夏前期〜学校見学〜
咲き誇った薄紅色の桜が散り、やがて青々とした深緑が新たな季節の訪れを告げた頃。交流を深め順調に距離が近づきつつあった役者のメンバーたちはとある私立高校の教室へと集められていた。
成十「わあ…、ここが映画の舞台になる教室なんだよね?なんか緊張する〜っ…!」
夏目「ここに来たのは春の撮影以来、ですよね。とはいえ校舎自体に入るのはほとんど無かったような。」
あきら「前回はどうしても撮りたい外の描写だけ、という話だったね。」
おかゆ「ウチ学校入ってみたかったんだよね〜っ!これぞ教室〜って感じっしょ!」
宗光「だよな!でもこの学校はアレだ、白い?輝いている?っつーか…」
心理「ほんまにきれいな校舎やねぇ。もしかして新築やろか?」
鱫史「ああ、数年前に開校したばかりの校舎でね。今回は撮影のために是非、と貸してもらったんだ。ここにも夜詩が一役買っていてね、なんでも___」
夜詩「さて。そういうわけでこれから本格的な映画の撮影を始めていこうという訳だけど。丁度夏服が届いたことだし、夏服の試着を兼ねて1回校舎を回ってみようというのが今回の趣旨だね」
爽やかな笑顔で鱫史の言葉を遮る夜詩に皆が顔を見合せ、感嘆の声を漏らす。
駿平「ヒュ〜、相変わらず流石のスルースキルだね〜ぁ。そのクールさに痺れる憧れるゥ〜的な感じぃ?」
成十「なるほど〜…クールさが魅力に繋がるんだね〜…確かによしぽんもクールな感じがかっこいいもんね…!」
礼之「俺の場合クールっていうかただの人見知りだけどな…」
成十「そんなことないと思うよ!うーん、クールかあ…僕もできるかな?」
礼之「成十とは大分キャラ離れてるし…やめた方がいんじゃない?」
心理「成十くんが涼しい顔で振る舞うたらなんだかえらい可愛らしなりそうやなぁ」
どくだみ「それで、衣装はここに並んでいるものを着ればいいんですよね?」
おかゆ「はいはーい!ウチは〜…ってあれぇ?なんか聞いてたよりジョシの制服多くない!?これどゆこと?」
美弧「ほんとね…!ふたつも余計にあるみたい…これはお姉さんで、これはココロちゃん…」
夏目「見間違えでなければこの包みはクラシキナツメサマで、あれはカギワタオカユサマって書いてあるように見えるな…」
おかゆ「クラシキナツメとカギワタオカユ…ってえ〜!?もしかしなくてもウチら!?どっこと!?」
あきら「成程。おかゆ君と蔵識さんも女性役か。同じ女生徒役同士、頑張ろう」
どくだみ「あっさり受け入れて握手求めてますけど本人たちは思っても見てない様子ですね」
宗光「なっ、どっ、どういうことだ…すか!?」
自分の事のように動揺した様子の宗光に問いかけられると、変わらず涼しい顔をしたままの夜詩がおかしげに笑いつつも種明かしを行う。
夜詩「ああ、うん。これはね、女生徒役をせっかく立候補してもらったんだけど鍵綿くんと蔵識くんは身長面において候補から外れてしまったからね。でもせっかくだし1回は見てみたいなあと思って用意してもらったんだ。」
礼之「せっかくだしって…え、そういうノリでつくるもんなんですか?」
鱫史「細かいところにも気が回って流石夜詩だな!その行動力も素晴らしいね!」
礼之「立候補しないでよかった…」
心理「おかゆくん、立候補しとったん?初耳やけどきっと可愛いやろねぇ。礼之くんの女装姿もなんや気になるわぁ」
おかゆ「ええー!?ウチオトコなんだけど!?似合わないっしょ!」
夏目「まあ…確かに1度志願はしましたが、まさかここで伏線回収されるとは。そういうことであれば1度、着てみようかな」
宗光「お、おかゆとなっちゃんが…ふ、フン!まあ、いいんじゃないか?俺ほどじゃないが似合うと思うぞ!」
おかゆ「え!?むねみつクンも着るの!?」
宗光「!?そうは言ってない!ただ…似合うと思う…と言いたかっただけで…ゴニョゴニョ…」
礼之「ん。俺も同意。ま、1回着てみたら?」
おかゆ「まあみんなが言うならお試しで着てみよっかなー!?カワイイって言わせちゃうから覚悟しててね〜♪」
夏目とおかゆが乗り気になったところで、1度散開して着替えをするように命じられる。どうやらメイクさんも手配していたようで、本格的な衣装合わせがはじまるのだった。
*****
あきら「む。最速を狙って着替えたつもりだったけど、1歩届かなかったな」
礼之「まあ、俺の場合ほぼ着替えるだけなんで。ちゃちゃっと鏡みて整える程度でヘアメイクも特にないですし」
あきら「成程。性別の垣根を超えた変身には時間が必要というのはありそうだな」
どくだみ「ああ、まだおふたりだけでしたか。女性陣はまだ時間がかかりそうですね。…ところで水トさんのもっているそれは…」
礼之「あー、ゲームです。暇つぶしに開こうかと。…おふたりもやってみます?」
あきら「ゲーム、いいね。何があるの?」
礼之「んー、王道でいえばゼ○ダにマ○オカート、ポケ○ンとか」
どくだみ「ああ、ポ○モンいいですよね。俺も一時期ハマってました。厳選個体パーティ組んだりとか」
あきら「そうなんだ。私はあまり詳しくないから興味深いね。ソフト、お借りしても?」
興味を引かれた様子のあきらが礼之から借りた本体に某モンスターのソフトを差し込む。画面にオープニングが映し出される頃、続々と他のメンバーたちも準備が整ったようで教室に集まり出した。
駿介「ぁみんな集まってた感じ〜?ぉれも参加しとけばよかったかな〜」
夜詩「酒くさっ…ねえ、天使くん。もしかしてお酒持ち込んでたのかな?」
駿平「ぇ〜?知りたい〜?」
美弧「もう、ここは未成年の子供たちの通う学舎なんだからお酒は程々によ?差し入れも用意してるし!…私も飲みたいし!」
心理「そうやなぁ。未成年のコもいるわけやから、程々になぁ。」
宗光「フン、俺は海より寛大な心を持っているから気にしないけどな!」
駿平「え〜やったぁ、差し入れ楽しみにしてまーす!」
夏目「おっと、奇遇だな。俺も丁度昼時にかかるからと思って軽く作ってきたんですよ。」
おかゆ「マジ?じゃあさ〜最後はどっかでパーティしよ!撮影がんばろー会ってコトで!いいっしょ?」
成十「それいいね!…あ、2人も着替え終わったんだ。すっごく似合ってるね…!」
あきら「うん。2人とも最高に似合うと思う。もう、これは女装の申し子と呼んでいいレベル」
夏目「はは、そう正面切って言われると照れるものがあるね」
おかゆ「あーもう、恥ずかしいなァ…そんなジロジロ見ないでよねっ、エッチ〜」
そう言いながらもノリノリに決めポーズをしてみせるおかゆ。なんだかんだ悪い気はしないらしい。全員が揃ったことを確認すると、夜詩はゆっくりと口を開いた。
夜詩「これで全員揃ったね。じゃあ早速校内見学ツアーをしようか」
鱫史「あ、ちなみにここが最も舞台に使われる予定の教室だ!当日の撮影にはモブの生徒たちも来る予定だけど君たちは気にせず、とくと輝いてくれて構わないからね!特に夜詩!」
夜詩「エキストラね。まあ、俺は当然全力で舞台に挑むけど」
心理「そうやなぁ。うちもココロちゃんとしての輝きをぎょうさんの人に見せつけたいやさかい、頑張ろう思てるわぁ」
礼之「お、気が合うね。俺も色んな人の視線を釘付けにできるようなすごい役者になりたいからさ、勝負しよーよ、心理ちゃん」
心理「ふふ、ええよぉ。腕がなるわぁ。負けへんからなぁ」
宗光「俺もだ!俺もあの!鷹司として誰よりも光り輝いてみせる!」
成十「わあ…みんな気合いバッチリって感じだね…!僕も負けてられないな!」
夏目「ところで…、さっきから気になっていたんですが、その黒板は…?」
夏目の言葉で一斉に視線が黒板に向かう。鱫史がチョークでリアルタッチな絵柄でサメを書き上げたところだった。
鱫史「ん?サメだよ!かっこいいだろう!」
あきら「とさめだからサメ…か。自画像のようなものだね」
鱫史「ああそうだ。ほら、君たちも書いてみるといいよ!」
駿平「え〜?学校見学行くんじゃなかったぁ?まぁぉれはなんでもいいけどぉ」
夏目「駿平さんもなんか書きます?」
駿平「ぁそうすね〜、昨日飲んだ地酒の酒瓶とかならまぁ〜かけるかな?って感じす。ぁれがまー絶品でぇ!」
夏目「お、いいですね。それなら俺はツマミになりそうなものでも…」
鱫史「チッチッチッチ、1番に描いたのが動物なら後の人は合わせていくものだろう?動物限定だよ!」
夜詩「別に決まっては無いと思うけどね。まあでも教室の黒板に酒瓶描いても…ね?」
夏目「残念。じゃあまたの機会にしましょう」
駿平「うぃ〜」
おかゆ「じゃあウチはゴン太郎書いちゃお〜っと」
宗光「そのキツネ、名前あったんだな…」
礼之「黒板に書かれたゴン太郎もまた味があるね」
あきら「それでは私は僭越ながら飼い犬のイラストでも描こうかな」
美弧「わ、すごい手さばきだね…!描くのも早いんだね…!」
夏目「本当ですね。流石はやてさん。」
どくだみ「動物が増えて動物園っぽくなってきましたね…」
心理「じゃあうちは可愛らしい鳥さんでも描いとこかなぁ。お空を飛んでるから高いとこがいいやろか?」
成十「わ、背伸びすると危ないよー?気をつけてね?」
心理「ふふ、頑張るわぁ」
宗光「俺は気高きライオンを描くぞ!!何故って?それは勿論、俺のように格好いいからだっ!」
宗光は本人なりの本気でもってライオンを描きあげると、その周りに格好良さを強調するようなキラキラマークを装飾する。出来上がるとドヤ顔をしてみせる。
宗光「どうだ!」
どくだみ「これはまた可愛らしいライオンですね。確かに鷹司さんらしい気がします」
宗光「そうだろうそうだろう!…ん?褒めてるんだよな?」
夜詩「ぷっ…はは。宗光くんはいい絵を描くんだね。新発見だな」
宗光「そう、っすかね?俺はなんでもできるんで、このぐらい朝飯前っす」
他のメンバーもチョークを手に取ると落書きをし始め、気づけば黒板中に色とりどりの絵が書き込まれているのだった。
*****
夜詩「_____ここは見ての通り体育館だね。今日は貸切だけど、普段は休日も部活の生徒たちで賑わっているよ」
教室に始まり、図書館や保健室、家庭科室に理科室と色んな教室を覗いて回っていたメンバーが、次に辿り着いたのは体育館だった。
成十「なんだか懐かしいね!高校時代を思い出すなあ」
美弧「うんうん、体育の授業とか部活とか、青春!って感じよね!」
おかゆ「みこねぇも部活やってたん?なんか運動部とかやってそー!ど?アタリ!?」
駿平「ぁ〜、ぉれアレ嫌いだったっすね〜、なんだっけ?あの、てんてんてんてん♪って走るヤツ〜。音がでかいしなんか急かされてる感じするし〜」
心理「シャトルランやない?うちもあれ苦手やわぁ」
あきら「懐かしい。シャトルランではあまりの速さで何回もやり直ししたな」
夏目「えっ、どういうことですか?」
どくだみ「シャトルランでやり直し…次の音が鳴る前に走り出してしまう、とかでしょうか?」
あきら「そう。気づくと往復してみんなに追いついていたね」
鱫史「はは、それは面白いねえ!」
思い思いの体育館トークに花を咲かせていると、ふと礼之が体育館の片隅に置かれたボールに目を止める。
礼之「あ、バスケ」
心理「うん?礼之くんバスケ好きなん?」
礼之「まあ…結構好きかな。趣味って感じ?」
美弧「そうなんだー、ちょっと見てみたいかも!」
おかゆ「ウチもー!バスケってあれっしょ?ダーンってしてシュート!」
駿平「ぁはーい、ぉれもできるよ〜役でもバスケ少年だしね〜」
夜詩「どくだみくんも出来そうだね、バスケ。仕事で体操してたくらいだし」
どくだみ「まあ、人並み程度には。専門ではありませんが」
駿平「ぁじゃあ〜、勝負してみるぅ?ぉれも役でやる前に練習したいし〜」
礼之「勝負って…3人でってこと?誰かもう1人ぐらいいないと2:1になるんじゃ…」
どくだみ「と言っても、他の方々はすっかり観戦モードですよ」
誰かを呼ぼうと周りを見回すも、メンバーたちは皆既にすっかり観戦モードで遠巻きに座っている。
美弧「お姉さんスコアボードの係とかしちゃおうかな?頑張ってねっ!」
駿平「だって〜。どぉするぅ?」
礼之「…まあ、ほんのお遊びだからいいか。チームはじゃんけんで決めます?」
どくだみ「いいですよ」
じゃんけんの結果、どくだみと駿平対礼之の対戦カードが決まる。鱫史がどこかから調達してきたホイッスルの音を合図に、一斉に走り出す。
礼之「…っふ、長引けば長引くほどこっちの不利だし、早めにカタをつける…っ」
夜詩「…へえ。趣味でやっていたと言うだけあってボール運びが上手いね。ドリブルが安定してる」
心理「気張ってな〜」
駿平「どくだみさん、ぉれこっちから回りこんどきますね〜」
どくだみ「了解です」
成十「2人は流石の運動神経だね…!体操のお兄さんとヒーローだもんね」
夜詩「よくまああれだけアルコール漬けで身体が動くなとは思うけど、これからバスケのシーンが入っても問題はなさそうだね」
鱫史「お酒が入っていてなおこれだけ動けるんだ、才能を感じるね!」
美弧「すごいわよねー!お姉さんもジムに通って動けるようにしてるけど、ここまではできないもの!」
2人に対して礼之も善戦をするが、次第に人数差に押される形で防戦中心に変わっていく。礼之はぐっと苦虫を噛み潰したような表情をしながら汗を拭った。
礼之「はぁ、やっぱ2:1は無理ゲーでしょ…!」
美弧「礼之くん、頑張って〜!」
大きなホイッスルの音を合図に試合が終了する。結果は善戦むなしく駿平とどくだみの勝利となったが、健闘を称えるように拍手で迎えられるのだった。
美弧「3人ともお疲れ様っ!タオルと冷たいドリンクよっ」
どくだみ「ありがとうごさいます。わざわざすみません」
礼之「どうも。…はあ、タバコ吸いたい…」
夜詩「ここ、禁煙ね」
礼之「ですよね…」
成十「よしぽんお疲れ様…!バスケ、格好良かったよ!」
礼之「成十もバスケできるんだから一緒にやってくれればよかったのに…」
成十「確かに!!ごめんごめん、次はぜーったい一緒に戦うね!」
礼之「ん」
宗光「3人ともいい戦いだったぞ!俺が言うんだから間違いない!試合の最後は握手で終わるんだろう、見届けてやる!」
礼之「え、それどこのスポコン漫画の常識?」
夜詩「ふはっ、いーじゃん。互いの健闘を称えて?仲良く握手して終わりにしよう。社長命令ね」
どくだみ「ということだそうです。汗ばんでたらすみません」
駿平「ぁえ〜、ぉつぉつでした〜!またしましょ〜ねぇ」
礼之「はい、お疲れ様でした…?」
両手で握手に答える礼之にうんうん、と満足そうに頷く宗光。バスケの対戦でますます友情も深まったようだ。
*****
おかゆ「わーい屋上だー!!空がちょい近く見えてテンション上がんねっ!」
美弧「うんうんっ!こんなお天気だと余計に気持ちいいわよね!」
成十「夏と言ってもまだあったかいくらいだし、日向ぼっこしたくなっちゃうよねぇ」
駿平「ぁ〜、いっすね〜、そこに焼酎の1瓶でもあると更にさいこぉで〜」
夜詩「校内は禁酒禁煙。」
礼之「それ俺にも言ってます?」
夏目「日向ぼっこ、いいですね。今度みんなでピクニックとかどうですか?」
美弧「賛成!お姉さんも準備張り切っちゃうんだからっ」
鱫史「ピクニックかあ。夜詩はどう?興味あるかな?ああもちろん、二人きりでも俺は構わないよ!」
夜詩「俺は構う。…まあ、でもいいんじゃない?この企画においてはプライベートでの友好関係から得た経験が大事な要素となるわけだしね」
美弧「ふふっ、社長さんの承諾も得られたことだし、いつか絶対みんなで行きましょうっ!約束ね!」
おかゆ「あはは〜、もちいいよ!でも忘れてたらゴメーン!」
心理「そうやなぁ。こぉゆぅ約束て時間経つと曖昧になるし早めに日程合わせたいなあ」
駿平「んぁー、わかるわかる、ぉれも素面の時にもっかい言ってくんない?」
夜詩「ハイハイ。日程はこっちで調整しとく。耳引っ張ってでも連れてくから心配しなくていいよ」
夏目「さて、せっかくですから今はピクニックではありませんがここで昼食?というか決起会にしませんか?」
おかゆ「これからガンバロー!の会ってコト!?やるやるー!ウチりんごジュースがいい!」
宗光「俺もりんごジュースだ!…ところでご飯にピーマンとナスは入ってないよな?」
あきら「いいね、私はお酒は飲めないけど、ミネラルウォーターをいただくよ」
鱫史「と言った直後には中身なくなってるね!いやぁ〜、これはまた実に面白いね!夜詩♪」
夜詩「…飲み物まで生き急ぐ必要なくね?」
あきら「失敬。普段から染み付いた習慣なんだ」
夜詩「…まあなんでもいいけどさ。……っと、これ、雪見大福…」
鱫史「流石夜詩、目の付け所が違うね!それは俺セレクトでね、夜詩の大好きなシュークリームが店になかったからこれならどうだと選んできたんだよ、なんとこれなら2つあるからひとつ俺に食べさせてくれることが出来るわけだ!さあ夜詩、来てくれ!カモン!」
夜詩「ん、うま…クリームではないけどもっちりとした食感も悪くないね」
礼之「…普通に気にせず食べてるな」
美弧「こんなにアピールされてても動じないなんて…すごいわね…!」
夜詩「あー、これは気にしないでいいよ。いつもの冗談だからさ」
鱫史「夜詩…!」
夏目「はは…ちょっと不憫に見えてきたかもな」
礼之「ここまで眼中に無いのによく追い続けられるなあとは思いますね。…ん、成十?」
成十「雪見大福…」
鱫史の特攻をいつもの如く涼しい顔でかわしていた夜詩であったが、もの欲しげに見つめる視線に気づく。
夜詩「ああ、君も雪見大福、好きなんだっけ」
成十「あはは〜…まあね!でもほら、カップラーメンがここにあったらなあとか思っただけだから!」
夜詩「カップラーメン…?んん、よくわかんないけど…、じゃあいいの?」
あきら「ああ、カップ麺大福アイス。あれはまた乙な味わいだったね」
どくだみ「え?それ浸透してるんですか?」
あきら「でもいいの?かなり好きなように見えたけど」
成十「あーっ!それは言わなくていーの!」
あきら「そう?ごめんね、気が利かなくて」
夜詩「あー…いーよ、1個食べる?」
成十「えっ…いいの?」
夜詩が雪見大福を差し出すと成十は目を輝かせる。そんな様子を微笑ましく見守るメンバーたち。そうこうしていればおかゆがスマホを取り出して元気いっぱい声を上げる。
おかゆ「ねえねえ〜みんなでさ写真撮ろ!思い出的な!んでエックスでアップしたらさあアピールにもなるくない!?」
鱫史「役者全員でのオフショット…うむ、確かに有効かもしれないね。早速撮ろうじゃないか!」
美弧「やだ、メイク落ちてないかな?結構時間経ってるしちょっと心配かも…!」
心理「メイク直しタイムはちょぉほしいなあ。SNSにアップするゆーならカンペキに仕上げたいとこやね」
あきら「流石女性陣。プロ意識が違う。私も見習おう」
宗光「まあ、俺はいつでも完璧だけどな!どんな時でも最高に格好いい、それが俺だ!」
どくだみ「鷹司さん、ケチャップが頬についてますよ」
宗光「はっ、どこだ!?」
屋上では役者陣の元気いっぱいな声が響く。青春の舞台で青春を繰り広げるのは学生たちだけではない、のかもしれない。
青が広がっている。