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第6話 カフェにて女子会

「──で、結花。最近、あんたどうなの?」


 放課後、カフェで美咲と二人きり。久しぶりにゆっくりお茶をしながら話す時間が取れた。

 美咲はいつも通り、ストレートに話題を切り出してくる。

 彼女は私の幼馴染で、一番の親友だ。誰にも言えないことも、彼女には何でも話せる。


「どう、って?」


 私は少しお茶をすすりながら、あえてとぼけた。

 だけど、美咲の視線は鋭い。こういう時、彼女は絶対に引き下がらない。


「どうって、それ。あんた最近、田中君に話しかけてるじゃん。どうなってるわけ?」


 やっぱり来た。

 美咲はクラスのことをよく見ているし、私が田中君に積極的に話しかけているのもすぐに気づいていたみたいだ。


「うーん……別に、なんでもないよ。」


 私はわざとあっさりとした口調で答えた。けど、美咲はそんな言い訳には引っかからない。


「嘘つけ。結花が誰かに興味を持つのは珍しいことだし、特に田中君みたいなあまり関わらないようなタイプに話しかけるなんて、ありえないでしょ?」


 美咲の指摘に、私は苦笑いを浮かべる。

 確かに、これまで私は他の男子にほとんど興味を持たなかった。

 見た目はどうでもいいし、みんな私を外側だけで見ているように感じて、誰とも深い関係を築こうと思わなかった。


 でも、田中君は違った。


「田中君、なんか面白いんだよね。」


 私は素直にそう言った。美咲は驚いた顔をして、少しだけ身を乗り出した。


「面白い?」


「うん。彼、誰かの恋愛相談に真剣に乗ってるじゃない?私、それを見て、すごく興味が湧いたの。普通、男子って恋愛のことになるとからかってきたり、自分のことで精一杯だったりするでしょ?でも、田中君はいつも他人のために考えてる。そういう姿が……なんか、いいなって」


 自分の気持ちを口にするのは少し恥ずかしかったけど、美咲には何でも話せる。

 それに、この気持ちを誰かに伝えて一度整理したかった。


「へぇー、そんな風に見てたんだ。結花が『面白い』なんて思うの、ちょっと意外かも。」


 美咲はニヤッと笑いながら、私をからかうように言った。

 でも、彼女が私を本気で聞いてくれているのも分かる。私はもう少し続けることにした。


「それにね、彼、すごく鈍感なの。私が冗談半分で『好きな人がいる』って言っても、全然気づかないの。多分、私が彼に興味を持ってるなんて思ってもないんだろうな」


 思い返すと、あの日の田中君の反応は本当に鈍感だった。

 私がどれだけヒントを出しても、彼はいつも「誰か他の男子が好きなんだろう」と勝手に思い込んでる。


「まあ、田中君ってそんな感じするよね。でも、そこがまた面白いんじゃない?」


 美咲は笑いながらそう言った。

 彼女も田中君のことはよく知っているし、彼がクラスメイトたちから恋愛相談を受けている姿を見ているから、私の話に共感してくれている。


「うん。なんかね、彼と話してると、私も素直になれる気がするんだ。普段はみんなに『結花』としての自分を見せてるけど、田中君には、もっと本当の自分を見てもらいたいって思うの」


 私はそう言って、ふと窓の外を見つめた。結花としての自分──それは、クラスの中心にいて、みんなに慕われて、完璧な美少女として振る舞っている自分。

 ……でも、それはどこか作られた自分でもある。


 田中君の前では、そんな自分を気にせずにいられる。彼は外見ではなく、心の中をちゃんと見てくれる人だと思っている。


「なるほどねぇ。つまり、結花は田中君にちょっと本気ってわけ?」


 美咲は真剣な表情でそう尋ねてきた。その質問に、私は少し戸惑った。


「本気……なのかな?でも、まだ自分でもよく分からない。ただ、彼ともっと話したいって思うのは確かだよ。」


 そう答えたものの、心の中で整理しきれない感情が渦巻いている。田中君と話すたびに、自分でも気づいていない気持ちが少しずつ湧き上がってきているような気がする。


 美咲はその答えに満足したのか、にっこりと笑って言った。


「じゃあ、もっと田中君と話してみたら?あんたが本気かどうかなんて、時間が経てば分かるしさ」


「そうだね。とにかく、焦らずにいろいろ話してみるよ」


 美咲の言葉に励まされながら、私は頷いた。

 これからどうなるかは分からないけど、田中君ともっと話をして、彼がどんな人なのかをもっと知りたい。

 自分の気持ちも、少しずつだけど整理していけそうな気がしている。


「それにしても、結花が男子にこんな風に興味持つなんて、本当珍しいね。田中君って、すごいなぁ」


 美咲はそう言って、またからかうように笑った。その言葉に私は照れながらも、一緒に笑い返した。

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