我慢できない
階段を上がる。3階まで上がるのは結構きつい。きついはずなのに芽衣は軽快である。
やっと「3」の文字が見えた。やっと到着だ。
「遅いよー。陸上部頑張って!」
陸上部関係あるのかこれ。
「ごめん。結構きついよ」
「なんでよー。ほら後5段頑張って!」
あと5段もあるのかよ。
「よっしゃ!先教室行くよ?」
待ってくれないのかい。目と鼻の先なのに。
「すぐ行く」
そう言ってゆっくり歩き出す。
教室の入り口ドアの窓を見るともう10人ほど登校していた。そんなこと気にせずに入っていく。そしてカバンから完成した画用紙を取り出す。
「見せて!」
びっくりした。背後から言ってくるもんだから驚いた。
「はい、どうかな?気に入ったらいいんだけど」
あの海に行きたいという願望を詰め込んだ配色。少し緊張する。
「まって、めっちゃこの絵すごく好き!もしかして海とかをモチーフにしている?」
良かったと思うと同時に勘が鋭いなと思った。この色でそこまで分かる人は中々いない。
「そう。海と青空をイメージしてみた。夏だから」
「良い!すごくいいよ!」
もやもやが晴れなかったから思い切って聞いてみた。
「ねえ、いい加減教えてよ。何かあるだろ」
表情が曇る。色が変わるわけではなく曇った。霞んだ黄色になった。
「今ここでは言えないから放課後もう一度ここの教室で集合、、、、で、」
言いにくそうだ。でもこれ以上僕も気になってしまってしょうがない。
「分かった」
そう言っていつも通り芽衣はグループへ。僕は一人窓側に。
まだこんなこと告げられるとは知らずに。