クーラー合戦
暑すぎる。女子たちが寒いとか言うせいでクーラーを止められ窓を開けられてしまった。こんなの生きている心地がしない。僕らの学校は盆地のど真ん中にあるせいで夏はサウナ状態、冬は冷凍庫状態になる最悪な立地である。幸い僕は窓側の席のため風が入ってくるが生ぬるい。これは部活が怖い。熱中症で部員がバタバタ倒れている。クーラーの聞いた部屋で絵を描きたい。そんなことを考えているとチャイムが鳴った。暑すぎるので2人の友達の1人である光喜のクラスに行く。光喜がこっちを見るや否やニヤリと笑みを浮かべてくる。
「クーラー止められたか。お前ら死ぬぞ?」
もう半分死んでいる。でもこの教室は涼しくて生き返る。
「ほんとに暑すぎる。これ部活ヤバいぞ」
光喜も陸上部だ。種目は光喜が短距離で僕が長距離。
「優希絶対クーラーの下で絵を描きてーって思ってたろ」
全てお見通しみたいだ。
「めっちゃ思ってた。でも休んだら顧問うるさいだろ。積み重ねが大事です!って」
ものまねしながら言った。
「うまいじゃねえか」
と笑いながら言ってくる。
「優希最近絵掛けてるのか?夏季大会が近いせいで描けてないんじゃねーのか?」
その通りだ。2週間後に控える夏季大会のせいで絵画教室を休んでいる。正直足を走らせるより鉛筆を走らせたい。唯一最近しっかり描いたのは芽衣の足の絵だ。
「うん、描けてない。でも描く機会は結構あるかも」
「ふーん、ちょっと何言ってるかわからないけどお互い頑張り過ぎずやろうな。俺は毎日ゲームを夜中までするのが生きがいだからな」
「早く寝ろ」
そう言ってからチャイムが鳴る前に自分の教室に戻った。相変わらず暑い。すると後ろから
「桐谷君、また絵をお願いしてもいいかな?」
芽衣だ。
「もちろん。次はなに描いたらいい?」
「ありがとう!実はもう印刷してきちゃったんだけど」
見るとまさかの膝下だった。本当にどうかしてるのかと思った。しかも前と画角が一緒。斜め右から取った写真。
「え?本当にこれでいいの?」
つい聞いてしまった。
「これが良いの!理由は最後まで桐谷君が私の要望を聞いて作品が集まってから言うね」
多分途方にもないのだろう。別に嫌だとは思わないし承諾した。
「ただ夏季大会が近いから前より少し時間かかるかも」
「全然いいよ!楽しみにしてる!」
また黄色いオーラを出して戻っていく。あ、チャイムが鳴った。紙をスケッチブックに挟んで席に戻る。先生も暑かったみたいでクーラーを付けた。蒸し焼きになることは避けられた。