冬後期〜慰安旅行 後編〜
〜前回のあらすじ〜
映画のクランクアップを迎えた一行は都心から車で1時間ほどの旅館へ、慰安旅行へと訪れていた。宴会で無茶ぶりされたり、温泉で身体を癒したり、旅行を満喫した役者、クリエーター達は寝る前のひとときを各々楽しんでいる。
*****
やま「ふふん。これがトドメだよ!」
どくだみ「はは、甘いですね。この程度大した障害にもなりません。…手加減のつもりでしたら、遠慮なさらずどうぞ?」
やま「へぇ…これも取れるんだ。オッケー、そっちがその気なら俺も気合い入れるからね!」
おかゆ「あ…あわわ…」
夏恋「流石やま先生!私も足引っ張らないようにしないとね♪」
あきら「うん、今のはいいショット。ギリギリを攻めた戦いだった」
宗光「………!?!?い、今、ヒュって…ヒュってなったぞ!?あれ、反則じゃないのか!?」
鱫史「いや、セーフだよ。当たったわけでもなかったし。まあギリギリを攻めたのは事実だけどね。…ところでもう終わりにしていい?夜詩が待ってるんだけど」
妥々星「ボクには見守ることしかできないんだね…世界が平和になりますように…」
緑海「ど、どうして…」
あに丸『どうしてこんなことになったの!?ボク達はただ遊んでただけのはずだったよね!?』
激しく飛び交う球。祈る声。困惑する観客たち。あまりのカオス空間に気が遠くなるようだ。一体どうしてこのようなことになったのか。話は1時間ほど前に遡る。
*****
おかゆ「あ!みてみて卓球台があるよ!ウチやったことないんだよね〜!むねみつクン、一戦どお?」
宗光「お、いいな。俺もあまりやったことはないが…まあ、やればできるだろう!」
どくだみ「おかゆさん達、卓球やるんですか?いいですね。良ければ俺たちも参加させてください」
あきら「うんうん。4人いれば2人ずつに分かれてダブルスもできる。2人が初心者なら、分かれてチーム組めばバランスもとれるかな」
おかゆ「えッいいの?心強いかも!じゃあじゃあ、どくだみサンチーム組もッ!最強タッグ成立だね!」
どくだみ「もちろん、喜んで」
夏恋「およ?先客がいたねー!役者のみんなもこれから卓球するの?」
やま「バトルするんだったら俺たちも混ぜてよ、俺たちも丁度卓球したいねって話してたところだからさ」
緑海「こ、こんばんは…!」
あに丸『エミはこんばんはって言ってるよ!役者の皆とも仲良くなりたいって思ってたからな、嬉しいみたいだ!』
妥々星「あはは〜、大所帯になっちゃったね、その分楽しくはなりそうだけど!ダブルスでトーナメント戦、とかにしてみる?」
宗光「トーナメント戦か…ああ、いいな!俺と戦える名誉をお前らにもくれてやろう!」
夏恋「あ、それなら勝ち残ったチームに賞品とかあるともっと楽しくなりそうじゃない?」
妥々星「賞品と言うとこの間の流れから”なんでもお願い事を聞いてあげる券”、とかが思い浮かぶけど…」
成十「あれ?みんな揃ってどうしたんだい?」
鱫史「おい、勝手に首を突っ込むなよ。巻き込まれるだろ」
成十「えへへ…つい楽しそうなことに目が行っちゃって…」
緑海「えと…成十さん…だよね?」
成十「うん。直接お話するのは春以来だね。皆で揃って何をしてたの?」
緑海「あ…えと…卓球を…」
あに丸『みんなで卓球をしようって話になったんだ!成十さんたちも参加する?』
鱫史「俺は参加しないよ。酔った夜詩を介抱する作戦が終わってないしね!凡人は凡人同士戯れていればいいさ」
宗光「えっ、夜詩さん酔ってるのか!?飲み会では平然としてるように見えたが…」
成十「ふふ…うん。正確にはまだ酔ってないよ。これからお酒買ってきて、お部屋で二次会するんだって。ついでに色々お使いも頼まれたから、僕も手伝おうかと思って」
鱫史「そういうこと!まあ南はやりたいのなら参加してきてもいい。俺一人でも買い出しはできるから…」
夏恋「あー、でも、そうすると奇数になっちゃうね?」
成十「そうだね…あ、じゃあ、お部屋から夜詩さん呼んでこようかな。なんだかんだ言いながら付き合ってくれると思うしっ」
どくだみ「あ、名案ですね。星ノ宮さんなら優勝賞品も出してくれそうですし」
妥々星「え〜?そんなに気軽な感じなの?」
鱫史「待て待て。夜詩は負けず嫌いだから、そんなところも可愛いんだけどね、就寝時間ギリギリまで粘って絶対酒飲んでくれなくなる…仕方ない。俺が参加するよ」
苦渋の決断といった様子で苦虫を噛み潰した表情で頷く鱫史に、皆が顔を見合せて笑う。そして改めて優勝賞品について考えはじめた。
夏恋「途中で話が切れちゃったけど、『なんでもお願いを聞いてあげる券』いいと思うんだよね。問題は誰から貰うかなんだけど…」
どくだみ「よくあるのは敗者が勝者のお願いを聞く制度ですよね」
やま「でもトーナメント形式だと1番の敗者って分からないよねー?敗者決定戦もするの?」
夏恋「それはなんか嫌だなあ。1番負けた人を決めるのってちょっと悲しくない?」
おかゆ「だよねっ!んー、じゃあ、1番勝った人だけ決めるにして〜…誰か1人選んでその人にお願いを叶えてもらえる、とか?」
やま「なるほど〜…例えば鍵綿さんなでなでしてね〜?とか、南さんに俺の小説朗読してね〜?とか、1人選んで自由にお願いしていいってこと?」
緑海「な、なるほど……」
あに丸『本職の役者さんにお願いを聞いてもらうチャンスということだね!エミもどんなお願いをしようか考えているみたい!』
妥々星「ボクはみんなで楽しく遊べたらそれで十分幸せだけど…それならみんなが幸せになるようなお願いがしたいな」
成十「お洋服を作ってもらったりとか、小説書いてもらったりとか…なんだか夢が広がるなあ」
あきら「勿論役者仲間にお願いしてもいいんだよね。丁度どくだみさんに健康の秘訣を伺いたいと思っていたんだ」
どくだみ「え?健康の秘訣?ストレスを溜めないこととか…?」
鱫史「俺は夜詩以外どうでもいいけど…まあ、夜詩が輝く台本を書いてもらうのは悪くないな!」
おかゆ「ウチは〜…どうしようかなァ、むねみつクンは何かしてほしい事とかある?」
宗光「そうだな…今は特に思いつかないが…自分の願いは自分で叶えたいし…だが、鷹司宗光として勝利を目指すぞ!」
おかゆ「そっかァ…なんかむねみつクンらしいねっ!どくだみサンは?」
どくだみ「俺は…そうですね。…こんなところで願うのもアンフェアですし、無難にいこうと思います」
夏恋「まあ、まずは勝たないとお願いを聞いて貰えないからね!早速チーム分けしていこう!」
あきら「そんなこともあろうかと、くじを用意しておいた。みんなで引こう」
夏恋「いつ作ったの!?仕事が早いね…!?」
あきら「記号を書いた紙を箱に入れるだけの簡単な作業だから。単純作業は嫌いじゃない。任せて」
成十「そう言いながら早速自分で引いてるね…さすが慧くん」
あきらが自分で作った箱に手を入れてがさごそとくじを引く。それに習ってほかのメンバーもくじを引いていった。
緑海「あきらさん…よ、よろしくね……!」
あきら「同じ☆を引いた縁。大事にしていこう」
緑海「う、うん…!」
あに丸『エミは体力がないし、足を引っ張らないか心配みたいだ!迷惑かけたらごめんね……!』
あきら「いいよ。こういうのは楽しむことが大事。体調を崩さない範囲で頑張ろう」
緑海「ありがとう…」
妥々星「成十サンだよね。改めて自己紹介。叢雨妥々星。衣裳デザイナーだよ。よろしくね」
成十「うん、よろしくね、妥々星くん。よければ今度、僕の服装のアドバイスをお願いしてもいいかな?実は…」
妥々星「ふふ、うん。いいよ〜。これも何かの縁だし一緒に服装、考えよっか〜」
宗光「鱫史!俺たちでペアになったな!へへ、一緒に戦えて嬉しい!よろしくな!」
鱫史「あー、ハイハイ…。凡人なりに俺の足を引っ張らないように励めよ」
宗光「俺を誰だと思っている?俺はあの鷹司宗光だ!足を引っ張るわけないだろう!」
やま「あ、俺たちシード枠だって。よかったんじゃない?」
夏恋「本当だ。やまさんのご活躍の場が減っちゃうのは残念だけどちょっとありがたいかも!」
やま「過保護な人達がいない分、自己管理しないとだしね」
夏恋「えへへ…そうだねーっ。みんなに心配かけないように頑張るよ!私たちの絆を見せつけちゃおう!」
やま「ん…そうだね、かっこいいとこ見てもらって褒めて貰えたら嬉しいし…頑張ろー!」
緑海「ふふ…やまくん、チーム別れちゃったけど…頑張ろうね…!」
やま「うん。緑海さんにも手加減するつもりはないからね〜。いいとこ見ててね?」
緑海「も…もちろん!ちゃんと見てるし…負けないよ…!」
おかゆ「うーんッ!アツアツだね〜!歴史に残る名勝負が繰り広げられる予感!」
どくだみ「ちょっとした遊びの予定が、思ったよりも大掛かりになってますからね。それぞれ色々な意味で負けられない戦いになっているんでしょう」
おかゆ「どくだみサンもやる気満々だね?」
どくだみ「ええ。どこまでいけるか分かりませんが…やれるだけやってみようかなと」
おかゆ「そか!頼りにしてるよ〜!」
楽しむため、賞品のため、活躍するため。それぞれ目的は違えど、意欲は十二分。遊びと言うにはあまりに熱い戦いの火蓋が切って落とされるのだった。
*****
あに丸『残念!負けちゃったな〜!あきらさんのお陰でいい線いってたんだけどな!』
どくだみ「本当にいい戦いでしたね。高速のスマッシュが打たれた時は流石に取れないかと思いました」
あきら「あれは私の秘技。ロイヤルストレートスマッシュ。まさかおかゆさんがカウンターを出してくるとは…」
成十「なんか最強のアガリができそうな技名だね…!」
おかゆ「ふふーん!すごいッしょ!ま、偶然なんだけどね!どうどう?カッコよかった?」
宗光「ああ、いい戦いだったな!おかゆのカウンターには俺も驚いたし…!格好良かったと思うぞ!俺ももう少し活躍できたはずなんだが…」
鱫史「あんな初心者丸出しの球じゃ勝てないでしょ…はー…俺の出番終わったし帰っていい?」
やま「えー、だめだよ〜。兎鮫さんも最後まで見届けて欲しいな!」
妥々星「ふふ、お疲れ様〜。ボク達も残念ながらすぐ負けちゃったけど、応援するのも楽しいね〜」
成十「うんうん。見てるだけでも楽しいし、手に汗握っちゃうよね!」
夏恋「次はとうとう最終戦かあ。シード枠といっても、まさか私たちが残れるなんて思ってなかったな!」
やま「まあね。俺もそんなに運動に自信ないし、月島さんも女の子だし。鷹司さんたちに勝てるなんてね〜」
夏恋「ふふ、偶然でもなんでも勝ちは勝ちだしね!こうなったら優勝目指して頑張っちゃお!」
やま「だね〜。相手はどくだみさんと鍵綿さんかぁ。かなり分は悪いけど最初から諦めるのも違うよねー」
どくだみ「はは。俺も卓球は趣味程度の初心者ですから。楽しんでやりましょう」
おかゆ「うんうん。ウチもさっきのはただの偶然で初心者だし!一緒に楽しもー!」
あきら「役者ペアと作家ペアの戦いが最終戦か。見応えありそうだね。ここは役者陣営としておかゆ君達に頑張って欲しいところ」
緑海「やまくん…!夏恋さん…!がんばれ…!」
妥々星「最終戦も朗らかに終わりそうで安心だね。勝っても負けてもいい戦いになりそう」
メンバーたちが見守る中、先行のおかゆがサーブを入れる。子気味のいい弾んだ音は、夏恋のラケットによって返される。暫く平和なラリーが続いていたが、やまがスマッシュを仕掛けることでそれが途切れた。
やま「そろそろ仕掛けるよ〜。えいっ」
おかゆ「ここはウチが〜…!あいたっ…」
夏恋「あちゃ〜…当たっちゃったね…」
妥々星「この場合ってどうなるのかな?どっちのミス?」
鱫史「オーバーミスの軌道ではあったけど、鍵綿が当たったのは台の中だったからね。その場合は鍵綿のミスになって作家チームの得点だな」
どくだみ「はは、手厳しいですね。おかゆさんが台の中で当たったかどうかグレーゾーンじゃないですか?」
鱫史「ルールはルールだからな。悔しければ巻き返すしかないね」
おかゆ「そっかァ〜。卓球ってムズいね!どこで当たったかも覚えてなきゃってコトか〜!」
どくだみ「仕方ないですね…おかゆさん、少し下がっててください。ちょっと危ないかもしれないので」
やま「えー?もしかして本気出しちゃう感じ?わざとじゃないのに失礼だなあ…。でも仕方ないかぁ、俺も負けないよー!月島さんもちょっと下がっててね?」
ここから試合が白熱し、冒頭に巻きもどるのであった。やまとどくだみ主導の熱いラリーは続き、スマッシュからのカウンター、時折フェイクモーションも交えた打ち合いはなかなか決着がつくことはない。
夏恋「やまさん頑張って〜!!」
おかゆ「どくだみサン気をつけてね〜!?」
緑海「わ、わわ…!!」
それから数十分後、騒ぎを聞きつけてやってきた夜詩に「旅館の人の迷惑になるから」と中断されるまで戦いは続き、決着はつかないままではあるものの、語り継がれる名戦となるのであった。
*****
夜詩「はー…ったく…アイツら慰安旅行ぐらい大人しく過ごそうって気にならないわけ?」
成十「ふふ…、慰安旅行だからこそ、じゃないでしょうか。つい羽目を外したくなっちゃうんだと思います」
緑海「あの…お部屋…」
あに丸『お部屋にお邪魔してよかったのかな!夜詩さんと成十さんのお部屋ってことは主催組のお部屋ってことだよね?』
成十「うん、大丈夫だよ…なんて、主催の皆さんの中に入れてもらっている僕が気軽に言っていいかわかんないんだけど、せっかくだしもっとお話したかったからね!」
夜詩「変に気を遣わなくてもいいよ。主催組の男性陣に混ざって緊張させてしまっていたら悪いけど、君も正式に部屋の一員なんだ。好きにくつろいで欲しい」
成十「えへへ、ありがとうございますっ」
夜詩「それに、……梶谷坂さんが来る前からここはすっかりたまり場だからね、…気にする必要はないよ」
ため息混じりにたどり着いた主催部屋のドアを開ける。夜詩、鱫史、夜月、そして成十の4人部屋であるはずの客室は、鱫史が不在であるにも関わらず既に何人もが自分の部屋のように寛いでおり、もはや誰の部屋なのか分からない様相であった。
心理「ああ、帰ってきたんやね。どうやった?えらい楽しい騒ぎやったって聞いたけど」
美弧「おかえりなさいっ!あら、成十くんだけじゃなくて緑海ちゃんも来たのね!今お茶を入れるから待っていてちょうだい!」
深依「ああ、エミさん。エミさんもあの騒ぎに巻き込まれてたんだ?お疲れ様」
夜詩「なんか人増えてない?……いや構わないけど、そこでさも自分の部屋ですみたいな顔して転がるのはどうなの」
夜詩が視線を向けた先には、鼻歌を歌いながらバリボリと大きな音を立て、ポテトチップスを食べる男の姿。周囲は袋を開けたはずみに出ただろうポテトチップスが散乱しており、…一言で表すなら、汚い。清潔を保たれるはずの旅館とは思えない状態だった。
そんな渦中の人物は視線に気づいたのかどうか、気にもとめない様子でマイペースに足をぱたぱたと動かしながら振り返る。
ケン「あー!夜詩くん、成十くん、おかえりなさい!緑海ちゃんも来たんですね!ゆっくり寛いでいってください!」
夜詩「あぁ?……あのさあ、君は寛ぎすぎなんだよ、ここ誰の部屋か分かってんの?おい…少しは片付けとけって言ったろ?聞いてなかったとは言わせねぇからな…!」
深依「あー…だから言ったのに…他社の社長さんにまでご迷惑かけてどうするの…」
ケン「あ、ごめんなさい!聞いてませんでした!今いいインスピレーションが来てて聴き逃したくないんですよね!^^」
夜詩「インスピレーションはどうでもいいけどそれどっか別のとこでやってくれないかな!?突然良舞くん引き連れて人の部屋やってきてすることじゃないよね!?」
夜月「まあそうだね。けどいちいちつっこむのも面倒……大変だし、ここまできたら注意するだけ時間の無駄って言うか」
夜詩「輝くんが放置してるからこうなるんだろ…はあ…」
成十「夜詩さんが疲れきった表情を…!」
深依「すみません、まさか役者の皆さんにまでとは…」
緑海「あの…皆はどうしてここに…?」
心理「うちらは部屋で喋ってた流れやなぁ。せっかくやし鱫史さんたちをつっつきにいこか〜ってなってな」
美弧「ええ!成十くんもこのお部屋って聞いたし、一緒にお話したくて!」
深依「俺は単純に、その辺にいたからって理由で首根っこ掴まれてケンさんに連れてこられた感じです」
ケン「俺の第六感が囁いたんですよね^^この部屋に行けって!なので勘に従ってみました!」
心理「なんや面白そうな人やねぇ。第六感は神様のお告げでもあるわけやし、そういう行動原理も悪くないんやない?」
ケン「わあ!そう言って貰えると嬉しいです!確かお名前、心理ちゃんでしたよね?俺は山田ケンっていいます。宜しくお願いします!」
心理「そうそう。勅使河心理やよ。よろしゅうね〜、ケンくん」
美弧「うふふ、いいわね〜、こういうの!顔合わせ以来忙しくてそんなに関わる機会もなかったから、嬉しいわ!ねえ、みんなでお話しましょ!」
深依「ま、実際こういうタイミングなければ関わる機会なかったわけだしね。丁度いいかも」
成十「お話するなら何がいいかな?お仕事の話とか?」
ケン「え〜、ちょっと真面目な感じしません?嫌じゃないけどせっかくだし他の話聞きたいです!音楽が捗る感じがいいですね!」
緑海「音楽…なんだろ…ワクワクするお話…」
夜詩「なんでもいいけど別の場所でやってくれない?ここ一応上司の部屋なの分かってる?」
夜月「……騒がしくさえしなければ僕はなんでもいいよ。そも言って聞くならとっくに帰ってるだろうし。諦めよう」
心理「それなら恋バナが鉄則やろ。元からうちらはその辺聞きに来よう思ってたわけやし」
美弧「!そうだったわねっ!夜詩さんに聞きたいことがあってきたのよ!鱫史さんのことなんだけどね!」
夜詩「…はあ、またその話?女子ってそういうの飽きないよね」
夜月「星ノ宮くんっていつも”女子だから””男子だから”で区別するね。このご時世にそぐわない価値観じゃない?」
夜詩「うるさ。輝くんにだけは言われたくないんだけど。いつかその辺の男に取られても知らないよ?彼女あんなに可愛いんだし」
夜月「はあ。……誰の話?」
夜詩「さあね。分かんないならいいよ。1番に胡座かいてるとそのうち後悔するんじゃないって思っただけ」
ケン「えっ!夜月くんって好きな人いるんですか!もしかして小粋ちゃん?」
夜月「なんでそこで小粋くんの名前が出てくるの。別にそういうのじゃないでしょ、僕たち」
緑海「あ、でも…そういえば、見たことあるかも…」
美弧「何を見たのかしら?」
あに丸『えっとね、牧場で夜月さんが小粋さんに拗ねているところを見たんだ!なんのことか分からなかったけどヤキモチかもしれない!』
夜月「拗ね、……えー。そんなことした覚えないけど。見間違いでしょ」
心理「ふふ、青いんやねぇ。そういうのもっと聞きとぉなるわ」
成十「ヤキモチかあ…そういう意味では夜詩さんはあんまり、だったもんね。壁ドンしても冷静だったし…」
心理「そお?妬くポイントが違うだけでしっかり…」
夜詩「もうその話はいいんじゃない?それより恋バナするなら君たちの話をしなよ。上司の話ばっかりしてもキリがないでしょ」
心理「ふーん?そうやな。そういうことにしとこか」
深依「恋バナって言っても何話せばいいの?好きな人の名前でもあげて万が一同担だったら笑えないんだけど」
緑海「わ、わあ…確かにそうかも…?」
ケン「それなら好きな人の好きなところをあげるとかどうですかね!名前を特定しない範囲でドキドキ体験できそうです!」
美弧「名前を特定しない範囲で…そ、そうね!私はいいわよっ!?」
成十「ふふふ、美弧お姉ちゃん、顔真っ赤だ!どんな人が好きなの?」
美弧「そ、そうね、か、可愛くて格好よくて…」
緑海「可愛くて…格好よくて…?」
美弧「あーもうだめだめ!あとはナイショよ!!」
深依「可愛くて格好いい、か。実際殆どの人に当てはまってもおかしくないよね」
緑海「そうだね…」
あに丸『好きな人のことはみんなそんな風に見えちゃうのかもしれないね!……エミもその一人だったり』
ケン「俺の場合ちょっと違いますかね!ユニークで面白い人なので!^^」
心理「ああ、うちもどっちかというとそうやね。興味をそそって仕方ないゆうか…お気に入りに近い感覚やけどね」
成十「お気に入り、かあ…同じ好きな人の話題でもちょっと違う感覚だなあ」
心理「成十くんはどういう感覚なん?」
成十「うーん…僕はとにかく、好きになって欲しい、というか…好きな人の好きな人になれたら素敵だな、って…」
美弧「…ふふ、成十くんのそういうところ、お姉さんとっても好きなのよね!応援したくなっちゃう!」
緑海「うんうん…その…なんか素敵だな…って、思う…!」
深依「まあ、心意気は分かるかな。俺の場合恋愛に限った話じゃないけど…」
ケン「恋愛に限った話じゃないんですか!?気になります!教えてくださいよー!」
深依「わっ…急にくるとびっくりするんで、やめてくださいよ…」
ケン「あはは、ごめんなさい!なんか頭にメロディが浮かんだ気がして!うずうずしてきました^^」
そんな会話をしていれば、こんこん、とノックが鳴る。やや広めの部屋とはいえ既に多くの来訪客がいる部屋は満員。夜月がうんざりとした表情で扉を開けると、駿平が立っていた。
夜月「誰ー…?って確か役者の。天使くん、だったっけ」
駿平「あ、はい。星ノ宮さんに用事があってきたんですけど…え、なんでこんなに人いるんすか…?」
成十「あ、駿平くん。ふふ、気づいたらみんなが集まってきて、お話してたんだ」
夜詩「俺はあんま夜更かしするつもりないし、そろそろ解散して欲しいんだけどね?」
駿平「あ、すみません…時間とか考えないできちゃって…」
夜詩「や、…別にいいんだけどさ。それでなんの用事?」
駿平「兎鮫さんが呼んでこいと言ってて…。なんでも見せたいものがあるとかで…」
夜詩「は?アイツ勝手に酒を買いに行ったと思ったら何やってんの?ったく…」
不平不満を言いながらも渋々半纏を羽織り、出ていく夜詩。夜月はそんな姿を見送りはあ、と深い息を吐いた。
夜月「すっかり大所帯だね。君もずっと居るつもりなの」
駿平「帰ったら酒盛りするって聞いたんすよ…ここまで禁酒したわけだし、寝る前にちょーっと飲んで寝付きよくしとこうかな〜…的な…」
成十「そっかあ。最近、本当にお酒飲まないように気をつけてるみたいだよね!駿平くんすごいなあ…」
夜月「ああ、その話は星ノ宮くんからかねがね聞いてるよ。どういう心境の変化?」
駿平「まあ、この1年で色々、考え方とかも変わったからさ。色んな人と出会ったりとか、色んなこと聞いたりとか…今までと比べ物になんないくらい、充実してて。だから、頑張ろうかな…とか思ったんです」
心理「なるほどな。人と人との出会いが人を変える…ってことやね。参考になるわ」
緑海「わ、私も…!」
あに丸『ここでの出会いで沢山成長したと思うな!この企画に参加できて良かったよ!』
成十「うんうん。僕も同じ。色んなこと考えたり、悩んだりしたけど…でも、映画の撮影を通して成長できたと思う!」
美弧「ふふ、なんだか暖かい雰囲気ね。もう終わってしまうみたいでちょっぴり寂しいけど」
ケン「えー?まだまだですよ!今日だってまだ終わりませんし、明日も旅行は続きます!旅行が終わっても上映までは日がありますし!」
夜月「僕は最高の映画さえ作れれば何でもいいんだけど……終結するまでは一応上司の括りだしね。責任持って、最後まで君たちの行く末は見届けさせてもらうよ」
まだまだ夜は長い。その後もさらに来客を迎え、酒を持った鱫史と夜詩も戻り、2度目の大宴会状態となるのだった。
*****
Null「昨日はそんなことがあったんだ」
夏恋「そうそう。まさかあそこまで盛り上がるとは思ってなかったからビックリだよ〜!キミもくればよかったのに!」
Null「いや…そういう陽キャっぽい催しに出るには場違いすぎるでしょ…」
夏恋「そんなことないよ!少なくとも私は君がいたらもっと嬉しかったもん」
Null「……ふふ、そっか。俺も…」
しちみ「____もしもし、警察ですか。ここに箱を被った不審な人物が…」
Null「っとおおおおお!?!?ちょっとタンマタンマ!俺まだなんにもしてないから!」
しちみ「まだ、ね。これは犯行予告として受け取ってもいい?」
Null「ダニィ!?いいわけなくないか!?最初から飛ばしすぎだろぃ!」
夏恋「あ、しちみちゃん、妥々星くん、おはよう!観光楽しみだね〜!」
しちみ「おはよう、夏恋ちゃん。浴衣、似合ってるね」
夏恋「え!えへへ〜嬉しい!そういうしちみちゃんもすっごく似合ってるよー!可愛い!」
妥々星「みんなおはよー。自由行動の観光に誘ってくれてありがとう。ふふ、しちみサンも夏恋サンも浴衣似合ってると思うよ」
しちみ「ん…ありがとう、ムラサメくん」
夏恋「えへへ、褒められるとちょっと照れちゃうなあ〜。ありがと!」
Null「オイオイオイ色男さんよぉ…そのノリで何人の女の子を口説いてきたんだ~?ン~?」
妥々星「えぇっ!?そ、そういうのじゃないよ…!ボクはただ思ったことを言っただけで…」
Null「ハイハイ、俺もそのムーブにあやかっちゃおっかな!?二人とも、浴衣、似合ってんぜ…」
しちみ「ねえ、夏恋ちゃん。そのノートなに…?」
夏恋「これはね、この辺りの観光スポットまとめてきたノートなの!楽しみすぎて頑張っちゃった!」
しちみ「ふふ、それがあれば観光スポット全制覇もできちゃいそうだね。楽しみ︎ …」
Null「ボケをかますも声小さくてスルーってか……でもさあココギャルゲなら纏めて好感度アガるとこじゃん?」
妥々星「あー…えっと、これで涙拭いて?」
Null「武士の情けは無用よたたせクンッ!まあ、今日の目的はお土産を買うことにあるからな、この程度のことで折れるぬるぽじゃねぇのよ~」
夏恋「お土産?誰かに買う予定があるの?」
Null「そう!俺の愛すべき幼馴染にね…。本人も来てるからいらねーって?んなこまけぇこたぁ気にしちゃ負けだゾ」
夏恋「そっかあ…幼馴染って確か、役者の心理さんだよね?天使みたいに奇麗な!」
しちみ「そう…。別にお土産渡すのは好きにすればいいけど、その格好が目立つということは心に留めておいてね」
妥々星「旅館は貸切だったけど、観光地は勿論いろんなお客さんがいるもんね。ほかの皆もどこかを見てるんだろうけど…」
夏恋「あ!さっき夜月さんたちはいたよ!鱫史さんたちも一緒だったから、みんなで観光してるのかも!」
妥々星「この辺はお土産街だし、誰かにプレゼントを選んでいるのかもしれないね。ボクもお土産を買っていこうかな。幸せのお裾分けができそうだし…」
しちみ「…いいんじゃない?それなら私も選ぼうかな」
妥々星「うんうん、いいと思う!誰に買っていくの?家族とか?」
しちみ「ん?君に買うの」
妥々星「え、君って…ボク!?」
しちみ「正確には妹とか夏恋ちゃんとかエミちゃんとか、私があげたい人みんなに、だけどね。君は人の分買うだけ買って、自分のお土産とか買わなさそうだから」
妥々星「あはは〜、しちみサンって凄いね。ボクのことお見通しだ。でも貰ってばかりじゃ落ち着かないし…ボクもキミにお土産を選ぼうかな」
4人がお土産の店に入れば、そこには先客が土産を物色していた。先程夏恋が見かけたとおり、鱫史が真剣に品物を手に取り確認している。
Null「あ!大役者先生じゃ〜〜〜〜ん!チッスチッス!なになにィ?愛する人にプレゼントとか選んでるとこktkr!?現在活動休止中の人気俳優のスキャンダル発生ってか〜〜??」
鱫史「俺は忙しいんだ。ダル絡みするならあっちにしてくれる?」
夜月「えー。押し付けられても困る…」
鱫史「俺は夜詩が頗流と盛り上がってるうちにサプライズのプレゼントを探すという大事な使命があるんだ。そもそもソレは君の管轄だろ?ちゃんと管理してくれ」
夜月「そりゃ確かにこっちの管轄だけど、今回は管理目的で同行してないしなあ。僕はアテにしないで、君たちは君たちのしたいことをするといいよ」
夏恋「鱫史さんって昨日も夜詩さんのためにお酒買う、とか言ってなかった?ひゃ〜…噂には聞いてたけどほんとにお熱いんだね〜…!」
夜月「兎鮫くんの行動原理、大半が星ノ宮くん絡みだしね」
Null「あ〜おかのした、そういう感じな。まあ確かにあの人はそれだけのスゲー人なのは分かるかな」
鱫史「別に凡人に理解されなくとも俺は構わないがな、そういうことだ」
Null「まーそれはいいんだけどよ…まさかとは思うがそのブツをプレゼントにしようなんて真剣に考えてるヤツいる!?いねぇよなァ!?」
鱫史「?真剣だが?いや…夜詩の首には青より黒が似合うか…」
Null「オイオイオイそりゃないぜとっつぁ~ん…どうみてもイッヌ用じゃねぇかそれ…イタズラにしたってアクマ的すぎんだろ!」
鱫史「ずっと傍にいてくれ、俺のものになってくれという想いを最大限に込めたいいチョイスじゃないか?」
Null「アブノーマルすぎワロタ。こんなの貰ったらドン引きどころの騒ぎじゃないだろ…常考…全米が凍り付くね」
夜月「へぇ…じゃあ、君にとってのプレゼントってどういうものなの?」
Null「プレゼントってのはさあ…大事な人の笑顔を頭に思い浮かべて、どうやったらこんな顔になってくれるか、考えるんだよ。これを受け取ったらどんな顔してくれるんだろうなって…押し付けるんじゃなくて、相手を想って選ぶのがプレゼントだと思う」
夜月「…ふうん」
Null「…へへっ、なーんてなッ!?俺としたことが思わず真面目な話をしちまったぜ…ぬるぽ、一生の不覚…」
鱫史「ふーん、まあ、言いたいことは理解したよ。それならもう少し考えてみようかな…夜詩が1番喜ぶもの」
Null「それがいいと思うよ。…俺もだからって何がいいとか思いつかねーけどな!」
夏恋「Nullさん、お土産は決まった?こっちに素敵なものがあったんだけど…」
Null「ハッ!俺としたことが、肝心の本題を忘れちまってたぜ…夏恋ちゃん、それなら俺たちのお土産もオソロで買おうぜ〜!」
鱫史「…嵐のような男だね、あれも」
夜月「君のところも人のこと言えないでしょ」
鱫史「まあ、それは否定しないね。夜詩は結構気に入ってるみたいだから、俺にはどうしようもないけどさ」
夜月「本当、星ノ宮くんに甘いね。君」
鱫史「君にとっての映画が俺にとっての夜詩なんだよ。世界で、生きる意味。夜詩の演技に一目惚れしたあの時から世界が始まったと言っても過言じゃないんだ」
夜月「映画ね……そう言われると弱いな。そうも熱心に執着したがる行為に、ほんの少しばかりでも同感出来てしまいそうになる。……兎鮫くん程がむしゃらでなくても、思いを伝える意義も感じられるかもね」
小粋「___おや、ここにいたんだね、夜月君、ふみ」
夜詩「………」
小粋「うた、さっきまでの元気はどこにいったんだい?考える姿もまた君のファンには魅力的に映るのだろうけどね!」
夜詩「あー、ハイハイ。普通に話せばいいんだろ、普通に」
鱫史「夜詩?何かあったのか?もしかして変な人に声掛けられたりとか…!」
夜詩「ねぇよ。仮にあってもその程度簡単にあしらえるし」
鱫史「そういう慢心が事件を招くんだよ、夜詩。何かあったら俺がすぐに…」
夜詩「来んな。お前が来ると余計騒ぎになる」
鱫史「夜詩〜っ!!」
小粋「あはは、ふみもうたも相変わらずだねぇ!見ていて微笑ましいよ!」
夜月「そう?いつも通り過ぎていっそ何も感じないよ。……君にこんなやりとりが1番好きって言われたら、少しくらい不本意に感じるかもしれないけど」
小粋「…はは、どうしたんだい、急に。夜月君にしてはいやに素直じゃないか。何か悪いものでも食べたのかい?」
夜月「悪いものって酷い言われよう。……別に、ただの気まぐれだよ」
ふい、と顔を逸らす夜月に不思議げな表情を浮かべる小粋。楽しげに会話を交わす上司たちを密かに見守っていた4人もまた、顔を見合わせる。
夏恋「いや〜。見ていてドキドキするね!もどかしいのなんの〜!」
妥々星「ふふ、皆にも幸せになってほしいなぁ。もうすぐバレンタインだし…、何か変わったりするのかな」
しちみ「変わるなら…、いい方向に進むといいね。後味が悪いのは、嫌だし」
夏恋「大丈夫っ!きっとみんなハッピーエンドだよ!」
そんなやり取りを交わしながら街を歩いていれば、ふと妥々星が足を止める。
しちみ「…?ムラサメくん?」
妥々星「……あの!すみません!!」
視線の先は金髪の後ろ姿。長いブロンドをふわふわと靡かせるその女性を走って追いかけると、女性はその声に気づいたのか、くるりと振り返る。
女性「What’s wrong?」
妥々星「あ…、すみません、つい……人違いでした…えへへ…」
女性「〜〜〜〜?〜〜〜〜?」
妥々星「……え、えーっとぉ…」
心理「道を教えてくれませんか?ゆーてるよ、その人」
妥々星「へ?道?」
心理「えらい勇猛果敢に飛び込んどったからてっきり英語喋れるんかと思ったんやけど、ちごうたのな。まあ人助けもうちの使命のひとつや。代弁くらいは手伝ってもええよ」
妥々星「ありがとうございます…?」
女性「〜〜〜?」
心理「この人、神社に行きたいみたいやね。確か妥々星くんゆうたな。場所、知っとる?うち方向音痴やからきみが案内して欲しいんやけど」
妥々星「あ、うん。確かあっちにあったかな…」
心理の翻訳を頼りに、妥々星が場所を指さした。女性は案内を聞き、何度も振り返り会釈しながら目的地へと向かっていく。思わぬ人助けを行った2人はそんな姿を見送った。
*****
礼之「やっと見つけた。心理ちゃん、急にいなくなるからはぐれたかと思ったよ。少し焦った」
心理「ふふ、焦るとこも見てみたかったわ。惜しいことしたなぁ」
礼之「あんたって案外お転婆だよね。まあ、別にいいけどさ…」
妥々星「あの、心理サン、ありがとうございました!ボク、英語分からないので…とても感謝してます!」
心理「別にええよ。これもまた神の導きやろうからね」
Null「お、たたせクンはっけ〜〜ん…ってちょwwwまさかそこにいんのは心理チャン!?」
心理「るーくん、奇遇やね。るーくんも買い物におったん?」
Null「そーそー!此処で会ったが百年目!ちょうど心理チャンにお土産買ったからさ〜、渡しとくぜ!」
心理「ええの?ふふ、るーくんからのお土産なんて嬉しいなあ。宝物にするわ」
Null「大袈裟すぎて照れるぜ~ッでもまあ悪い気はしないな。大事な幼馴染の活躍の前祝いってことで!受け取ってクレメンス〜〜」
心理「ふふ、嬉しいわ。うちはるーくんのこともずっと待っとるよ?」
Null「…そうだな!ご期待に答えられるかは乞うご期待〜ッてコトで!」
その後も会話を交わしながら、ぶんぶんと掌を振り、楽しそうに去っていく4人。きっと楽しい観光を続けるのだろう。そんな姿を見送る心理に礼之が声を掛ける。
礼之「仲良さそうだったね、幼馴染」
心理「まあ、幼馴染やし。なんや、ヤキモチか?」
礼之「そういうのじゃないけどね、幼馴染ってそれだけで特殊なのは俺も分かるし」
心理「そうやなあ。でも、向こうもこの1年で色々変わったみたいやわ。…嬉しいけど、ちょっと寂しくもあるなあ」
礼之「それはそうだろ。時が経てば人も変わる。…悪いばかりじゃないけどさ」
心理「そういえばこの後成十くんたちと合流するんやろ?どこへ行くん?」
礼之「この辺りで有名な湖あるじゃん。あそこ透き通った水で有名でさ。名産品もあるみたいだから、あそこで一緒に昼食べる約束」
心理「ええなあ。結構見て歩いたし、いい時間やね」
礼之「だな。今日で帰る予定だから少し名残惜しい気がするけど…」
心理「また来ればええんよ。みんなでな」
春夏秋冬、一年を通して皆、何を思い、何を経験したのだろうか。笑った人も、悩んだ人も、何かに怒りを抱いた人も居たかもしれない。
でも、その経験はきっと無駄にはならない。制作の、演技の…新たな引き出しとなり、あなた達を励ます力となるだろう。
白綿を被った木々が再び淡いピンクに染まる頃、あなた達は何をしているのだろう。
それを隣で眺める人は、家族だろうか、友人だろうか、それとも_______
人は変わっていく。1分1秒ごとに、刻々と変化を刻んでいく。その結果どんな結末が訪れるかは_____まだ、誰も知らない。
*****
ジ-_____ザザ___ジィ___________
夜詩「___で、何、話って?」
小粋「まあまあ焦るなうたよ。まずはじっくり近況報告でも……」
夜詩「小粋がそういう茶化しを入れる時って、今までの経験則、結構大事なことを言おうとしてる時だと思うんだけど。違う?」
小粋「___はは、うたには敵わないね。少し相談を聞いて欲しくてさ」
夜詩「…いいよ。なに?」
小粋「…私に、縁談の話が来ていてね」
夜詩「……縁談?」
小粋「そう。それが結構な優良物件でね!容姿端麗頭脳明晰将来有望、家柄も申し分無しと____」
夜詩「…それで、小粋はどうしたいの?」
小粋「…受けようと思っているのだよ。いい眺めを望めそうだから」
夜詩「そう。輝くんにその話は?」
小粋「していない。これくらいで何か動じる男でもないだろうさ」
夜詩「そっか。…俺はキミがそう決めたなら反対はしないよ。どんなことも自分で決めて自分で責任を負うべきだからね、人に指図されるべきことじゃない」
小粋「…うん。君ならそういうんじゃないかと思っていたのだよ」
夜詩「でも、キミの友人として1つアドバイスをするなら___その相談をすべきは、俺じゃなくて輝くんだよ。どうせなら幸せそうな小粋に御祝儀を渡したいからね」
小粋「ふふ、あはは…!分かった、検討しよう。その時にはブーケを受け取ってくれるかね?」
夜詩「どうかな。それはキミのスタジオの人に受け取ってもらったら?」
小粋「相変わらずうたはつれないなあ。…もう少し考えてみるよ。今後の身の振り方をね」
ジジジ_________ザザ________
もうすぐ、バレンタインが訪れる。




