仲直り
授業にも絵にも話にも部活にも集中できない。気になってしまう。言い方悪かったかなとか、結果はどうなんだろうかとか。時間を無駄にしている気がする。
斜め前に座っている芽衣も落ち着かない様子である。それを見てしまうからより申し訳なく感じる。
現在5時間目。理科の授業。実験の班がまさかの芽衣と同じ。気まずい。
「それでは一人の人がフラスコを持ってもらってもう一人の方が色の変化を観察してくださーい」
先生が言う。4人班なので流石に芽衣とやらされることはないだろう。
「最近二人仲いいみたいだからやっといてよ!俺ら器具洗いに行ってくるわ!」
嘘だろ。まじかよ。
「や、やろうか。桐谷君が持ってくれる?」
気まず過ぎるだろ。芽衣もなんかぎこちなくないか?
「分かった」
観察を始める。我慢できなくなる。
「さっきはごめん。なんというか配慮ができなk」
「いや、こちらこそごめん。もっと前から伝えるべきだった。桐谷君にしか今は言いたくないからあとで絶対に伝える」
遮ってまで強い眼差しで言ってきた。大丈夫。僕は芽衣を信頼しているつもりだ。嘘をつくような人間でないことも分かっているつもりだ。
「えっと、仲直り?」
僕が言うと芽衣がケラケラ笑い出す。
「はっはっは!仲直りって!子どもじゃん!」
めっちゃ馬鹿にしてきた。
「こ、子どもって。君も子どもだろう」
僕も笑いながら言ってしまった。
「こら!桐谷!小島!真面目にやりなさい!危ないだろ!」
あらら、怒られてしまった。でもなんだろ嫌な気がしない。
「ごめんなさーい!」
芽衣が言うのと一緒に言う。周りがざわついている。あれなんか変なことしたか。まあそれより芽衣が笑ってくれていることの方がうれしい。それで満足だ。放課後までしっかり待てるはずだ。
あれ、芽衣の笑顔で満足?僕は何を言っているんだろう。