に、豪も感嘆の思いを抱く。
「なるほどな、こういう場でも冷静でいられるやつがいるのか……」
豪は少年を一瞥しながら、すぐに視線を少女へと戻した。
少女は美少年にうっとりとした目を向けていたが、場の空気を読み取り、改めて口を開いた。
「まず、この場にお呼びした理由を説明いたします。この世界は今、魔王の侵略によって破滅の危機に瀕しています。魔王軍は日増しに勢力を広げ、人々の暮らしを脅かしています……。そこで、神託により選ばれた皆さまを異世界からお呼びしました。」
「選ばれたって、そんな勝手に……」
ロングヘアの女子がまだ納得できない様子で言うが、少女は微笑みながら続けた。
「もちろん、皆さまに無理強いをするつもりはありません。ただ、あなた方の持つ力がこの世界にとって希望なのです。そして――」
少女の視線が豪に向けられた。
「そちらの方も、特別な力を持つ方と神から聞いております。この世界を救うため、皆さまの力をお貸しいただけないでしょうか?」
豪はじっと少女を見据え、静かに周囲の状況を観察する。
「……どうやら、この高校生たちも別の方法でここに呼ばれたらしいな。俺とは違うやり方で。」
彼の心の中で、戦士としての本能が働いていた。
「まずは話を聞こう。」豪は冷静な声でそう言うと、一同の視線が彼に集まる。
少女は安堵したように頷き、さらに詳しい説明を始めた。こうして、異世界での新たな物語が動き出そうとしていた。