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1/7の約束

早速芽衣からの「おねがい」がきた。まあさっき約束したから従うけどね。

「私友達と遊びに行ったことがないんだよね。それでね…」

おいおい嘘だろ。まさか2人でとか言い出すんじゃないだろうな。

「美術館に行きたい!今やってる現代アートの!」

「え、美術館?」

心が躍った。実は自分も行きたかったところだった。

「そう!美術館!桐谷君の絵を見て一回行ってみたくなったんだよね~」

どれだけすごい芸術家の展覧会か知らないみたいだ。でもアリだな。

「良いよ。行こうか。僕も丁度行きたかったから」

やった!って飛び跳ねていた。今週の日曜日に行くことになった。美術館に行けるのが嬉しくて2人で行くことを忘れていた。それを思い出したのは前日の夜だった。

当日僕たちは最寄り駅で集合した。僕はいつも通り時間の10分前に到着していた。今日は珍しく快晴の空だった。走ってくる音がする。

「お待たせ!待った?」

白いワンピースに身を包んだ芽衣が走ってきた。いつも制服姿だから私服が新鮮でなんかドキッとした。

「ううん。大丈夫。それより体調は大丈夫?」

「大丈夫!楽しみ過ぎて寝不足になったくらい」

笑いながら言うから大丈夫みたいだ。切符を買って電車に乗る。移動中に色々話をした。好きな食べ物とか小学校の時の話とか、友達の話とか。自分には珍しく人の話がとても面白いと思った。いつもはつまらなく思ってしまうのに。

大きな鳥居を抜けると美術館に着く。胸の高鳴りがする。美術館は好きだし久しぶりに来たのもあって緊張している。芽衣も横で

「やっば!でっか!ここ前ネットで見たよ!」

興味津々で写真を撮りまくっている。なんか自分事で嬉しく感じる。

「早く入ろうよ!」

そういって芽衣が催促してくる。僕も早く入りたいよ。

入場券を買って展覧会場所に向う。美術館って建物自体が綺麗だからそこにも見入ってしまう。芽衣も横で目をキラキラさせている。まるで子犬のように。

展示室は静まり彼っている。テーマは「個性」であった。正直何を伝えたいのかは理解できない。でも大きさ、色、力強さに圧倒される。自分にはないものを見せてくれるから美術作品はずっと見ていられる。横からツンツンと突かれる。

「見てこれ」

芽衣が目を大きくしてみている目線の先には黒と赤で書かれた馬の絵だった。怪我をした馬が死ぬ気で生きようとしている気がした。芽衣は自分と照らし合わせているのだろうか。

静寂な空気が晴れてきた。出口だ。今まで静かな芽衣を見たことがなかったので新しい発見だった。でも展覧室出るといつも通り。

「すっごい楽しかった!特にさ、あのカラフルな…」

めっちゃ喋る。お土産屋さんでも限定品がなんだとかははしゃぎまくっている。正直恥ずかしい。

「ねね!せっかく来た記念にこれ一緒に買お!」

いつでも売っている絵の具のキーホルダーを見せてきた。

「え、限定品を買わないの?せっかく来たのに」

「ピンときちゃったんだよね~!それにね…」

と、ポスターを見せてくる。

「計16種類あるらしいから後7回来ないとだね!」

まさかそんなとこまで見ていたとは。

あと七回展覧会は大体2か月しているから14ヶ月は最低見積もらなければならない。

正直、芽衣の命の日が消えないか不安になる。2年と言われても本当に持つかわからない。あわよくば長生きするかもしれない。それに賭けてみるのも悪くない。

「いいね。あと7回来てコンプリートしようか」

そういって僕は青、芽衣は黄色のキーホルダーを買った。

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